一足の靴が出来上がるのは、奇跡に近い。歩きやすく美しいハイヒールを作る「gauge(ゲージ)」の挑戦 #ブランドインタビューリレー

#ブランドインタビューリレーは、「新しい作り方・届け方」を模索するブランドにインタビューし、これからの小売のあり方を考察していくシリーズです。

今回は、オーダーハイヒールブランド・「gauge(ゲージ)」を手がける五十石さんにお話を伺いました。

<目次>
1.普通のOLから木型師へ。女性木型師ならではの「ハイヒール」への想い
2.高いリピート率、複数買い。キャリア女性に「gauge」がウケる理由とは?
3.その数、なんと100万通り!オーダーハイヒールならではのメリットと課題
4.どんなにテクノロジーが進化しても、gaugeが「足入れ」にこだわるワケ

1.普通のOLから木型師へ。女性木型師ならではの「ハイヒール」への想い

▲1月に表参道の「knot」で開催されたポップアップストアの様子。豊富なカラーバリエーションやヒール、本底の見本がずらり。

gaugeのコンセプトは、「女性木型師がつくるオーダーハイヒール」。

「木型師」というあまり馴染みのない職業に、てっきり10代の頃から研鑽を積んだ気難しい職人さんのイメージを持っていた私。

しかし、お話を伺ってみると「大学卒業後は、4年間OLとして営業をしていたんですよ〜。」と答えてくださった五十石さんの柔らかい笑顔に、これまでの勝手なイメージが覆されました。

なぜgaugeというブランドが生まれたのか?そして、これからの成長戦略について、日本でも珍しい「女性木型師」という肩書きをもつ五十石さんにお話を伺ってきました。

最所:ブランドのお話を伺う前にまずブランドコンセプトを構成する「木型師」という職業について知りたいのですが、なぜ木型師になろうと思われたのでしょう?

五十石さん:実は、明確に「木型師になろう」と思って修行したわけではなくて、ずっと靴が好きで勉強していく中で、木型師という職業があると知ったので、ちゃんと木型師の修行を積んだのは今の会社に入ってからなんです。

最所:そうなんですね!てっきり、10代からずっと修行に明け暮れないとなれないような世界なのかと思っていました…!

五十石さん:全然そんなことないですよ!私も、大学を出て4年間は営業職として新宿の会社に勤める普通のOLでしたから。

最所:えっ!そこからなぜ木型師の道へ…!?

五十石さん:もともと靴は昔から好きだったので、趣味で靴づくりの教室に行ってみたら見事にハマって。
仕事を辞めて靴の専門学校に通って、そこからは義足などを作る会社に勤めていました。
この時に骨格などの勉強をしたのが、今の靴作りにもつながっているのかなと思います。

最所:すごい、紆余曲折…!でも社会にでた後も、自分次第で進む道はいかようにも決められるんだなあと勇気をもらえる気がします。
そこからgaugeを立ち上げるに至ったのはなぜなのでしょう?

五十石さん:私が勤めている神戸レザークロスという会社はずっとハイヒールや女性向けの靴を作ってきた会社なのですが、木を削ったりと体力が必要な木型師という仕事は、どうしても男性の方が多くて、女性の木型師はほとんどいないんです。
でも、実際に靴を履くのは女性ですし、自分で足入れもできる女性木型師が理想のハイヒールを作るというコンセプトでブランドを作ってみたらどうだろう?というのがはじまりでした。

最所:たしかに、ハイヒールの苦痛とそれでも履きたい女心は、なかなか男性には理解しづらい部分ですよね。

五十石さん:そうなんです。だからこそ、デザインはあくまでシンプルに、木型の力で歩きやすく美しいハイヒールを作りたいと思って立ち上がったブランドなんです。
ちなみに、靴は木型をもとに作られるのですが、木型師を社内で抱えている会社はもうほとんどないんです。

最所:えっ、そうなんですか!?

五十石さん:木型の作成を外注するだけかなりコストがかかるのですが、うちの場合は中に木型師がいるので、他社に比べてバリエーションを出すことができるのが強みです。
しかも、作ってすぐに私が足入れをしてみて微調整することもできますし。

最所:実際、gaugeのハイヒールを1日履かせていただいたのですが、お世辞抜きで本当に全然足が疲れないデザインは、木型へのこだわりにあったのですね…!

2.高いリピート率、複数買い。キャリア女性に「gauge」がウケる理由とは?

▲フィッティングの様子。足入れから素材の選定まで、1時間ほど滞在するお客様がほとんどなのだそう。

最所:gaugeをオーダーされるお客様は、どんな方が多いのでしょう?

五十石さん:もともと百貨店のポップアップストアからスタートしたこともあって、いわゆるキャリアウーマンのような方が多いですね。
あとは、サイズ展開が幅広いので、これまで自分の足に合うハイヒールを見つけられなかったというお客様も多く、リピートしてくださったり、複数買いして行かれる方もいらっしゃいます。

最所:たしかに、靴は洋服以上にサイズ問題が根深いですもんね…。

五十石さん:そうですね。gaugeをはじめてみて、自分たちが思った以上に「サイズ」ってセンシティブなものなんだなということを痛感しました。
はじめは22.5〜24.5のサイズ展開だったのですが、「オーダー」ということもあってサイズ展開に期待していらっしゃるお客様も多く、「やっぱり私のサイズはないんですね…」とがっかりさせてしまうこともあって。
今は21.5〜26.0までサイズ展開を増やしています。

最所:おお!それはかなりサイズ展開が豊富ですね…!あと、はじめてgaugeで接客していただいた時、甲の幅や角度まで種類が豊富なのも驚きました。私も職業柄ヒールを履いたまま長時間立っていたり、ヒールで歩き回ることも多いので、自分にぴったりのヒールを履く重要性を改めて感じました。

五十石さん:足のかたちやどこに痛みを感じるかはそれぞれ異なるので、できるだけぴったりの靴を作れるように、足囲のサイズを4種類、振角の種類を3種類加えて、左右でサイズ違いのオーダーもできるようにしたんです。
なので、同じサイズでも12通りのサイズがあります。

最所:12通り!たしかに、幅や角度が違うだけで歩きやすさも違いました。「やっと理想のヒールに出会えた!」という方も多そうですね。

五十石さん:そう言っていただけるのは本当にありがたいなと思っています。
一方で、オーダーとはいえある程度パターンの中で作っているものでもあるので、本当に足にお悩みがある方のご要望にはお答えできないこともあって…。
「ぴったりの靴を作る」というよりは、「自分らしい一足を見つける」という方が感覚的には近いのかな、と思っています。

最所:素人目線で考えるとここまで細かく作るならフルーオーダーも可能なのかな?と思ってしまうのですが、フルオーダーとセミオーダーはやはり全く異なるものなのでしょうか?

五十石さん:フルオーダーの場合は一度足型の石膏をとったりするのですが、そもそも木型をオーダーメイドで作らないといけないんです。
さらにそこから仮靴といって、たたき台になる靴を作った上で、足入れしていただいて微調整するんです。
これだけ工数がかかるので、必然的にお値段も高くなって、gaugeの価格の3倍は軽く超えてしまうものばかりなんです。
そこまで自分にぴったりのものをこだわって作りたいわけじゃないけれど、できるだけ自分にあったものがほしいという方向けにちょうどいいものを作りたいなと思っています。

最所:なるほど…!奥深い世界ですね。でもある程度パターン化されているとはいえ、100万通り以上のバリエーションがあって、さらに左右異なるサイズもあるなると、オーダーミスが発生しないような工夫をされているのでしょうか?

五十石さん:はい、実は、

この続きをみるには

この続き:3,058文字/画像3枚
記事を購入する

一足の靴が出来上がるのは、奇跡に近い。歩きやすく美しいハイヒールを作る「gauge(ゲージ)」の挑戦 #ブランドインタビューリレー

最所あさみ

500円

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

note.user.nickname || note.user.urlname

いただいたサポートは、今後のnoteに生かすための経験や他のクリエイターさんたちへのサポートに回していきます!note内で優しい循環を回していきたい。

ありがとうございます!おかげさまで明日もnote更新がんばれます!
33

最所あさみ

Retail Futurist / curator。「知性ある消費を作る」をミッションに掲げています。 将来は世界一の店舗メディアを作る予定。noteの有料マガジン「余談的小売文化論」とコミュニティマガジン「消費文化総研」もよろしくどうぞ!

余談的小売文化論

役にたつかどうかわからない余談のような話を中心に書いていきます。 主なトピックは小売や消費、店舗、そして文化について。 (Photo by tomoko morishige)
1つ のマガジンに含まれています
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。