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現代川柳と短文

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短詩型文学の「現代川柳」1句と、それにまつわる短文を書いていきます。
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記事一覧

ぼくレインコートはぜんぶ愛してる

シリーズ・現代川柳と短文NEO/038  2階の窓から通りを歩く人々を眺める。雨が降っている。…

新橋のうまいスープを出す屋さん

シリーズ・現代川柳と短文NEO/037  お花屋さんやお寿司屋さんにあこがれてこの業界に入った…

1時間半かけ風を見せてやる

シリーズ・現代川柳と短文NEO/036  まだあと10分ある、という油断が遅刻につながる。10分間…

われわれはいつもセットで食べている

シリーズ・現代川柳と短文NEO/035  ごはんとしょうが焼きのセットを「しょうが焼き定食」と…

だれからもきみの話をきかないな

シリーズ・現代川柳と短文NEO/034  周囲の意見に惑わされてはいけない。だが、孤独を気取り…

その場所はそのときだれもいなかった

シリーズ・現代川柳と短文NEO/033  帰宅すると机の上でパソコンが動いていた。家を出るとき…

跡取りになってポタージュスープたち

シリーズ・現代川柳と短文NEO/032  せめてスプーン一杯ほどあれば、それがポタージュかどうかすぐわかるだろう。だが、一滴、ひとしずくだけならどうか。ポタージュとは、なんかこう、どろっとしたスープのことだ。それは知っている。しかし、いま目の前にはたったひとしずくのそれしかない。やや粘度が高いような気はするが、どろっとしているかどうかはよくわからないし、まず、スープかどうかもわからない。 【本日の現代川柳】 跡取りになってポタージュスープたち /今田健太郎

ふろばにはふろばの王が君臨す

シリーズ・現代川柳と短文NEO/031  サッカー部のキャプテンを決めるとき重視すべきは人間性…

はたらけど髑髏のほうはないがしろ

シリーズ・現代川柳と短文NEO/030  百瀬は人間の頭蓋骨が透視できる。いや、厳密にはその人…

ミニカーか、あるいはサンドウィッチマン

シリーズ・現代川柳と短文NEO/029  人生は選択の連続だ。Aを選べばBは選べないし、逆もま…

ししまいでないかどうかをたしかめる

シリーズ・現代川柳と短文NEO/028  なんにでも興味を持って調べたしかめる、のはきわめて重…

ほんとうのことが言えないかき氷

シリーズ・現代川柳と短文NEO/027  かき氷のシロップはじつはどれも同じ味、という話は聞き…

舞いおわるころのとうもろこしだった

シリーズ・現代川柳と短文NEO/026  始まって終わる。すべてそうだ。鳥も空も雲も土も。水も…

追いかけてくる靴ひもになっていく

シリーズ・現代川柳と短文NEO/025  人は初めて靴ひもが結べたときのことを覚えていない。もともとは結べなかったはずなのに、まるで最初から結べたかのような顔つきで日々を過ごしている。べつにいま思い出せなくてもいいと思う。しかし、もっと、結べなかったときのことを想像すべきときが来ている。 【本日の現代川柳】 追いかけてくる靴ひもになっていく /今田健太郎