アートは「コミュニティ」への入り口

先日NewsPicks上でも話題になっていた「アート」をテーマにした連載。

その中で、個人的にとても腑に落ちるフレーズがありました。

商品の価値は、「使用価値」と「交換価値」の2つに分けて考えることができます。使用価値とは、商品そのものが使われることで生まれる価値のことです。ノートや鉛筆は文字を記録することで、野菜や肉は食べることが価値となります。
一方で交換価値は、ある商品と他の商品を交換するときに発生する価値です。現在は貨幣と交換することがほとんどなので、その交換価値が「価格」となります。(「【新】アートを知れば、国家と経済の仕組みが見えてくる」より)

私は小売やファッションが専門分野なので、同じ「ファッション」でも芸術性が高いものと工業製品の差はどこにあるのか?とよく考えていたのですが、この「使用価値」と「交換価値」という分け方は、ファッションの世界でも同様なのではないかと思いました。

例えば自分が持っている洋服をメルカリやユーズドショップで売るとして、大半のものは使用済みになった瞬間半額以下の値付けでしか売れません。

しかし、コレクションにでるようなラグジュアリーブランドやモードブランドは大きく価値を落とすことなく売買されていますし、ヴィンテージや限定品にいたってはもとの金額と同等かそれ以上の価格で売買されていることもあります。

その違いはどこにあるのかと言えば、前述の記事中にもあった通り「歴史的意義」にあります。

例えばシャネルのツイードジャケットや、イヴ・サンローランのモンドリアンルック。

「女性の解放」「アートとファッションの融合」といった歴史的意味も持ち合わせるシリーズのアイテムはいまだに根強い人気をもち、また大きく値崩れすることなく愛好家の間で売買されています。

ここまでくるともはや着用するためという「使用目的」を超えて、コレクションしたり売買したりといった「交換目的」の価値が高まります。

そうなったとき、ファッションも実用品から芸術品へとクラスアップされるのだろう、と改めて思った記事でした。

また、先日アートについてこんな話も聞きました。

「アートは大きく値崩れしないので、いらなくなったらほぼ入手金額と同じ価格で売却できる。入手時には億単位でお金がかかるとしても、それを手に入れたからこそ広がる人脈を買ったと思えば安いものだ。」

そのとき感じたのは、美術品というのは単なる金持ちの道楽ではなく、その価値がわかる人同士のコミュニティに入るためのエントランスフィーなのだ、ということでした。

いくら入手金額とほぼ同等の価格で売却可能とはいえ、本気で美術品を手元に置こうと思ったら数千万円の資産が必要になります。

もしその金額さえ払えばハイクラスな人々と近づけるとわかっていても、家が建つほどのお金をポンと出せる人はそう多くありません。

だからこそ、気軽にお金を出せるほどの財力があり、またそこにお金をかけても惜しくないと思えるほどの教養があることが美術品の売買には必要になり、そのオーナーとなった時点で「こちら側の人間なのだな」と認識され、コミュニティの一員になることができるのだと思います。

数千万〜億単位の話となると現実的ではありませんが、ファッションも含めて「本来お金をかけなくても生きていけるもの」に価値を感じる人同士のコミュニティは、価格の高低に関わらず今後さらに増えていくのではないかと思っています。

つまり、何かを買うという行為は、単に自分の欲しいものを買うだけではなく、どのコミュニティに入るかを選ぶという意味をもつようになっていくのではないかと思うのです。

何をいいと思うかの価値観でつながるコミュニティを形成していくこと。

その入り口としての小売のあり方を、今後私自身も模索していきたいと思っています。

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最所あさみ

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最所あさみ

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