見出し画像

最近の気づき

こんばんは。
ワインショップでは早くもボジョレー・ヌーヴォーの予約を受け付けているようですね。
1年はあっという間で、時間の流れについていけません。

そんな10月末のあるお稽古日、私はあることに気づいてしまいました。
日本にもボジョレー・ヌーヴォーみたいな文化がある」ことを。

このことをひらめいた瞬間、私はなんだかわくわくしてきました。

すみません、なんだか意味が分かりませんよね。
でも、とにかくわくわくしたのです。

にやにやしていたら周りの人に怪しまれました。
 
* * *

10月下旬のその日。
いつも通りお稽古に入る前に床の間の前に着座し、呼吸を整えて頭の中を切り替えます。

床の間を拝見すると、いつもは花が飾られているスペースに大きな壺と、お茶屋さんからの手書きで書かれた手紙のようなものが貼られた木の板が置いてありました。

興味津々でその壺を眺めていると、先生がひとこと。
「あなたもう、11月よ」

そうそう、今年ももう、11月がやってきます。
暦の上では晩秋が過ぎ、本格的な冬がやってくる季節ですが、お茶の世界には2度目の「お正月」がやってきます

さて、どうして11月がお正月なのでしょうか。
この理由はふたつあります。

ひとつめは、お茶を沸かす釜をかける場所が切り替わるタイミングだからです。
夏の間(5月~10月)は「風炉」という小さな炉を畳の上に置いて使いますが、冬の間(11月~4月)は茶室の真ん中寄りに備え付けられた「炉」という小さな囲炉裏を使います。

この炉は夏の間は使わないので、上に畳が敷かれています。
冬になるとその畳が外され、陽の目を見ることになります。
そしてその年に初めて炉をあけ、火を入れることを「炉開き」と呼びます。
こうして茶人は冬の訪れをポジティブに捉え、季節の変化を愛でるのです。

ふたつめは、「新茶をあける」時期だからです。
その年の5月に摘まれた後、しばらく冷暗所で熟成された新茶を出し、石臼で挽かれた抹茶を使い始めるのが11月です。

床の間に飾られたその壺は京都のお茶屋さんから届いたもので、中には挽きたてのお抹茶が保管されていたのです。

そして「亥の日」といわれる11月の上旬、炉をあけるのと同じタイミングで、この壺の口を開けるお祝いの茶会・「口切(くちきり)の茶事」が行われます。

つまりお茶の世界でも、できたてほやほやのお抹茶の開封を祝うのです。

床の間の壺を見ながら思いました。
この「口切の茶事」は、ワインの世界でいえば、その年に収穫されたぶどうでできた新酒の解禁を祝うようなものではないでしょうか。

だから思ったのです。
新茶はボジョレー・ヌーヴォーである」と。

ボジョレー・ヌーヴォーは、フランスのボジョレー地区でその年に採られたぶどうでできた早飲みタイプのワインを指します。

日本でも話題になるボジョレー・ヌーヴォーの解禁日は、11月第3週の木曜日と法律で決められています。

実りの恵みを感謝すること。
皆で杯を交わすこと。
飲むことを楽しむこと。

なんだか日本とフランスの文化が身近に感じませんでしょうか。
人の考えや営みって、形式は異なれど根本の部分は同じなのかもしれません。

日本でボジョレー・ヌーヴォーが話題になるように、フランスでもいつか「マッチャ・ヌーヴォー!」なんてお祝いがされたら面白いと思うのですが、難しいかしら。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?