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野口悠紀雄『「超」創造法』にて

この書物の第Ⅱ部「どうすればアイディアを生み出せるか」に注目したい。時間の流れという幻想を超えて、本書の用語を整頓してみます。

次の図は、球体の中心でアイディアが誕生するトーラス構造です。球体の内に浮かぶドーナツの具に「時間の流れ」を閉じ込めたイメージです。

野口さんはとにかく仕事を始めよと述べます。テーマを考えながら、資料やデータを集めながら、書き進めば、多くの場合に完成するとのこと。

時間の流れを内在させることがアイディアを生む秘訣だと思います。

この図は独学の具体例の一つにすぎません。

図において、ピンク色の垂線は球体の回転軸であり、モチベーションです。青色の矢印は、「学習という形でのデータの取り入れ」を促す意識であり、赤色の矢印は、アイディアが生まれやすい環境の構築を促す意識です。
なお、「テーマと問い」が決まると、回転軸のブレが止まります。

「微細な環境の変化」を実現する方法として、「散歩」はきわめて効果的です。文章を書く仕事が難航したとき、公園を散策すると、新しいアイディアが湧き出ます。散歩は「休憩」という受動的行動ではなく、積極的、能動的な活動なのです。
 散歩中には、考えが突如現れたり、消えたりします。突然浮かぶのは、目前の現象とは無関係なものです。無意識の淵から考えが浮上してくるのかもしれません。
 脳を情報で充填してから散策に出ると、「情報が脳内で混じり合い、新たな発想が生まれる」感覚になります。新鮮な空気が脳を活性化するのかもしれません。足下からの感覚が、創造力を駆り立てるという理論もあります。少なくとも、身体を動かすことは、思考にプラスの影響をもたらすようです。「散歩する」ことは、アイディアを得るための最も直接的で確実な手段です。

――pp.229-230 第Ⅱ部 第9章「発想をうながす環境を作る」

 さて、今や、教育改革「待ったなし」なのだが・・・。

 人間にしかできない「創造力」を高めるための教育が必要
「ChatGPTなどの生成系AIが創造力を持っているか否か?」という問題は、第5章で考えました。その結論は、人間の知的作業の最も重要な部分は、コンピュータには代替できないということです。
 ただし、人間が創造活動を行う方法が、これまでとは変わってきます。
 第1に、第2、3章で述べたように、知的活動にかかわるさまざまな仕事(翻訳、要約、校正など)を、AIは人間より効率的に行ってくれます。これによって、人間が創造活動にあてることができる時間が増えます。
 第2に、第4、5章で述べたように、人間が行う知的活動の中核部分についても、AIは人間を補助してくれます。ただし、そのためには、人間が適切なプロンプト指示文を書く必要があります。このような作業は、これまでなかったもので、人間の知的活動が大きく変化することを意味します。
 こうした過程を通じて新しいものが創造されたとすれば、それは、人間のプロンプトが優れているからです。本当に創造活動を行っているのは、AIではなくプロンプトを書いている人間であると考えられます。
 以上をまとめれば、「創造は人間にしかできない。ただし、人間が創造力を発揮する仕方が、これまでとは違ったものになる」ということになります。

――pp.248-249 第Ⅲ部 第10章「教育は生成系AIとどう向き合うか」

生成系AIは、既に、家庭教師として活用できるようですね。

以上、言語学的制約から自由になるために。