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「定本 柳田國男集 第二巻」を読んだ。

   3ヶ月以上かかってようやく第二巻を読み終えた。これだけ難しい書物を読み終えると何か爽快感があって嬉しい。ただ、内容は半分も理解できなかった。
   柳田さんといえば、昔話や伝説、妖怪の研究が有名だが、それは彼の学問成果のほんの一部だと思い知らされた。
   この第二巻は、旅行記や紀行文ばかりが集められている。西は紀伊半島から、東海、関東、東北、そして樺太まで、この人は全国を飛び回っている。飛行機に乗った話も出てくるが、おそらく戦前の話だから、どういうツテで飛行機に乗ったのか、よく分からない。
   菅江真澄という江戸時代の旅行家、浪合合戦という後醍醐天皇の孫の伝説、だんぶり長者の話、等々が印象に残っている。

   時代を問わず、日本全国を血液のように移動している人々がいた。それが、私がこの本を読んで受けた印象だ。旅の鍛冶屋、炭焼、宗教者、海人。
  古い文献には中々出てこない人々にスポットが当てられている。彼らの移動の痕跡を、村に伝わる伝説、古い地名、植物の分布などから明らかにしていく、その手腕は、現代の学問にまで受け継がれているだろう。

   定住して農業をする人々、あるいは貴族や武士のような支配階級だけで、この国が出来上がっていたのではないことを教えてくれる。現代で言えば、長距離トラックの運転手とか、企業の転勤族だとか、血液のように動き回っている人々。
   それが、全国各地に、同じような伝説を伝え、今も何気ない会話の中で伝え続けているのだろう。

   やはり、色々と議論は迂回しているが、全て伝説なのだ。俺たちが何気なく読んでいる漫画や小説も、こういう、人々が動きまわる沸騰した社会から生まれた伝説なのだ。

  さて、簡単に、全集の目次を載せておこうと思う。

  ・ 雪国の春
      菅江真澄の話が出てくる
  ・秋風帖
  ・東國古道紀
     浪合合戦の話が出てくる。
  ・豆の葉と太陽
  ・旅中小景
  ・丹波市記
  ・樺太紀行
   日露戦争直後、ポーツマス条約直後の話と思われる。当時樺太の南は、ロシア人の犯罪者、アイヌ人、そして戦争に勝った日本人が雑多に暮らしていたようだ。柳田はそんな中に飛び込んでいった。激動の時期だったはずだが、紀行文は淡々と書かれている。
  ・遊海島記

  やはり、一人の学者の全集を読み続けていると、その学問の精髄を吸収できる気がする。細かいことは忘れてしまっても、物事の考え方、視点は失われないだろう。

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