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ファイナンス(企業財務)の基本㊷:「ベンチャーキャピタルの実務」を読んで、大切そうなことをまとめてみた

ベンチャーキャピタル実務(グロービス・キャピタル・パートナーズ 著)を読んだので、自分にとって大切そうなことをメモしてみました。

この本は、(意外と)あまり言語化されていない「ベンチャーキャピタルの実務」について、その内容を体系的に、わかりやすく(かつ読みやすく)、纏めてくれています。
自分の場合は「ベンチャー・キャピタルの、投資に対する考え方を知りたい」と思ってこの本を読んだので、その点を中心にメモします。自分のメモをみて、少しでも本の内容が気になった方は、ご自身で読んでみてもらえると嬉しいです。
※ このnoteのまとめ(メモ)には、自分の解釈が多分に含まれております。


ベンチャーキャピタルのビジネスモデル

GPとLP

ベンチャーキャピタル(以下、VC)は、ベンチャー企業に出資して、株式(もしくは、それに類する新株予約付社債など)を保有して、将来的に持分を売却することで利益を得る。

VCビジネスには、GP(General Partner、無限責任組合員)とLP(Limited Partner、有限責任組合員)が登場する。

GPは、組合形式のVCファンド運営主体であり、ファンド設立から出資・売却までを執行する。一方、LPはVCファンドに資金提供する投資家であり、一般的にGPが組成するファンドに投資(GPに運用委託)をして、原則的には経済的リターンを期待する。

なお、VCファンドが組合形式であることには、メリット(理由)がある。
そのメリットとは、VCファンドが組合形式であれば、出資者であるLPの二重課税を回避できることと、LPの責任を限定できることである。これによって、LPは安心してファンドに投資ができる。

投資期間と回収期間

VCファンドは、現在の慣習では組成から10年を満期とするケースが多い。
たとえば、前半の5年ではLPから預かった資金をスタートアップに投資し、後半の5年間で投資金額を回収するといったイメージである。

投資対象ステージ

スタートアップには下記4つのステージがあり、それぞれのステージにおいて、投資の際に重視するポイントは異なる。

  • シード・ステージ
    スタートアップの設立当初のステージであり、多くの場合、製品・サービスもない状況での投資実行となる。そのため、経営者個人(もしくは経営チーム)が手掛けるテーマの将来性に期待して、1社あたり数千万円を投資する。

  • アーリー・ステージ
    提供する製品・サービスが存在し、そのサービスにユーザーが一定数ついている状態。ただし、利益の創出までにはまだ時間が必要なケースが多く、調達資金はチーム拡充やマーケティング費用などに充てられる。PMF前後では、数億円~10億円規模の投資機会となる。

  • ミドル・ステージ
    既に事業が市場に一定程度受け入れらており、その結果として黒字化の蓋然性も高まっている状態。このステージでは、さらなる人員拡大、追加プロモーション、新たな事業機会の模索などを目的に、資金調達が行われることが多い。10億円以上の投資機会となることもあり、事業会社やCVCの参画も増える。

  • レイター・ステージ
    近い将来のIPOやM&Aの実現が十分に可能な状態。最後にもう一段階、人材獲得やプロモーションによって事業成長するために、資金調達が実施されることがある。

VCのバリューチェーン

VCのバリューチェーン(業務の全体像)は、下記のようになる。

  • ソーシング
    投資先候補を発掘し、投資検討に進めるための活動。

  • 投資検討・デューデリジェンス
    投資先候補の成長仮説の構築・検討と、それに基づく出資の意思決定をする。

  • 経営支援
    投資先に対するハンズオン支援(独立系VCに多い)。

  • エグジット
    VCファンドがその持分を売却するイベント。

  • ファンド管理
    投資先への連絡や事務管理、LPへの定例報告や出資の要請など、多岐にわたる活動。

  • ファンドレイズ
    LPに出資を募り、ファンドの建付けを検討・組成する活動。

  • ファンドマネジメント
    投資戦略の策定やポートフォリオの管理など、多岐にわたる活動。

※ 書籍には、各業務内容の詳細や留意事項などが書いてありました。
 興味のある方は、ご自身で読んでみてもらえると嬉しいです。

投資検討

投資検討の5つのステップ

VCは、下記5つのステップで投資検討をする。
(VCによって違いはあるかもしれないが、標準的なプロセスは下記の通り)

  1. 初期検討(ディールチーム)
    投資担当者が起業家と議論しながら、情報収集・分析を行い、ディールチームとして投資検討プロセスに乗せるか否かを判断する。

  2. 投資委員会(一次討議)
    投資委員会(パートナーによって構成される意思決定機関)に対して、ディールチームが投資すべき理由を明確に説明する。さらに、ファンドとして詰めておきたい論点を整理する。

  3. マネジメント・プレゼンテーション
    投資委員会に対して、スタートアップの経営チームにプレゼンテーションをしてもらった後、質疑応答を行う。

  4. 投資委員会による最終決定
    投資するか否か、組織として最終意思決定を行う。

  5. 会計・法務デューデリジェンス
    外部専門家の支援を受けて、会計・法律の側面から事業適法性や潜在リスクを確認する。

なお、所要時間は「1.初期検討」で1ヶ月程度、「2.投資委員会 〜 4.投資委員会の最終決定」で1~2ヶ月、「5.会計・法務デューデリジェンス」で2週間程度である。

※ 書籍には、上記5ステップについて、その詳細や留意事項などが書いて
 ありました。興味のある方は、ご自身で読んでみてもらえると嬉しいです。

リターン分析

ファンドのビジネスモデルは、投資の実行(入口)と売却(出口)との差額で利益を創出するものである。ベンチャー投資の期待リターン(各ステージごと)は、概ね下記のようになる。

  • シード・ステージ:期待リターンは20倍以上

  • アーリー・ステージ:期待リターンは10~20倍

  • ミドル・ステージ:期待リターンは5~10倍

  • レイター・ステージ:期待リターンは3~5倍

また、リターン分析は下記手順で行う。

  1. 投資候補の事業計画(数値情報)を入手する。

  2. 投資候補とVCで、事業計画を精査・アップデートする。

  3. 2の事業計画を複数シナリオに分岐させ、ドライバーとなるKPIにストレスをかけながら、感度分析を行う。この時、一定のネガティブなシナリオがある場合においてもどのくらいのリターンが見込めるか、チェックしていく。

なお、スタートアップのバリュエーションについては、マルチプル法で行うことが多い。

エグジット

エグジットの手法

エグジットには、大きく4つの手法(下記)がある。

  1. IPO(新規株式公開)
    日本のスタートアップ経営チームの多くは、ベースシナリオとしてIPOを目指していることが多い。日本の東証グロース市場(旧東証マザーズ市場)は米国市場などど比べて上場基準の柔軟性が高いこともあり、VC投資のポジティブなエグジットにおいてはIPO比率が高い傾向にある。

  2. M&A(合併・買収)
    ここでのM&Aは、投資先の議決権総数の過半数が取得される状態を指す。日本では、スタートアップ経営チームはM&Aを積極的に選ぶことは少ない傾向にある。

  3. トレードセールス(株式譲渡)
    スタートアップや買い手の意向、ファンドの事情などにより、IPOやM&Aではないタイミングで、VCの持分の一部、もしくは全部を譲渡することを指す。

  4. 解散・清算
    会社の存続を断念し、会社の解散を決議した上で清算手続きを行うことを指す。

※ 書籍には、上記4つの手法について、その詳細や留意事項などが書いて
 ありました。興味のある方は、ご自身で読んでみてもらえると嬉しいです。

以上です。

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