見出し画像

けもフレはかけがえないし推す価値がある

 あんまり強い断定口調のことを言いたかないんですが個人的には常々タイトル通りのことを思っているのです。で、一回整理して文章にしないといけないと思ったのです。

 昔から動物は好きでしたし子供の頃は周りからは動物博士として扱われていた。あとは絵を描くのも好きだったが人を描くのは苦手だったので漫画ゲームなんかの版権キャラクター以外だと動物を描くことが多かった。
 勉強で生物が得意だったのも大学で農学を専攻することになったのもその延長だろう。しかし出来た学生ではなかったし、軽い気持ちで環境問題について考えるつもりでいたら学べば学ぶほどに「あれ? 色々なんやかんややっても解決って無理そうじゃね? 環境問題って」と思ってしまって急にやる気がなくなってしまった。興味が他のことに向いたのもある。最終的に研究室ではなんか木質材料工学的なことをやっていたし。(それに真面目に通わなかったし)
 そこから動物とは若干距離を取っていた。ついでに絵を描くのも並の人よりは上手くても上には幾らでも人はいるのでいつの間にか限界を感じて筆を折っていた。才悩人

 けもフレを知ったきっかけは「手作りで焼印って作れないか?」と人から言われて作り方を調べた時に見た作中のロゴマークの焼印を自作して饅頭に押す動画だったと思う。

 動画の内容はそこそこの専用機械にCADデータを入れて10mmの鉄板を削るものだったので参考にならなかったし、結局焼印も作る必要もなくなったのだが、流行っていたしそこからチェックするようになりハマった。今じゃ二次創作もしている。

 正直それまで美少女コンテンツ、擬人化コンテンツにほぼ興味を示さなかった自分がここまでハマったことに対して驚いてもいるし必然でもあると思っている。

 動物をテーマにしたり擬人化させた作品は多々あると思うが、その内容というのはマスコット的なキャラクターとか「人間性」を寓意的に表現したものが多い気がする。
 前者は多々あるけど例えば『どうぶつの森』シリーズとか。しかし昆虫採集とか釣りの博物学的内容は作りこまれている。
 後者は『ズートピア』『BEASTERS』『BNA ビー・エヌ・エー』とか。人類とは別の獣人種族が存在する世界観だが「考え方の違う他者と理解し合えるか」「本能や感情を理性で抑え込めるか」と言ったことを現代の寓話として描いている。やや外れるが萩尾望都の『イグアナの娘』や最近だと『オッドタクシー』なんかもこのパターンの変形かもしれない。
『キリングバイツ』だとか『群れなせ!シートン学園』なんかもあるが「異能バトルもの」「学園コメディ」といった"ハード"「動物」という"ソフト"が組み込まれている感覚である。『ONE PIECE』の悪魔の実が全部ゾオン系みたいな。
 最近じゃ『ウマ娘 プリティーダービー』が人気だが自分の中では競馬は「動物」ではなく「スポーツ」であると認識しているから外れる。長嶋茂雄や王貞治を美少女化したような。『みどりのマキバオー』だってスポ根漫画だし。

 こう考えると動物も美少女(あるいは美男、美人)も多くの人は好きだしキャッチーだが動物という構成要素が主体であってそれに擬人化が付随しているコンテンツって意外と少ないように思える。そこに来ると『けものフレンズ』はどうだろう?

 知りはじめて幾つかのアニマルガール(一般的にはフレンズと呼ばれているものの正式名称)を見て、最初に目を引いたのはチーターだったと思う。

画像1

画像3

 動物に興味のない人はヒョウだとかジャガーだとかと混同しがちだが最大の見分け方は目の下の筋である。それをメッシュとウェーブがかかった髪で表現してガールズファッションに落とし込んでいる。キャラクターも最速の陸上動物であるがフィジカルは強くなく故に獲物を選ぶという生態なのでプライドが高い性格付けをされている。
 これで「ああ、ちゃんと動物を観て擬人化しているんだ」と感じた。
 ちなみに人間の耳があるのに獣の耳が生えているとツッコまれもするが、設定上は人間の肉体が素体にあって特性として動物の象徴となるものが生えている、メタ的に言えば翼が生えた鳥や鰭の生えた海獣とデザインを統一するためらしい。
 他個人的に気に入っている中ではミーアキャットあたりも完成されていると思う。

画像2

画像4

・日の照り返しを防ぐため目の周りが黒い→黒縁眼鏡
・直立して辺りを見回す→姿勢がいい
・群れの意識が強く上の兄弟が下に教育や世話をする→家庭教師
・時には獰猛でサバンナのギャングと呼ばれる→たまに口調がキツい
・しかし警戒心が強く臆病な小動物→根はビビリ

 以上の要素をビジュアルもキャラクターも拾い上げて「頼れるがどこかで虚勢を張っている先輩キャラ」にまとめ上げている。
 クオリティや方向性の差異はあれど、これが200~300種類ほどいる。

 そもそも『けものフレンズ』が生まれるきっかけがコンセプトデザインを手掛ける吉崎観音先生が動物園でサーバルを見た時に「こんなにも魅力的な動物がいるのに多くの人が素通りしてしまう」と思ったことによるという。
 実際アニメの放送前後で「サーバル」という単語を聞いて野生ネコだと知っている人はどのくらい増えただろう? 概算でそれ以前は1%程度であったのが少なくとも10%、ネットやオタク界隈に限れば90%以上にはなったと思う。(あくまで概算)
 サーバル、カラカル、ドールと言ったそれまでマイナーだった動物にスポットを当て、バク、ヌー、カバ、ブタ、ゴリラと言った動物すら生態に沿ったビジュアルやキャラ付けされて美少女になっている。多くのオタクが動物園に足を運び動物に詳しくなった。(二次創作界隈ではよりコアな性癖のエロを描くために動物図鑑を漁って資料にしているらしい...)
 影響がすごくて東大が論文で言及したほどだ。

 一方でけもフレは負の側面も突き付けてくる。
 多くの動物を教えてくれると同時に人間によって持ち込まれたアライグマアカミミガメ(ミドリガメ)等が侵略的外来種として生態系を荒らし駆除されていること、多くの動物が絶滅の危機に瀕している、あるいは既にリョコウバトドードーオオウミガラスの様に絶滅してしまっていることを知らしめる。
 ゲームに表示される動物図鑑もレッドリストが下方修正される度に更新される。

 世界自然保護基金(WWF)がプロジェクトに協力していてライブイベントの前にはCMが流れるそうだが、それは間接的に「お前らがちゃんとしないと未来にはお前らの推しは絶滅しているし、推しによっちゃ過去にもう絶滅している」と訴えかけている。結果、募金箱は紙でいっぱいになったという。

 正直今後けもフレ以上に「動物」に関して真摯に向き合えるコンテンツは出にくいと踏んでいる。少なくとも現状、代替になるものがないし、コンテンツとして懐が深い。そして「動物」を扱うことは地球の生態系や資源の多様性や持続性について考えなければならないのでSDGsに直結している。

 キャッチーな題材だが万人が動物に興味を持つことはないし、美少女コンテンツなら尚のこと。より多くの人にけもフレの良さをわかってほしいとは思っているが無理強いはしない。
 しかし各々の好きなことや理想を貫くためには何をすればいいか、真剣に考えなければいずれ個人の生活、ひいては社会の文明に綻びが出てくる。けもフレはそれを考えるきっかけになり得る。少なくとも私に動物と絵を描くのが好きだったことを思い出させてくれた。

 けもフレはかけがえないし推す価値がある。

この記事が参加している募集

コンテンツ会議

SDGsへの向き合い方

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?