見出し画像

【vol.2】「産地」が出来上がるまでの歴史に思いを馳せて #えぶりツアー

12月頭に岡山でデニムの工場を案内していただいた #えぶりツアー

見るもの・聞くことすべて初めて知ることばかりで、自分は本当に何も現場を知らなかったんだなあ、と改めて考えさせられました。

▼前回の記事

中でも、個人的に一番考えさせられたのは、篠原テキスタイルで篠原さんがおっしゃっていた『産地はひとつの製品を作ることに最適化されている』という話。

岡山のジーンズを例にとると、糸そのものがすでに染まっているため、白い製品を作ろうとするとそれ用に工程を組まなければならず、非効率になってしまうことが多々あるのだそう。

もちろんホワイトジーンズは昔からあるし、最近はアースカラーのジーンズも増えてきましたが、全体で見ればそれらはほんの一部の『特別』なものであって、大半は藍色の糸を使い、そのカラーの中で細かい違いを出しています。

実際、加工の工程であるニッセンファクトリーさんの工場を見せていただいた際も、ホワイトジーンズは色がつかないようにそれ専用の台や型が用意されており、商品管理に一手間かけていることを感じました。

逆に、例えばタオルの産地は白い製品が多いので基本的にはまず白い製品を作り、それを後から染めるのだとか。

シャツも白がベースであることが多いので、同じ『織る』という工程でもデニムの岡山とシャツの播州だとできることが違うんですよ、という話は、今回の旅の中で個人的にもっとも印象的なものでした。

最終プロダクトが違えば大きさや形も異なるので機械が異なるのは当たり前ですが、そこに糸の色まで関わってくるということがすごくリアルだなと思ったのです。

そうやって積み上げられてきた『違い』が産地という特別な場所を作り、唯一無二のプロダクトが作られていくのだなと。

工場は『点』ではなく、工程という『線』があり、そして産地という『面』がある。

インターネットの発達によって工場と個別にやりとりすることもできるようになって何かを作ることのハードルが劇的に下がったけれど、産地という面の意識を持たないと無理な注文をしてしまったり非効率な手法をとってしまったり、双方が得しない事態が多々おきるんじゃないかと思うのです。

言葉にすると当たり前のことではあるのだけど、えぶりツアーを通して、産地の経済合理性について本当の意味で『わかった』ような気がします。

今年の4月にmediacruiseの企画で訪れた有田もまさに器の産地としてこのエコシステムが機能していて、日本中に数多ある器の産地と異なる『有田らしさ』を400年かけて作り上げてきた土地なんですよね。

例えば有田焼といえば青の染付なのですが、青の工程がベースにあった上で赤や黄色を入れるという工程になっていたり、店舗に都会から出てきた小売店の担当者が宿泊できるような仕組みになっていたり。

歴史や文化、地理的な要因が複雑に絡み合って最適化された結果、今の『産地』ができあがったのだと思うと、積み重ねられてきたものの厚みに改めて思いを馳せずにはいられませんでした。

とはいえ時代にあわせて求められるものも変わるし、生活スタイルが変わればその商品自体が時代にあわなくなってしまうことも往々にしてあります。(いちご用スプーンのように!)

資本主義の世界に生きているかぎり、需要にあわせて変化しなければ生き残っていけないのは当たり前だし、単に『日本の技術を残そう!』と言っても経済合理性がなければ長くは続かないのは自明のこと。

ただ、長い時間をかけて育み、熟成されたものには価値があるし、その価値を使って稼ぐ方法はいろいろありそうだなと思いました。

これからますますあらゆるものがオープンになり、透明化が進み、誰もがアクセスできるようになる時代だからこそ、消費者との最終接点である店舗以外でもいかに人を楽しませるかによって別の稼ぎ口を作っていくことができるのかもしれない、と。

今回一緒に行ったメンバーが『最所さんがアテンドの可能性について語っていた意味がわかった』と言ってくれて、改めてオーダーメイド型のアテンドの可能性も感じました。

と言いつつ私もまだいくつかの産地や工場を回ったくらいの経験しかないので、来年はもっと現場を見にいく旅を増やしたいなと思う次第。

私は『伝えるために作る』ことしかできないので、自分が見て、聞いて、体験して驚いたことや学んだことをひとつひとつ言葉にして伝えていきたいなと思っています。

次はどこに行こうかな。

★noteの記事にする前のネタを、Twitterでつぶやいたりしています。

今日のおまけは、『なぜ地方の百貨店に可能性を感じるか』について。
(えぶりツアーの単発マガジンor店舗メディアマガジン購読者向け)

ここから先は

1,367字
この記事のみ ¥ 500

サポートからコメントをいただくのがいちばんの励みです。いつもありがとうございます!