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仙腸関節を紐解く


・解剖学

仙腸関節は腸骨と仙骨で構成された関節で、体幹と下肢を繋ぐ関節です。仙骨側の凹面と寛骨側の凸面により適合性が保たれています。
仙腸関節周囲には沢山の靱帯や筋があり仙腸関節の安定性を助けています。

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主に仙腸関節を安定させる靱帯が、
・前仙腸靱帯
・腸腰靱帯
・骨間靱帯
・後仙腸靱帯
・仙結節靱帯
・仙棘靱帯

筋肉が、
・脊柱起立筋
・多裂筋
・腹直筋
・腹斜筋
・腹横筋
・広背筋

これらの軟部組織が仙腸関節の安定性を助けています。

そして、このような組織には侵害受容器や神経終末が豊富に含まれています。つまり痛みを感じやすい組織であることが分かっています。

仙腸関節にストレスがかかる例として、腸骨のアライメント不良、脚長差による骨盤の非対象、腰椎前弯の増強などのメカニカルストレスが加わると損傷する可能性があります。

そして、特に仙腸関節を含む腰背部を安定させている組織が、
「胸腰筋膜」です。

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胸腰筋膜は腰椎の筋を含む前層、中層、後層の3つの層から構成されています。胸腰筋膜に付着している筋は、大殿筋、広背筋、腹横筋、内腹斜筋など様々です。腹横筋や内腹斜筋は胸腰筋膜を介して脊椎の安定性に関与していると言われています。


また、大殿筋や広背筋は腰部の伸展トルクを高めるとも言われているのでこれも仙腸関節の安定性に繋がります。

簡単に言えば、胸腰筋膜には腰部を安定させる様々な筋が付着しているのでそれらの筋が収縮を起こせば胸腰筋膜に張力が伝わり仙腸関節を安定させますよー、というようなことを言っていると思ってもらえれば大丈夫です。逆を言えば、これらの筋が過剰に使われるor使われなさすぎは仙腸関節の不安定性に繋がることも意味しています。


・役割

仙腸関節の主な役割は2つあり、
・骨盤輪が受ける荷重応力を軽減するメカニズム
・体軸骨格と下肢との間の負荷を伝達させる安定的な役割

体幹と下肢を繋ぐ場所に位置している仙腸関節の役割はとても重要です。

仙腸関節は可動性がある、ないなど専門家の間でも未だに議論が行われていますが、1~4度の回旋、1~2mmの並進が行われているということも言われているので、ここでは仙腸関節は可動性があるという呈で話を進めていきます。

先ほども述べたように仙腸関節付近には様々な筋や靱帯が付着しています。

大殿筋による仙腸関節の圧迫力は胸腰筋膜を介して仙腸関節の安定性に貢献した。

仙腸関節の剛性は大腿二頭筋、大殿筋、脊柱起立筋の活動が増加した時に高まった。

上記のような報告があることから、このような組織の張力の減少や機能低下は骨盤の不安定性やアライメント不良の原因となります。荷重の伝達や軽減が適切に起こる必要があります。


・運動学

仙腸関節の運動学を知る前に安定性を高める機能として、

・フォームクロージャ―
・フォースクロージャ―

この2つを理解する必要があります。

・フォームクロージャ―
骨形態や関節構造によって得られる関節の安定性

・フォースクロージャ―
筋・腱・筋膜などの張力による関節の安定性


仙腸関節の運動学として、

・ニューテーション(うなずき)


これは簡単に言えば、骨盤の前傾です。もっと細かく見てみると仙骨が前傾した時に腸骨が後傾します。この動きは仙腸関節が締まるポジションで安定性に繋がります。


ニューテーションが起こる時、左右の腸骨稜は近づき、坐骨結節は反れる動きをします。これをインフレア(内旋)と言います。ニューテーションとインフレアはセットで覚えておくといいかもしれません。

そして、ニューテーションは関節が締まるポジションになるのでフォームクロージャ―を高める動きになり安定性がさらに高まります。


・カウンターニューテーション(起き上がり)


ニューテーションの逆で、骨盤の後傾です。仙骨が後傾した時に腸骨は前傾します。この動きは関節が緩くなるポジションになるので仙腸関節自体も不安定になります。カウンターニューテーションは左右の腸骨稜が離れる動きをするのでアウトフレア(外旋)と言います。


カウンターニューテーションとアウトフレアはセットで覚えましょう。

カウンターニューテーションの状態が慢性的に続くと仙腸関節自体が緩い状態にあるので、先ほどの胸腰筋膜の張力が高まらずに、フォースクロージャ―・フォームクロージャ―機能ともに低下したままとなります。これが軟部組織にストレスを加えて痛みの原因となります。


<まとめ>
・仙腸関節の安定性を高めるためにはニューテーション、不安定になるのはカウンターニューテーション
・フォームクロージャ―は骨構造、フォースクロージャ―は筋や腱


参考文献
・原著第2版 筋骨格系のキネシオロジー

・Tensile transmission across the lumbar fasciae in unembalmed cadavers: effects of tension to various muscular attachments

・Stabilization of the sacroiliac joint in vivo: verification of muscular contribution to force closure of the pelvis

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