ユニクロコラボと購買層

ユニクロ×white mountaineering(以下WM)のコラボ製品を見て思ったことを書く。

先日少し時間が取れたのでようやくユニクロ×WMの製品をじっくり見てくることができた。デザインもWMらしく、海外のファストのような縫製の破綻もないきれいな仕上がりの、スケールメリットが存分に生かされた値付けがされたよい製品群だと思った(WMで同じ製品を出したら3-4倍くらいの価格になるのでは)。

だけど陳列された一群を店舗の遠くから全体像の一部分として眺めた時に生じる違和感がある。居心地の悪さというかすわりの悪さというか。陳腐な言い方をすれば浮いた感じ。

例えば今回のWMの切り替えの多いフリース。
WMとのコラボ情報を伏せてもわかる人にはあれ?WMの服かなと思わせるデザインだと思う。
そこまで奇を衒ったようなデザインではないものの、服に興味のない人が着るにはややハードルが高い。

ユニクロのほかのレギュラー製品に比べれば、確かにデザイン的に浮いてるか。でもそれで腑に落ちるかというとそうじゃないんだよな、自分が。

ユニクロではもうここ何年も、優秀なデザイナー・パタンナーが揃えられ、ユニクロ製品全体はすでにかなりスタイリッシュになっている。きまりすぎないデザインが意図的になされているとはいえ(そもそもユニクロの企業コンセプトは「ライフウェア」なので老若男女をターゲットにしたマスマーケティングであり、ファッション寄りにすると購買層を限定してしまう。自らの首を絞めるようなことはユニクロはしない)。

だからデザインだけで浮いてると感じたわけではないんだろう。

じゃあこの違和感を解決する疑問はなんだろうって考えたら
「ユニクロ側はこのコラボの購買層をどこに設定してるんだろう?」
だった。

俺の考えたことをなるべく明快にするために、ユニクロの購買層を、
① ファッションにそれほど興味はないけどある程度安価で品質が保証されていてみっともなくない服が欲しい層:つまり世の中のマスボリュームのひとたち
② ある程度服をフラットに見ることができてる層
に大胆に二分しよう。

ここで抜け落ちるのが「基本はセレクトショップで買い物する、とか、小さな路面店で服を買うような、ユニクロをファッションヒエラルキーの下位に位置づけてユニクロにはいかない」層。
適当に第3層と呼ぶか。じゃあ①を第1層、②を第2層と呼ぶことにする。

第3層。イメージ的にはちょっとモード寄りの人たちなのかなあ。
ドメブラ着てるような。あとはもしかしたらファクトリーブランドとか好きなひとたちもユニクロとか敬遠しそう。わかんないけど。
ただユニクロを敬遠する服好きはわりといるなという実感はある。

アパレルで覇権を握っているユニクロはその追撃の手を緩めない。この第3層も顧客にしたい。

この第3層を取り込む撒き餌がこれらコラボ群なのかなと思った(もちろんデザイン的なリソースを得るという目的もあるだろうけど)。安価で世界レベルのデザイナーの服を、は表向きの謳い文句に思える。

ユニクロとかwww
ユニクロの服なんか買わねえしwww
でもWMとコラボか・・・ちょっと見るだけなら・・・

この第3層を取り込むことこそがこのコラボの真の目的なのだ。

いきなりユニクロを好きになってくれとは言わない。でもせめてユニクロへの嫌悪感を希釈したい。払拭できなくてもいい。薄めるだけでもいい。

その目的を達成しうる共闘先が選ばれる。
この第3層が目を通してもいいと思わせるひと・ブランド。
そう、とにかくまずは見てもらわないとだめなの。食わず嫌いしないでよ。だからこのコラボには洋服好きに嫌われないブランドが選ばれなくてはならない。そういう意味でジルサンダーは本当に絶妙な人選であったと思う。
Undercover然り、engineered garments然り。もちろん今回のMWも。

この撒き餌でユニクロが選択肢のひとつとなるように誘導する。無視されては何も始まらない。名曲は聴いてもらって初めて名曲となるのだ。

でも実際この第3層っぽいひとをユニクロ店内でみかけることってあんまりない気がする。俺がユニクロに頻繁に行ってないだけかな。わりと行ってるんだけどな。初日だけに出現してるのかな。

まあ俺の仮説が正しいかどうかはさして重要じゃない。俺の腑に落ちればそれでいいっちゃいいからな。だからユニクロが狙ってる(と俺が勝手に考えている)第3層っぽい人の不在に違和感を覚えたのかもしれない。しかるべきひとがしかるべき場所にいない不安感。俺が不安になることは全くないんだけどな。

過去のコラボにも同じような違和感を持っていた気がする。

やっぱり結局「安価で世界レベルのデザイナーの服」、第1層のひとたちは買わないもんな。いや訂正。第1層の「男子」は買わないもん、だな。第1層の男子はデザインが入ってると敬遠する。そんな分析をユニクロがしてないわけがない。だからそもそも狙ってる顧客層が違うんだろうなという結論にたどり着く。

women’sはわりとそんなことないんだよね。
女性はあまりストーリーありきで服買わないから。
可愛いか可愛くないか。シンプルな目線で判断する。

第2層のひとたちはフラットに服を捉えることができるからユニクロを選ぶことも厭わない。ユニクロだろうがしまむらだろうが価格と製品のバランスが優れていると判断しさえすれば。

逆説的だがファッションとしてユニクロを選ぶことさえある。
ほかのブランドのストーリーを無効化させるための手段として(凝ったデザイン、目を見張るような高価格に対するアンチテーゼ)。

一方で第3層は「ユニクロだから」買わないところがきっとある。
低価格帯のメーカーというストーリー。
ライフウェア(ファッションウェアのカウンターパート)というストーリー。
その貧相(だと彼らが考える)物語性が自分に付着することには我慢がならない。

この第3層を店舗や自社ECサイトに誘い出すための人選・コラボがが今後も行われるんだろうなと思う。

誰がこの人選してるのかな。このプロジェクトチームおもしろそう。おもしろそうだけでできる仕事じゃないか。

ほかにどんなひとが候補に挙がるんだろうね。
過去のSCYEとかちょっと玄人感の強い人選よりももう少しポップな方がいいのかな。メンズのAuraleeじゃ地味だなあ。mameはちょっとびっくりしたね。

やっぱFragment?

sacai?
Hyke?

個人的にはsupremeとやってほしいな。買わないけど。

この違和感がなくなる頃にはさらに強固な王国がアパレルの世界に出来上がってるんだろうな。

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