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高木貞治「数学小景」読書記録

高木貞治氏は、20世紀前半の、偉大な、世界的な数学者だ。
まだ日本が近代国家の産声を上げたばかりの頃に生まれ、ヨーロッパに留学、その後「類体論」という分野を切り拓いた人である。
おそらく当時、西欧人は日本人をバカにする風潮が強かったと思われるが、その日本人が、単独で新たなる分野を切り拓いたのは、驚嘆すべき出来事だった。

その高木氏が1943年(!)に執筆し、岩波書店から出版された本が、2002年に岩波現代文庫として復刊されている。私が読んだのは、その本である。
(しかし、1943年といえば、太平洋戦争中、しかも戦局が悪化の一途を辿りつつあった年だ。どのような気持ちで、本を執筆したのだろうか?)

大まかな目次を以下に示す。

 ケーニヒスベルグの橋渡り
   線系
   迷宮
   多面体、オイラーの法則

ハミルトンの世界周遊戯
   正十二面体の頂点巡礼
   正多面体

隣組、地図の塗り別け

十五の駒遊び

魔方陣

士官三十六人の問題ーオイラーの方陣

目次だけ書いても何のことか分からないだろうが、いわゆる昔の子供の玩具やパズルを糸口に、数学の深い世界へと案内してくれているのだ。
数学的には小さな問題かもしれない。例えばポアンカレ予想やゴールドバッハ予想のような数学史に燦然と輝く問題ではない。
子供の遊びのような小さな問題。まさにタイトルの通り「数学小景」だ。
だが、「小さな問題」だからと言って簡単に解決できるものではないようだ。「士官三十六人の問題」は、それこそ子供のパズルのように解けるような感じなのだが、実際は、あの天才オイラーも「不可能である」ことが完全には証明できなかったとのこと。

「数学小景」に出てくる数式は、中学生レベルのものだ。中学生レベルの数式でも、数学力がある人ならば、かなり高度な問題が表現できてしまう。だから、高校まで数学を真面目に勉強していれば、発想次第でかなり高度なことができるのではないかとも思う。
特に、今はコンピュータのプログラミング環境が発達しているから、数学の力を使ったソフトウェア開発も、中学生、高校生にもできるのだろう。

さて、取り留めのないことを書いてしまったが、日本が相当苦しい時代を生きた偉大な数学者の魂のほんの一部でも取り込んで、さらに数学の勉強を進めていきたい。そして、自分のイラストや漫画に活かせて行ければと思う。

なお、この本は、謙遜の意味もあって(?)「小景」と名乗っているが、かなり高度なことをやっている。私は半分も理解できなかった。軽い気持ちで読み始めると、大変なことになると思うので、気をつけてください。

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