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半導体の本を読んだので最近の情報を調べつつまとめてみた


イントロダクション


2030半導体の地政学という本を読んだのでまとめつつ、最新情報と照らし合わせ!半導体?なんかスマホとかに入ってるチップ的なやつでしょ?くらいのノリから読み始めたけど、米中の対立を時系列ごとや各企業や国の状況が分かりやすく書かれてて最高の本だったのでぜひ~


国家安全保障としての半導体 現代における
「地政学」は陸、海と同様にサイバー空間も舞台となる。その仮想的なデータの受け皿となり電子的に処理するハードウェアが半導体である。あらゆる製造業、サービス業に欠かせない商品で、人々の暮らしを見えない部分で支える社会インフラとして存在する。そして、半導体のもう一つの側面は戦略物資としての価値である。AIチップ搭載の兵器やドローン、高速で情報を処理するための半導体を用いた通信網などにおいては機密性の高い専用チップが使われる。つまり、半導体を制するものが世界を制する

らしい。

半導体サプライチェーン

半導体サプライチェーンはその工程が複雑に絡み合っている。

ファブレス

ファブレス企業は、自らの工場(ファブ)を持たずに、エンジニアによる半導体の設計と開発に特化している。このカテゴリーの代表例には、クアルコム、アップル、ノルディック・セミコンダクターがある。

ファウンドリー

ファウンドリーは、ファブレス企業から製造を受託する企業であり、製造プロセスを「前工程」と「後工程」に分けている。代表的な企業として、TSMC(台湾積体電路製造 Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)が挙げられる。

製造プロセスのステップ

前工程では、ウエハー(基板)の製造、回路の基本パターンを形成する基本構造の作成、不要な材料を削り取るエッチングなどが行われる。これには、信越化学、旭硝子、エムエスク・ダウ・コーニング(MSD - Merck KGaA, Dow, Corning)、東京エレクトロンが関わっている。

後工程では、半導体チップ内の回路要素を接続する金属化、回路の異なる層を絶縁する絶縁層の形成、製品の品質保証と機能確認のテスト、そして物理的なダメージから保護するためのパッケージングが行われる。このプロセスには、アルファリリー、ラウドンメタル、ラムリサーチ、キーサイト・テクノロジー、テスタープロ、アムコア、アーセナル・キャピタルが寄与している。

IPベンダーとIDM

IPベンダーは、回路の基本パターンや設計支援ソフト(EDA)を開発し、これらをライセンス供与する役割を担っている。アーム、シノプシス、ケイデンス・デザイン・システムズがこのカテゴリーに含まれる。

*DM(統合デバイス製造業者)は、設計から製造までを自社で一貫して行う企業である。インテル、サムスン電子、マイクロン・テクノロジー、キオクシアが有名である。

このように、半導体は国際分業化が進んでおり設計はアメリカやヨーロッパで行われることが多く、製造は台湾や韓国が中心。さらに、最終的な組み立てやテストは、コストが低い中国や東南アジアの国々で実施されることが一般的。それぞれの強みを生かせる一方、貿易摩擦やコロナなどの外部ショックや各ステージでの情報共有の問題もある。

シリコンサイクル

半導体業界特有の経済サイクル。技術の進歩が速く、製品のライフサイクルが短いため、需要と供給のバランスが絶えず変動するため、半導体業界の好況と不況の周期的な変化が起こる。
需要の変動: 半導体製品の需要は、新技術の導入、経済の成長、消費者の嗜好の変化などによって大きく変動。たとえば、スマートフォンやパソコン、データセンターの需要が増加すると、半導体の需要もそれに伴って増加する。
供給の調整: 半導体の製造は高度な技術と莫大な投資を要するため、供給の調整が難しく、市場の需要に迅速に対応することができない。新しい工場の建設には数年と数十億ドルの投資が必要であり、需要の予測が外れた場合、過剰供給または供給不足に陥りやすい。熊本にTSMCが建設する新工場の総投資額は約3兆円。2022年4月着工の第一工場は急ピッチで進められているが2年かかり、2024年末までの稼働を目指している。
周期性: 上述の要因により、半導体業界は約4年で定期的に好況と不況を繰り返す。半導体業界だけでなく、半導体を使用する全ての産業に影響を与える。→AIを用いた予測による需供の管理、政府や機関による規制が必要?

各国における半導体

  • アメリカ
    ホワイトハウスや各業界が連携し、莫大な金額を”国家安全保障”のために投じる
    弱点であるファウンドリーを補うためにTSMCやサムスンのファブを誘致したい
    半導体製造の地政学的リスク回避のため中国への依存を緩和し自国内での完結、QuadやG7と連携し半導体同盟を組むことを目指す
    中国相手には規制

  • 中国
    アメリカ同様採算度外視の設備投資と増産を行う
    BATー百度伝(バイドゥ)、阿里巴巴集团(アリババ)、腾讯控股有限公司(テンセント)によるEVと自動運転開発
    紫光集団は中国の半導体のカギを握る企業であるが、資金繰りに難航しデフォルト
    →にもかかわらず子会社は好調
    →傘下の企業間に何層も企業が存在、各層で関連会社が挟まり政府系金融機関や国営企業が直接出資
    →紫光集団トップの趙偉国が退任すれば半導体産業の塊がそのまま国営へ…?
    TPP参加でデータの自由貿易化を狙う

  • EU
    圏内の半導体関連企業を束ね”欧州半導体連合”を構想

  • ドイツ
    国内輸出(米中ともに8%)産業の歓心を買うために親中路線→台湾海峡への言及等中国と距離を置き始めた自動車産業の将来を見据えた戦略(BATからの”お客様”になってはならない、技術面でのつながりは慎重に)

  • オランダ
    高度露光技術を持つただ唯一の会社ASML(キヤノン/ニコンは負けちゃった)母体はオランダ・フィリップスだが、工学系装置とレーザー光線装置はドイツ・カールツァイスとトルンプなどオールヨーロッパで支えられている

  • ベルギー
    微細電子工学と情報技術の非営利研究開発機関IMEC(アイメック)2000人以上の研究者・エンジニアが50か国の企業から派遣されてくる世界のオープンイノベーションハブであるが故に近くのオランダASMLを支える中国企業は大口の顧客であるため西側諸国ではあるがアメリカへの切り札として存在する

  • イギリス
    チップ設計のトップであるアーム 3兆5000億ドルでソフトバンクが買収IPベンダーの最大手で、クアルコムやエヌビディアは基本回路の設計図を購入、組み合わせることで自社チップを完成させていく
    エヌビディアへの売却が噂されるもイギリス政府により阻止

  • 日本
    経済支援の面では各国に遠く及ばず、遅く…
    日韓徴用工問題に際して日本の得意なフッ化水素、フッ化ポリイミド、フォトレジストを輸出規制→韓国企業の締めあげ/日本中小企業の韓国の拠点拡充/韓国半導体製造の国産化
    東大×TSMC
    d.labにより半導体との縁に関わらず40社以上の企業が集まり、半導体の利用を会議する”広場”→プロトタイプをTSMCが製造RaaS(先端システム技術研究組合)で個別の会社と東大・TSMCがクローズドで開発
    自民党3Aによる半導体議連立ち上げ
    TSMC工場誘致に成功
    NTTによる光電融合素子開発IOWN(電気の代わりに光がチップ内を走る→高速化)
    米ウエスタンデジタルによる元東芝キオクシア買収の噂→規模の経済の拡大、NAND型メモリー開発の技術力&成長性
    富士通とパナソニックの半導体部門統合ファブレス企業 ソシオネクスト→100%カスタムメイドのため転用できない特注品を製造
    次世代ロボットカーやVR/AR機器に利用 パートナーをどうやって見つけるか

  • 台湾
    業界シェア60%越えのTSMC筆頭に有力なファウンドリーを構える”ファウンドリー”の仕組みを発展させた創業者モリス・チャンアメリカにも中国にも下らない地政学リスクヘッジ

  • シンガポール
    米親中ほぼ半分
    マレースマトラ半島間のマラッカ海峡に通る海底ケーブル
    アメリカとは軍事的協定を結ぶが、経済的メリットで動きがちな東南アジア諸国は紅色供応鏈(中国と貿易の繋がり)に傾き一対一路に乗り込む可能性も
    実は半導体工場めっちゃある→シンガポール経済開発庁(EDB)による企業分析と誘致

  • アルメニア
    隠れたIT国家 
    ソ連のシリコンバレー多くが海外から進出してきた外国企業 シノプシス、メンターグラフィックス、マイクロソフト…
    一方、vsアゼルバイジャンとナゴルノ・カラバフ領有権問題
    アルメニアはロシアが陰に、アゼルバイジャンはトルコ系の代理戦争の側面もアメリカはIT企業の顔を伺いアルメニア支援
    トルコの陰にはイスラエル
    一対一路‐デジタル・シルクロードを狙う中国も中央アジア・東欧に黙ってない…

将来

  • 新国際ルール
    自由貿易の原則を守りながら安全保障の要素を盛り込むTPPの先導(デジタルTPP?米中はどうする?)

  • ムーアの法則
    消費電力の壁チップの集積度が2年で2倍に(経験則)回路の線幅は最新だと2ナノ(ウイルスより小さい):安定供給の是非集積度が上がるほど詰め込めるので消費電力が大きくなる

本からのアップデート

  • アメリカ
    国家安全保障を重視した国内生産能力の強化や中国への依存度を下げる方向性は継続
    2022年8月に、CHIPSおよび科学法(CHIPSプラス法)を成立→5年間で連邦政府機関の基礎研究費に約2,000億ドル、国内の半導体製造能力の強化に約527億ドルを充てることを決定
    対中政策
    ①スパコンやAIの頭脳は輸出せず
    ②技術世代14~16ナノメートル以下のロジック、積層数128層以上のNAND型フラッシュメモリーなどを作る施設への装置輸出に制限
    ③半導体回路の設計ツール「電子設計自動化(EDA)」も規制、中国での先端製造施設における米国籍の技術者の関与も規制
    ④米蘭日でEUV(極端紫外線)露光システムの対中輸出

  • 中国
    アメリカの規制に対し自国強化で対抗
    国家集成電路産業投資基金(大基金)で3000億元(410億ドル)の調達を目指す
    紫光集団の傘下だった長江存儲科技(YMTC)のメモリー多層化技術は200層の大台を超え、世界3番目の速さで中芯国際集成電路製造(SMIC)が7ナノ製造。世界の先端技術に追いつき、AI半導体の分野でも壁仞科技(BIREN)がNVIDIA「A100」に比べて速度で2倍強の性能を超える性能を持つ製品を開発。半導体の基礎研究でも論文数で世界一となるなど、迅速な進歩を遂げる。最終組み立て工程においても存在感を持つ。
    一方、「中国製造2025」で半導体自給率を2030 年までに 75%に引き上げるという計画を掲げていが、巨額の半導体ファンドでの事業失敗、ファンドの幹部が汚職容疑で逮捕されるなど目標達成は厳しい。

  • EU
    欧州半導体法を承認。2030年までに世界の半導体生産に占める域内のシェアを20%に倍増すること、東アジアからの輸入に過度に依存する現状からの脱却を目指し430億ユーロ(470億ドル)を投じて域内の半導体産業を育成。
    この法による助成金を使いTSMC子会社の欧州半導体製造子会社(ESMC:European Semiconductor Manufacturing Company)をドイツに誘致、2027年に車載分野と産業用半導体の生産開始を予想

  • ドイツ
    ESMCをドレスデンに建設、インテルもマクデブルクに工場を建設する計画が合意済み。
    これらの建設に関わる補助金の一部(125億ユーロ)を気候変動基金(KTF)から支出する予定だったが、2021年にコロナ対策として準備した財政資金の未使用金600億ユーロ(約9兆8000億円)を気候変動基金に振り向けるという政府の予算調整措置について、違憲判決が下された。2024年度予算は170兆ユーロの不足となり、半導体分野への支援は48億ユーロとなった。(独政府は工場建設に対して最大50億ユーロの補助金を承認との報道もある)

  • オランダ
    ASMLが約5800億ドル(約78兆円)規模の企業へ成長を続ける韓国と政府・企業・大学をつなぐ半導体アライアンスを構築、ASMLとサムスンやSKハイニックスなど韓国企業の連携強化で韓国の半導体産業とASMLはどちらも安定した利益が見込める自動車向けのNXP Semiconductors、原子層堆積(ALD)技術のASM International、組み立て、パッケージングではBesi (BE Semiconductor Industries)なども好調

  • ベルギー
    imecがトヨタ自動車など8社が出資する半導体メーカーのラピダスと、次世代半導体の開発で協力していく協力覚書(MOC)を締結、ラピタスも工場建設を予定している北海道千歳市に2024年中、研究施設開設する計画

  • イギリス
    半導体分野に10億ポンド(12億6000万ドル)投じて、国内の半導体産業とサプライチェーン(供給網)を強化する計画SB傘下のArmはNASDAQに再上場、NVIDIAへ売却計画があった時よりも2倍以上の時価総額に(もし売却してればNVIDIAの株ももらえたからそれ以上の利益だったかも…?)

  • 日本
    東大のd.labとimecがパートナーシップ締結
    トヨタ自動車、NTT、ソニーグループ、キオクシア、ソフトバンク、デンソー、NEC、三菱UFJ銀行の国内8社が計約73億円を出資し、ラピダスを設立。2027年に2ナノ製造を目指す。
    半導体議連は10年10兆円規模の投資を必要とし、半導体産業への「異次元の支援」を求める。
    ウエスタンデジタルとキオクシアの経営統合は破綻(統合協議再開の報道も?)
    2024年は熊本のTSMC(JASM)、石川の加茂東芝エレクトロニクス、宮城でラピスセミコンダクタ、石川でキオクシア、山形でルネサスの工場がそれぞれ完成予定であり、以降も宮城でJSMC、広島でマイクロン、北海道のラピダスなど工場建設ラッシュ
    Iwonは2024年に仕様確定米中には劣るものの、補正予算案におよそ1兆9000億円盛り込むなど上記の工場建設にも支援

    もしかしたら、2024年の日本は半導体激アツかも!

  • 台湾
    相変わらずTSMCつえ~熊本に12ナノの1,5ナノの2工場を建設発表、第3第4も?一方国内・桃園の2ナノ先端半導体工場の約29億ドルでの建設計画は地元住民の反対により断念米中への関係に関しても、どちらに偏ることは現在もない様子?米国の輸出管理規制対象外の範囲内で中国と取引台湾総統選で当選した頼清徳は対中路線引き継ぐ見通しのため台中対立先鋭化でどうなるか?

  • シンガポール
    思ったよりもいろいろ出てきたのでまた別記事でまとめたい!

  • アルメニア
    特に防衛産業における半導体輸出は世界4位に
    スタートアップ・エコシステムの存在感が高まっている写真動画編集のPicsart、AI、ドローン防犯のScylla、映像制作のPopokなどなどシノプシス、ナショナルインスツルメンツ、マイクロソフト、シスコ進出
    ウクライナ侵攻を起こしているロシアと協調関係にあること、ナゴルノ・カラバフ紛争の影響などリスクはあるものの、防衛産業の好調は紛争による特需?

個人的な感想

半導体の製品としての不可欠さと地政学的役割の二つの面での役割を実感。あんなに小さい半導体チップが世界を大きく動かす力を持っている…びっくりするくらい発展速度は速いAI。高性能なAI開発にも動かす製品にも半導体は必要。AIで研究速度も上がり、ほかにも量子コンピュータ技術やエネルギー開発などで使われ今後はより一層半導体の価値が上昇すること間違いない…!

そんな中で半導体にぶっぱしてる日本、ぎりぎり世界に置いてかれずについていける最後のチャンスをつかんでいる感じがする。とくに今年の動きには大注目。工場稼働開始する中でサプライチェーンにどんな影響を与えるか?そして熊本周辺の求人はいくらまで上昇するのか…

いい本選んだ自分に感謝!


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