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世の中にたえて桜のなかりせば(1018字)

主演が乃木坂46のメンバーだから、明快で優しい作品だろうという予測で選んだけれど、予想を大きく上回る、とてもいい作品でした。
不登校や挫折、戦争など苦労を乗り越えて生きてきた人たちの人生に接して、自分が生きる道を選ぼうとする不登校の女子高生が主役です。
アイドル映画だから、世間では話題にもならなかっただろうけれど、こんないい作品が埋もれているなんてねえ。
あらすじをたどるのは二度手間なので端折ります。

主人公は学校にも行かずに、終活アドバイザーで働いていますが、それをいちいち責めたりする無駄さえない。本当にストレート!
同僚のおじいさんの話から思い出の桜を探しに行って、すでに枯れ木になってしまった木にCGで花を咲かせ、深い思い出に浸る同僚の老夫婦。
話が身近過ぎて少し怖い。
12月の半ばから腰痛に悩まされていて自分が少し投影されました。
中途半端に仕事に支障が出て不安を持ちながらも、なんとかやってきて、先月現場で満開の桜とミツバツツジに癒された自分がね、このおじさんの桜と似ててね。
少しグッときました。

おじいさんは「70年前の話だから」
70年って、そんなに前じゃないかもしれないんですよ。
これも自分のことだけど、60年前に住んでいたアパートをGoogle mapで調べました。
5歳で引っ越したので、しっかりした記憶はないんだけれど、残っている記憶をGoogle mapの中でたどったら、そのアパートは今でも現役でありました。
築65年です。
僕にとっては最終の記憶は56年前。
これだけの膨大な時間になると、56年も70年も大差ないように感じるのです。
56年も生きていれば、どうでもいいような記憶は消えていくはず。
そんな中で残った記憶って、何かの意思で残ったんじゃないかという気がするんです。
だから、おじいさん。
70年前の桜の記憶、やっぱり大切なものだったんですよ。
その感覚が痛いほど共有できました。

ただ、ナグモ先生には頑張ってほしい。
「子供の頃からの夢」が実現して教師になったのだから、生徒にいじめられたくらいで泣いたり挫折したりしないでしょ。「私には教師の資格がない」とかいうべきじゃないし、言わんはず。
この人のこの部分の描写だけは少し納得いかんかったけど、理想通りに生きられる人ばかりではないし、何か描かれなかった背景があるかもしれない。
全体が良い作品なので、そんなつまらないことにこだわって、作品のイメージを落としたくないと思うのでした。

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