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2023/10/18 BGM: Ryuichi Sakamoto - Merry Christmas Mr. Lawrence

2023年もあと少しで終わる……読書好きの悲しき性というやつで、「今年の収穫」「今年読んだ『スゴ本』」は何だったかということをボチボチ考え始めてしまっている。「大傑作」とも「ぜひとも人に薦めたい」とも思わないけれど、自分にとって大きかった本の1冊としては村上龍『ユーチューバー』が思い浮かぶ。老境に差し掛かり、己の死や半生を見つめて「マーロン・ブランドの時間は止まってしまった。わたしの時間も止まるときが来る」と述懐する主人公のそのセンシティブな語りに、村上龍が愚直に己の人生や彼から見える日本という国について、そしてそこで生きるぼくたち人間の「生きづらさ」を見つめ・見据えているという確かな誠実さを感じたのだった。そう、ぼくの時間もいずれ止まる。ここでは明かせないとある事情により、ここ最近「誰の時間だっていずれは止まる」という端的な真理に打ちのめされている。だが、「止まる」のなら生きていて何をやってもムダであるということにはならないだろう。いずれ止まるかもしれないにせよ挑み続け、前に進み続けたい……確かこの『ユーチューバー』を読んでヘミングウェイのことを思い出したりした。村上龍の美学とヘミングウェイのそれは似ているのではないか。とはいえ彼の主要な作品、とりわけ『老人と海』はいまだに読めていないのでこれから読んでみたいと思う(そう言えば、村上龍の「盟友」である坂本龍一もまさに今年亡くなったことを思い出す)。

今日は休みだった。朝、毎週恒例のオンラインサロンのミーティングに参加してそこで英会話を学ぶ。今日の参加人数はぼくを入れて3人だったので、少人数ながら濃い話が楽しめた。ホストやもう1人の方の温かさ(人間力)にうながされて、つい深刻なことまで話してしまった。いや、人生相談をしたとかそういうわけではないのだけれど過去にぼくが酒に溺れてしまっていた時期のことを話したり……ヘビードリンカーだった時期のことは、何せその時期があまりにも長く、また不毛でつらい時期でもあったのでいまになっても当時についてロクなことを思い出せない。たとえば日本があの未曾有の東日本大震災という危機にあたふたしていた時期のことを、実を言うとぼくは「まったくもって」思い出せない。当時ぼくはほんとうに、文字通り昼間っから呑んだくれて「もうまっぴらだ。こんな人生はクソだ」と思ってグダグダに生きていたのであんな大震災についても、その後のゴタゴタについてもあまりにもつらい・不毛な日々だったからなのか記憶から「飛んで」しまっている。その後40になって断酒を始めて……「そのあとの人生」なら楽しかったことを思い出せる。あの日……断酒を決意して酒を断った日。その後発達障害を考えるミーティングに出た日。人生って何なんだろう。「シンデレラボーイ」になった気分というか何と言うべきか。どこでかぼちゃの馬車を呼んでしまったのかわからないけれど。

前にぼくは「とんずら倶楽部」というPodcastを録音していたのだった。忘れたわけでも、飽きたわけでもなくまた録音・投稿したいと思っている。のだけれど、なかなか時間が取れない。詩も書けておらず、とりわけ「英語で」発信することをサボっているのだった。特にトラブルに巻き込まれているわけでもなくただ単にぼく自身の怠慢によるものだ。Facebookで知り合ったロシアの友だちのビクトリアさんや、あるいは別のグループ/ソーシャルメディアでつながらせてもらっている友だちに見せるべく(もちろんぼく自身のトレーニング/鍛錬のためにも)英語で書き綴りたいのだけれど……いや「だったらやりなはれ」ということになるのだろう。どうしたものか考えあぐねている。ともあれ、今日は昼は週末に行われるふれあい祭りのための英訳の案件をこなした。こんな英訳の話がぼくのところにオファーとして届けてこられるというのも、確かにこのぼくを信頼されているからなのでそれに応えるべく訳を試みた。フランス語をやりたいという話も頓挫している……またこれから英会話教室に参加することになれば刺激を受けるに違いないので、いまは自分なりに「できること」をこなしていきたい。ここでぼくの関西人の血が騒ぎ、西川きよし「小さなことからコツコツと」という言葉を思い出してしまう。

夜、断酒会に赴く。そこで体験談を語る。参加されたある先輩が「断酒は『最初の3ヶ月』がいちばん難しい」とおっしゃったのが心に残る。断酒会では「最初の3ヶ月」をアルコール抜きで乗り切った方に対して「表彰」を行う。それが動機づけにつながるのだけれど、ぼくもまだ断酒のコツをぜんぜん掴めず「ホントに自分に、ここに来られている先輩のように『数年』『10年・20年越し』単位の断酒ができるんだろうか(できないかなあ)」と不安に胸が潰れそうになったことがあったっけ。いま、ぼくは8年間アルコール抜きの生活を送ってきたのだけれど確かにその先輩のおっしゃったことは鋭く、おそらくはその方の実体験に沿ったものであるがゆえの「『軽く』ない」確かな説得力があると思った。その後、グループホームに戻る。友だちが「あなたの便利グッズについて教えて!」と質問してこられたので、愛用しているメモパッドについて記す。メモパッドに英語で書きつけるという試みも3年ほど続いて、自分も英語が多少は上手になったと言えるのかなとも思った。人は変わる。向上だってする。もちろん、いずれ死ぬ身が何をやろうとムダという見方もあろう。でも、それこそ「どうせなら『いま』をエンジョイしようぜ!」とも思う。こんな憂鬱と闘志が文字通りカクテルになったような存在。それがぼくという人間なのだった。

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