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元自宅が水没しかけた話

はじめに

この記事では、2019年10月13〜14日にかけての令和元年東日本台風での体験を時間ごとに記載しています。
時間ごとの出来事ばかりなので、端折りたい方は「何を得たか」まで飛ぶといいです。

元自宅の場所と元自宅について

元自宅は、長野県の東部の街、上田市の千曲川(信濃川)北側沿いの住宅地にあるアパートの一階でした。

上田市と今回出てくる川たち(国土地理院地図に追記)

北の山と千曲川と、そこに合流する神川に囲まれたエリアがこの街の中心市街で、どちらの川沿いにもそこそこの密度の住宅街が広がっています。
私の元自宅のアパートもそんな住宅街にある、特に古くも新しくもない、築20年ぐらいの普通のアパートでした。大家さんがすぐ近くに住んでおり、よく管理してくれていた良い物件。
もとは大家さんの川沿いの畑だった場所の模様。

2019年10月13日に何が起きた?

09:00

私は仕事で150kmほど離れた愛知県岡崎市にいました。
正直、私はこの後史上類を見ない程の被害をもたらす台風19号を舐めており、自宅への対策は窓ガラスの飛散防止テープのみ。風が若干強いものの問題ないだろうと仕事を強行したのでした。むしろ、その飛散防止テープすら過剰ではないかと疑うレベル。

12:00

会社にいる同期から、長野県内の雨が猛烈な勢いになっていて、川も水路もないのに会社が水没しかけている」との電話が入る。
この時点から国交省の最寄り観測所の水位と雨量と河川カメラをかなりの頻度で確認し始めた。(この日以前にも河川水位の確認は雨の度に行っていた)

15:00

千曲川の水位グラフの上昇が止まらず、徐々に焦りを感じ始める。
とはいえ、150km離れた場所では何もできないため、仕事を終わらせようとする。

16:00

上田市で千曲川の水位が避難判断水位となったため、避難勧告(当時)が発令されたとのメールが届く。
当然何もできないため、更に焦りが高まる。

17:00

作業が終了したため、一緒に来ていた会社の方と社有車で上田へ出発。
この頃になると暗くなりライブカメラの映像が不鮮明になり始める。

19:00?

上流の菅平ダムより神川への緊急放水を開始するとのメールが届く。
神川合流部より下流に自宅があるため、水位の上昇の影響は合流部より上流の水位観測所ではわからなくなる。
この頃から徐々に発狂し始める。

20:00

当時の自宅付近を含めた上田市の多数の地区で越水(堤防から水があふれている状態)の情報が入る。
家にある物がどうにもならないことがわかりつつも、完全に自暴自棄になる。
中央道の長野県南部の一部区間が通行止めになった情報が入り、一般道迂回作を取る。

22:00

迂回区間などを抜け上田市南部に到着。
上田市内に入るとエリアメールが乱発状態になったが、内容は「どこの避難所も満杯なので◯◯地区以外の場所に行け(具体的な場所は書かれていない)」といった物が多数で、いよいよ有事も極まったものだった。
結局、自家用車は会社に置いたままにしたほうが安全だろうということで、社有車でそれぞれの自宅に向かうことに。

川の北にある家に向かおうとするものの、複数の橋が消防団によって封鎖されていた。(17時ごろに、隣町にある橋の取付道路が陥没して、1名が行方不明となっていたため)
3箇所ほど回ったところで、取り付け道路と橋脚が高い18号バイパスの橋であれば通行可能ではないかと考え、向かったところ無事通過に成功した。

22:30

市内を大きく迂回し自宅に到着。
途中、おおよそ市内の高台といえる場所の公民館やコンビニには、避難所に入れなかった車が多数避難していた。
すでに雨と越水の勢いは弱まりつつあったものの、自宅の駐車場は水没していた。
引き続き破堤の可能性があるため、可能な限りの荷物を社有車に積み込み、積み込めない分は戸棚などの高い箇所に放り投げ脱出。
帰路は同じルートを逆に辿り、県内の実家に向かった。
ちなみに、18号バイパスの橋を通過した少し後に強風により封鎖され、上田市内では千曲川を渡ることが不可能に。

2019/10/14 00:00

実家に到着。
すべての荷物を下ろし寝た。
精神安定のため、こんなときにも駅メモを起動していた模様。

01:00

下流の長野市、須坂市、小布施町、中野市などでかなりの規模の浸水被害が発生しているとの情報を見る。自宅付近のライブカメラや水位などを確認するも状況が読めず、自宅の浸水状況と片付けの想像をして精神的にかなり凹む。
どうにか寝れた模様。

05:00

社有車の返却と自宅の状況視察、片付けのため自宅へ出発する。

06:30

上田市内の橋を渡ろうとしたところ、警察が封鎖をしていた。
何があったか聞いたが、警察の方も状況が読めないようで、とにかく迂回してくださいとの指示に従う。

06:45

エリアメールにより、先程渡ろうとしていた橋の横の堤防が崩壊しつつあるため、約5000人近くに避難指示が出されたことが判明。
崩壊箇所は自宅の反対側であったため、まずは自宅に向かうことに。

7:30にきた市の普通のメール

07:00

通行止めバリケードのない場所を通過し、自宅に到着。途中、上司に遭遇したため社有車の使用許可を得た。
自宅は、駐車場は完全に泥で覆われていたものの、床上、床下、上下水道のフタまで完全に無傷状態。
大家さんが泥の片付けと、避難前に川の堤防に登った武勇伝を語っていました。駐車場の清掃を少し手伝い、一旦会社に車を返しに行くことに。

08:20

社有車への給油や迂回などを行い会社に車を返却&自家用車回収。
完全に安心した状態でツイッターを見たところ、上田電鉄の鉄橋崩落と建設会社による崩壊しかけの堤防へのブロックと土のう投入を確認。上田電鉄廃線の可能性を感じ、再び情緒不安定になる。

09:00

長野県へのガソリン輸送事情が悪くなることを考え、自家用車へのフル給油を行って再び自宅へ。
駐車場の清掃を行い、実家へ。

12:00

妙に情緒不安定だと思ったらインフルエンザでした。

しばらく実家で過ごすことになったのでした。

何を得たのか

個人的に今回得た経験は以下の通り。

  1. 地域の地理地形と地図を頭に入れておくことの重要性。

  2. 増水が不安ならそもそも川沿いや低地に住まない。

  3. (地域的に被害が少ない土地だからといって)自然をナメない。

  4. 大家さんが物件の面倒をよく見ているところはおすすめ。

1.に関しては、橋の迂回のみならず、避難にも役立ちます。近くに何があるのか、近い高い場所はどこか、車が何台も通れる道か。など知ってるほど緊急時に自分の手札になります。

2.に関してはそもそも論。
とはいえ、川沿いや低地に住まざるを得ないのであれば、堤防が上流〜下流まで改修、強化されているかも確認すべきです。

3.は過剰な対策でもいいくらい。未だ人間は自然のすべてを手なづけられていないことを再確認しましょう。

4.あまり言及されませんが大切なこと。
今回、低地にあるはずなのに駐車場以外に被害がなかったのは、アパートの建屋全体を200mmほど嵩上げしたコンクリートの上に建てていたからでした。こんな金のかかることをしたのは大家さんです。
もし部屋を選ぶのであれば、物件を大事にしている方のところを選ぶと良いかもしれません。

おわりに

水害に対して日頃からできる事は少ないですが、まずは自分の街の地図や地形を知ること、ハザードマップを眺める事からでもいいのでなにかしていただけるといいかななどと思います。

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