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ふるさと

1983年の作品で、主要なロケ地が旧徳山村。
映画自体はボケ老人のお話で、ダム建設とは直接関係はなかったけれど、誰も最後まで表現しなかったことが、最後の5分程度の間に凝縮されているというすごい作品だった。
何も言わず語らず、主要ストーリーの延長線の上で、土地と人の結びつきをさらっと描く。

ボケてしまった伝三じいさんは幸せ最後だったと思う。
ボケのメカニズムは、今でも解明されてはいないが、このドラマの中では「必要とされなくなること」を原因としている。
隠居することで、居場所をなくして、ボケていく。
でもそれは昔からあったことだろう。
徳山村はそう思われるほどに、時が止まっている。

そして主人公たる伝三さんが亡くなって、
ドラマは急展開する。
正確に言うと、ドラマはあるべきシーンを刻みながら、テーマが変わっていく。

峠を越えるシーンがピークだろうか。
このシーンがテーマだった。

「人は土地の上で生きていくということを言いたかったのだ」と。
エンディングまで見ていないと、見た意味さえ失われるという作品だった。

そして、公開後40年。
徳山村が沈んで15年余。
後世の我々が気がついて愕然とすること。

「この風景は地球上のどこにもない」
愕然とした、というより、冷たい風が身体中を吹き抜けていった気がした。
心臓もその冷たさに一瞬止まった。

この映画をサブスク公開しているAmazonプライムに感謝したい。
なんでこの作品を公開しているのだろう。
すごいな、ありがとう。

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