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大みそかはやっぱり第九。

文章力って書いていないと落ちるものだし、だからといって書き続けても上がるものでもないとは思っています、、という言い訳的なことから始まりまして、申し訳ないです。

前回は、カウント・ベイシーについて書いていましたね。あまり好意的な文章かは置いておいて、ですが。

いやー、年末です。年末と言うか、もはや大晦日ですが。
とかく、年末になると、街中ではクリスマスソングが流れるか、あとは第九ですかね。
昨今、こんな中ですが、その煽りを受けて、海外の指揮者を招けず、代理の指揮者で第九をするというニュースが流れてましたが、まだまだ年末に第九を聞き、新年は美しき青きドナウを聞くという文化はまだ変わっていないものだななぁと思いました。まぁ、年末の第九は、もっぱら日本に限られる(一部はそうでもないらしいのですが、その辺はWikipediaで調べてみてください。)

第九のレコードを熱心に買い集めたわけでもないのですが、年末になると、よく第九のレコード、フルトヴェングラーのバイロイト祭のを引っ張り出して、うーん年末だなぁと思って聞いていました。でも、それに思い入れは全く無く、まあ、そういうものかと聞いていました。

本当は、今年のよく聞いたアルバムとか、クリスマスレコード集とか書きたかったのですが、なんだか、うーんとしているうちにおおつごもりを迎えるという始末に…。まあ、結構クラシックのレコードも溜まっていたので、年末の整理がてら、聴き比べ、と言ってもそんなハードなものでなく、第九の第4楽章に絞って、ウチにあったレコードを中心にちょこちょこっと書きます。

1.アルトゥール•トスカニーニ NBC交響楽団(1939年版)


トスカニーニのベートーヴェン全集からです。トスカニーニは1952年にも全集を録音しているのですが、こっちは1938〜39年にかけて録音された全集版からです。まあ、SP盤の起こしということもあり、音質も良くはないのですが、しかし、全くもってノー残響。もちろん、さまざまな環境などがあいまってだとは思うのですが…。しかも圧倒的なテンポの速さ。ハードボイルドという言葉に尽きる、という感じです。
同じものをApple Musicでも聞いたのですが、多分レコードのが不明瞭感も強く、印象がかなり異なりました。とはいえ、Apple Musicで聞いてもハードなことはハードで変わらない。フルトヴェングラーとは全く異なるアプローチというしかない。「霊感」の優れた演奏ではなく、そういったものを削ぎ落としたソリッドな演奏。
例えば、これを、初めて行く彼女の実家の父が、年末にウチはこれを聴くんだよ、といって、高級なステレオ(多分タンノイよりはJBLとかアルテックみたいのが合うんだろうな)でこれを聞かせたら、思わず、身をひいてしまうかも知れない。
年末に家族とか恋人とか聴くというのには不向きですかね。いやー、しかし本当にハードだな…。

2. ヴィルヘルム・フルトヴェングラー/バイロイト祝祭管弦楽団(1951年)


いわゆる「バイロイトの第九」と呼ばれるやつです。ウチにあるのは東芝エンジェル盤(レコードが赤いやつです)
1951年のバイロイト祭のライブレコーディングで、もう、この時期のクラシック系の雑誌を見ると、だいたいこれが出てきて、「圧倒的な霊感に優れた」とか、「世紀の名盤」とか手放しで賞賛されているやつです。ウチにあるのは赤エンジェル盤でありながら、元の録音状況が優れないのか、あんまり音はいいではないです。でも、これを学生時代に買って、まあ、第九はこう言うもんかーと思い、この時期になると聞いていました。
でもなんか2000年代に入ってから、実はこの録音とは全く別の1951年の 演奏がバイエルン放送局から発掘されたらしく、最近になって、判明したのは、よく言われているもの(いわゆるEMI盤、僕のエンジェル盤もそれ)はゲネプロ(本番に近い、通しのリハ)だったらしく、、とはいえ、本人が意図するものはもちろんリハでも変わらないとは思うのですが。会場の空気とかいっていた批評家は…、ですね。
演奏自体は、トスカニーニと比べてもですし、いわゆるスタンダートなものよりはかなりゆっくり。ゆっくりだから、「霊感が」とか言っちゃっているんですかね。でも、悪いっていうわけではないですよ、好みですかね。僕にとってはカツカレーって感じです。

3.ブルーノ•ワルター ニューヨーク・フィル(1953年)


ちょっと昔の日本だと、いわゆる3大指揮者のうちに、上記の2人に加えて入っていた人です。
この人の第九はロンドンフィルを率いたもの、それから、このニューヨークフィルと最後にコロンビア交響楽団(録音のためだけに集められたメンバーによる変名の楽団)の三つかあるのですが、持っているのニューヨーク・フィルのもの。なんと、実はニューヨークフィルのものは演奏の出来が悪く、特に4番に関しては、もう一度集めて、わざわざ再録したものらしいです。
音は確かにコロンビアのものと比べて、古いし、モノラルのせいで、いわゆるステレオ的な広がりには、どうしてもかけてしまう部分はありますが、それにも関わらず、非常に情感に満ちた演奏です。
個人的にワルターはすきなので、少し贔屓目をしてしまうところはありますが、それにもかかわらずいいですね。この曲の持つ、優しさと平和の部分をたおやかに歌い上げていると思います。かといって厳しい部分はそれなりにも厳しく。

4.ジョージ・セル クリーブランド管弦楽団(1962年)


今まで紹介したお三方とは異なり、録音年代も下りて、しっかりとしてステレオ録音。録音状況もよく、まあ、ただ当時と最近の録音の仕方が異なる(いわゆる残響は少なめのデッドな音)だけで、聞きづらさは全くない。最初のテンポ感も含めて、トスカニーニに近いものはあるが、かと言ってそこまでもソリッドなものではない。極めて明晰で、とてもクリア。ケチじゃないけど、唯一好みでないとしたら合唱の部分ですかね。合唱部隊までがクリア過ぎるかなと。
あと、実のところ、レコードとしては第8番が聴きたいから買ったんですけれどね。個人的にジャケットの色味が割と好きです。デザイン自体は趣味がいいものではないのですが。

5.フリッツ・ライナー/シカゴ交響楽団(1961年)


ライナー/シカゴ交響楽団の第九。しかし、このころのビック5はすごいですよね、ニューヨーク/レニー、クリーブランド/セル、フィラデルフィア/オーマンディといい、揃いも揃ってという感じで。
セルに近いかな?というのが第1印象。こちらも負けずにクリアで、なおかつ、テンポについては、セルの緩急とは異なり、テンポは速め。弦の厚みという部分で、セルとはやはり異なり、こちらは厚め。と言っても、この2人の比較においてで、しかもそれは好みの問題。旋律を浮かび上げらせながら、オーケストレーションの妙も得ているという感じです。
ただジャケットがなぁ…、個人的には良くないなというイメージです。ライナーのレコードは特にRCAヴィクターのUS盤はどれもオシャレで飾って置きたくなるものばかりなのに…うーん、本当にこれだけがいただけないなぁ。

6.ラファエル・クーベリック バイエルン放送交響楽団(1975年)


1番年代も下り、70年代。音質は全くもって問題なし。クーベリックは特にシカゴ交響楽団を率いてた、1950年代の演奏が好きなのですが(情熱さと若さだけど、温かみもある)、こちらはアメリカからヨーロッパに戻り、バイエルン放送交響楽団を指揮していた頃のもの。この時代のイメージが、中庸たる、というイメージのせいもありますが、今まで、聞いた中で1番聴きやすいかもです。テンポも速すぎることなく、かといってもゆったりとまるでフルトヴェングラーみたいなこともなく。
合唱部分がなによりもアメリカのものよりいいですね。やっぱりドイツが本場ですからね。合唱に寄り添うなオーケストラもいいです。最初の例えじゃないんですが、彼女の家族の家に年末遊びに行って、CDステレオからバックミュージック程度にこれを流していたら、ああ、年末だなぁ、としみじみ感じることのできるような、安心しても聴けるし、もちろん、ゆっくりと腰を据えて聴くのもありかなと思う演奏ですね。


以上6枚が持っているものですね。本当はカラヤンとかバーンスタインとか持っておいた方がいいとは思うのですが、とは言えわりとベタなところばかり集まってはいるかと…。
でも、第九をレコード店買うのは気がひけるなぁ、なんとなくですが。

今年は、こう、暗い気持ちの中で過ごすことが多かったのですが、12月くらいから気持ちを持ち直して行くことが、少しづつ出来たかなと思います。
今年聞く最後の音楽は、津軽海峡・冬景色ですかね、やっぱり。


さてさて、みなさん、いいお年を。

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