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ロッカーファンクションについて

ロッカーファンクションはヒトが歩行を行う上で非常に重要な機能です。ロッカーファンクションは意識して行うというよりも、自然とできるが正解だと思います。

一般的に健常者の歩行はIC(踵接地)で外側から接地し距骨下関節(以下ST)は回外し、LR(足底接地)で回内が起こり、距腿関節は背屈し、Tst(足趾離地)でSTが回外で剛性を高めて次のフェーズへ移行することができます。

しかし、膝OAの方はICで踵接地時回外からの接地ができないことが多く見られます。これはSTが過回内しているからです。

過回内しているとなにがダメなのか

これはロッカーファンクションを理解すると分かると思います。


まず簡単にロッカーファンクションについて説明すると、

「歩行をスムーズに行うもの」

と捉えると分かりやすいかと思います。

・ヒールロッカー
・アンクルロッカー
・フォアフットロッカー

この3つから成り立っています。一つずつどのような役割があるのか見てきましょう。

・ヒールロッカー


まず第一がヒールロッカーです。
床と踵が接点にある時を指します。歩行周期で言うところのICです。

この相では荷重の際に前方に落ちていく重心をヒールロッカーの機能によって受け止めます。この時踵骨から接地し、足関節には外部足関節底屈モーメントが発生します。

それと拮抗して内部足関節背屈モーメントが発生し、前脛骨筋や長趾伸筋など足関節背屈筋が底屈しないように遠心性収縮を行いブレーキをかけます。

ヒールロッカーの一番重要な機能としては足全体を前方へ移動させることです。つまり、体を前方へ推進させることです。

これが機能していないと床面に対しての足関節の背屈が見られず、床面に対して足関節が平行になっている方が多く見られます。特に年配の方ではこのようなICから歩行が始まる方が多いです。


・アンクルロッカー


この相は歩行周期で言うとMstとされています。ヒールロッカー機能で重心が前方へ移動できたらさらに重心を前方へ推進させていくために足関節を支点にします。

足関節を支点にして、足関節は背屈していきます。Mstに入ると、足関節の後方を通っていた床反力が前方を通ります。

これにより、下腿三頭筋が前方への動きを安定させるとともに遠心性収縮に働き、ヒールロッカー機能に引き続き足の前方への動きを制御します。

臨床ではこの時にSTの回内が強いと足関節を外転させて背屈を代償させようとします。足関節が外転すると下腿は外旋(場合により内旋)し大腿と下腿の間で回旋ストレスが生まれ膝の痛みが出る可能性があります。

その為、ここでの足関節の背屈は非常に重要なものと言えるのです。


・フォアフットロッカー


そして最後にフォアフットロッカー機能です。
この相はTstで起こると言われています。フォアフットロッカーは中足趾節関節(以下MP)を支点にしてアンクルロッカーから続き下腿三頭筋の収縮で前方への動きを制御していきます。

身体重心がMP関節を過ぎると前方への推進力はさらに加速していきます。

ヒールロッカー機能、アンクルロッカー機能が正常に働いていれば、フォアフットロッカー機能も正常に機能します。

偏平足や開帳足などで足趾の筋機能低下を起こしていたり、膝の伸展制限で下腿三頭筋の収縮が機能していなければ正常に働きません。

例えば、膝OAで膝の伸展制限があったとします。膝OAの場合一般的にMst~Tstにかけて膝関節、股関節の伸展が制限されることがあります。

そうすると先ほどのヒールロッカー、アンクルロッカー機能が正常に働かず、重心の前方移動がスムーズに行かなくなります。

そうなると、フォアフットロッカー機能も働かず重心は後方位のままでPswへ移行していくので歩幅も狭くなります。単脚支持期での安定性も低くなります。


このように歩行と言っても意識するだけでスムーズに歩くことはできません。

回内にすることで膝の安定性を保ち、Tst~Pswにかけての時間を短くし歩幅を狭くすることで歩きやすくする、痛みの出ない歩行戦略を無意識化でしているのです。

なので、まずは膝の伸展制限、足関節の背屈制限、下腿三頭筋の筋力強化などなどまだまだやることは沢山ありますが、可動域の面と筋力的な面からアプローチしていくことが大事かなと思います。


参考文献

・月城 山本 他:観察による歩行分析

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