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なぜ私はラーメン二郎を食べるのか?行動経済学よ、教えてくれ

会社の飲み会で上司に言われた、「二郎食べるのやめた方がいいよ、本当に心身壊すよ」が耳に痛い。

誰に隠すことでもないが、私はラーメン二郎が好き。
女友達にパンケーキやパスタ、ピザを誘われたものなら、「どうせ同じ小麦なら二郎がいい」と言ってしまうくらいには。

それでも、ラーメン二郎が体に悪いことくらいわかっている。
なんなら二郎を食べた後のぐったりしている時間は世界一不快だし毎回食べたことを後悔する。

人間が合理的であるという前提に立つならば、ラーメン二郎は存在しない食べ物だとも思う。

まず、二郎はハイリスクハイリターン。新しい二郎のお店に行く感覚はほぼギャンブルだ。並んでいる人たちもパチンコ屋に並んでいる客層と似ていると思う。

池田屋高田馬場店


1つ目、言わずもがなのハイカロリー

普通に成人女性の1日の摂取カロリーを超えている。麺も多いし野菜も多いし油もギットギト。これでも標準体重を下回る体型維持をしている自分を褒めたい。みんなもっと褒めてくれていいと思う。週1回の二郎のために週4~5でピラティスに通い、平日の夜ご飯はアサイーボウル、水は田中みな実様を見習って2L飲んでる。あずき美人茶とかいうむくみ防止のお茶もストックして飲んでる。

2つ目、ゆうて美味しいの1口目、せいぜい3口目まで。

これは全国のジロリアンを敵に回す覚悟を持っていうが、二郎が美味しいのはせいぜい3口目までだ。後は残さずスピーディーに駆け込む言わば作業に等しい。食べ終わった後は毎回謎の酸欠に襲われる。ぶっちゃけ後悔している。

3つ目。店内の居心地は最悪。

最近では接客や店内の設備も充実したインスパイア系が増えているため、一概には言えないが、本家の二郎は正直居心地が悪い。二郎でなきゃ絶対座っていない硬くて小汚い椅子。ラーメンなのにレンゲがない。カスタムのオーダーも「ニンニク入りますか?」というYES/NOクエスチョンに「野菜ニンニク油(マシマシ)」などWhatで答えるシステム。ここで「ニンニクいります」と言った暁には店内で白い目で見られる。日本語が成り立っていない空間だと思う。

行動経済学が教えてくれる人間の矛盾

歴史の長い「経済学」では、"人間は合理的な選択をするものだ"という前提で築かれてきた。それに対し、人間の合理性というのは状況によって変わりうるのではないかという仮説から、人間の非合理的な部分を探求しているのが「行動経済学」。

わかりやすい例を挙げてみる。
2006年5月、マクドナルドは「サラダマック」という新メニューを発表した。きっかけはお客様の声だという。

「ヘルシーなサラダを手軽に食べたい」「ヘルシーじゃないからマックには行きません」という意見を聞いた当時の商品開発メンバーは、野菜と果物を使ったカラダに優しい「サラダマック」を開発した。

しかし、結果は期待とは大きくずれてほとんど売れず、販売終了となった。
「ヘルシーなマックがいい」と言ったのは"お客様"なはずなのに。

人間は合理的であると思うなら、アンケートのデータをそのまま反映し、アンケートに書かれていることを書けば売れるだろうと考える。

しかし、人間は「綺麗に見せる嘘」をつく。本心ではなく、建前。

その後マクドナルドはあえて不健康そうな食事を開発する。
2016年にはビッグマックの約3倍の大きさの「ギガビックマック」を発売。2022年6月にも再販売したもののすぐに売れ切れるほどの人気を誇る。

『時々ガッツリした美味しさが味わいたくなって、背徳感を感じながら食べてしまうのがマクドナルドらしい』と当時マクドナルドのCMOだった足立光さんは自身の著書で綴っている。

なぜ私はラーメン二郎を食べるのか?


タイトルにもある、「私がなぜラーメン二郎を食べるのか?」という問いを行動経済学から考えてみる。先に述べたように、二郎を食べるデメリットの方が私には大きい。

ピークエンドの法則

ピークエンドの法則
人が経験を評価する際、最も強烈な瞬間(ピーク)と終わり(エンド)の印象を重視する心理学の原則。

最近見た映画を思い出してみるとわかりやすい。人はもっとも印象的だった部分と最後をもっとも記憶している。
私にとって二郎の「ピーク」は、二郎を食べて脳汁が出る一口目。「エンド」は満腹になって胃もたれでぐったりしている自分。だから二郎を食べる前はこの二つが天秤にかけられている。でもきっと、「ピーク」の印象が強すぎるのだと思う。

限定性の法則

限定性の法則
人々が希少または限定されたものをより価値が高いと感じる心理的傾向を指し、希少性が魅力や欲求を増すという原則。

私の身近な二郎は、他のラーメン屋と比較して営業時間が短い。そして土日であれば30分以上は並ぶ。営業時間が短いからこそ、今なら二郎に行ける!!と思い、駆け込む。そこには考える隙間がなく、限定ものに飛びつく感覚に近い。

即時報酬

即時報酬
人々が直近の利益や快楽を将来の損失やリスクよりも過大に評価する心理的傾向。

「1日我慢したら目の前のマシュマロが2個になるよ」と言われてもその場で食べてしまう人が多いという研究結果にもあるように、人は「今、ここ、私」が大事だ。二郎を我慢して痩せる自分、スッキリした状態より(長期的な視点)も、今の満足を優先させてしまう。

人間は非合理だから面白い

私が何者かを名乗らずここまで綴ってしまったが、私は普段Web3型のデジタルコミュニティにおいてコミュニティデザイナーをしている。

クライアントのプロジェクトに合わせてコミュニティを設計し、構築する。
構築するまでは偉そうにコミュニティはこうだとか人間はこうだとか話しながら進行していくが、正直コミュニティを開ける時は毎回緊張する。

理論ではこうなるはず、こういう行動変容がここで起きるはず、と仮説を詰めるが、人間の合理性は状況によっていとも簡単に変わりうるからだ。

経済学だけを学んだ人は、私に「ヘルシーでおしゃれなラーメン」を提案するだろう。でもこの文章を読んでくれた方はそうではないとわかるはず。

コミュニティデザイナーという仕事を突き詰める中で、ロジカル、データだけではわからない人間の部分をもっと理解したいと強く思う。

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