ラジオポトフ(おしゃべり大好き作家と俳優で美術家のラジオ)

今田と高澤の善良なラジオです。 こちらのアカウントは今田が運用していますが、高澤も元気…

ラジオポトフ(おしゃべり大好き作家と俳優で美術家のラジオ)

今田と高澤の善良なラジオです。 こちらのアカウントは今田が運用していますが、高澤も元気です。ご聴取&おたよりはリンク先からどうぞ。 https://potofu.me/radio-ptf

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【録音あり】スペースラジオポトフ「5月に砂金の取れる川」【無事終了】

概要来たる2023年5月26日金曜の夜、ツイッターの生放送機能「スペース」を使った月イチ恒例のおしゃべり企画「スペースラジオポトフ」第12回を行います。ラジオポトフアカウントからお気軽にお聴きください。応援や感想などは「#スペースラジオポトフ」をつけてツイートしてください。参加者のうち余裕のある者が読み上げます! 【参加者】 今田健太郎(いまだ・けんたろう) 高澤聡美(たかざわ・さとみ) 鳥原弓里江(とりはら・ゆりえ) 前回の記録と録音 テーマ1. 現代川柳ネプリ第2弾

    • ほんとうのことが言えないかき氷

      シリーズ・現代川柳と短文NEO/027  かき氷のシロップはじつはどれも同じ味、という話は聞き飽きた。異なるのは着色料と香料であり、つまりわれわれは色と匂いで「べつの味」と錯覚させられているのである、という解説込みで聞き飽きた。ああ、この脳が浮かぶ水槽の中のことはたいてい知り尽くしてしまった。むろんそれがいちばんの錯覚だ。ということも聞き飽きた。 【本日の現代川柳】 ほんとうのことが言えないかき氷 /今田健太郎

      • 舞いおわるころのとうもろこしだった

        シリーズ・現代川柳と短文NEO/026  始まって終わる。すべてそうだ。鳥も空も雲も土も。水もビルも人もイスも。たとえば休日の昼下がり、目の前にたまたまあった「それ」が始まりと終わりのどちらに近いのか考えてみるのもいいかもしれない。 【本日の現代川柳】 舞いおわるころのとうもろこしだった /今田健太郎

        • 追いかけてくる靴ひもになっていく

          シリーズ・現代川柳と短文NEO/025  人は初めて靴ひもが結べたときのことを覚えていない。もともとは結べなかったはずなのに、まるで最初から結べたかのような顔つきで日々を過ごしている。べつにいま思い出せなくてもいいと思う。しかし、もっと、結べなかったときのことを想像すべきときが来ている。 【本日の現代川柳】 追いかけてくる靴ひもになっていく /今田健太郎

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        • 現代川柳と短文
          212本
        • きのうの無免許医
          238本
        • これも「読み」ですか?
          15本
        • 雑文ラジオポトフ
          320本
        • スペースラジオポトフ
          10本
        • 現代川柳と、400字の雑文
          100本

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          ピストルにきっとバターを塗っている

          シリーズ・現代川柳と短文NEO/024  撃った直後のピストルは熱い。小学校の25メートルプールいっぱいにバターがぴったりはまっていたとして、撃った直後のピストルをそこに投げ入れれば、熱でバターが溶け、ピストルはずぶずぶとめりこんでいくだろう。ところで、撃った直後、と書いたが、その場合どこに向けて撃てばいいだろう。プールだ。重ねたビート板でいい。 【本日の現代川柳】 ピストルにきっとバターを塗っている /今田健太郎

          かぎ穴にちょっといちごがつまってる

          シリーズ・現代川柳と短文NEO/023  たまたまだよ。そう答えて電話を切り、ベッドに投げ捨てる。雨音。暗い病室。点滴バッグの中身の赤黒い液体はいちごだろうか。叔母は半年以上目を覚まさない。ナースコールを押して点滴バッグの中身がいちごかどうか訊こうか。あまおうかどうか訊こうか。ナースコールのコードはクリーム色だが、緑色に塗ってもいいか訊こうか。 【本日の現代川柳】 かぎ穴にちょっといちごがつまってる /今田健太郎

          残像のスープ 気づけば富士樹海

          シリーズ・現代川柳と短文NEO/022  なるほど海か、と納得してしまうが、よくよく考えれば樹海は森で、それを海にたとえているにすぎない。つまりここには森を「まるで海のようだ」と俯瞰する視点が存在するのだ。どこだ、どこにいる、と錯乱してあたりを見回すと、富士山頂のほうから「ニヤリ」という音がした。 【本日の現代川柳】 残像のスープ 気づけば富士樹海 /今田健太郎

          目には目をアカカンガルー歯には歯を

          シリーズ・現代川柳と短文NEO/021  まばたきすれば見逃してしまうほどの刹那だった。視界の右端から左端へと、大きなこども、あるいは小さなおとなていどの大きさのうす茶色のかたまりが走り抜けた。ほんのり獣のにおい。やはり生きものだった、と思う。まわりは誰も気づいていない。いつもこうだ。傷ついたり苦労したりするのは問題に気づいた自分だけ。ともかく仕事である。道彦はゴルフバッグの横っ腹に触れると、中身の麻酔銃のフォルムをエロティックな手つきでたしかめた。 【本日の現代川柳】

          やくそくの地にうさぎだけうさぎだけ

          シリーズ・現代川柳と短文NEO/020  ステイファミリーはうさぎ好きの一家で、ひとり一匹ずつうさぎを飼っており、おたがいを呼ぶときもそのうさぎの名前で呼んでいた。たとえば家族の父親は「J」と呼ばれていて、わたしもそれに倣ったが、それも彼のうさぎの名前だったようだ。それから20年が経ち、「J」の飼い主である人間の彼の名前をいまもわたしは知らない。 【本日の現代川柳】 やくそくの地にうさぎだけうさぎだけ /今田健太郎

          金子とはきみの話をよくしたな

          シリーズ・現代川柳と短文NEO/019  一般に、金子でない者が金子と呼称される場面はない。他方、金子であろうが金子でなかろうが「きみ」と呼ばれることはままあるだろう。ここでふと、金子同士はたがいをなんと呼びあうのかが気になってくる。金子と呼びあうのはなにかへんだ。そして「きみ」と呼びあうのは一見違和感がないが、こんどは「なぜ違和感がないか」が気になってくる。 【本日の現代川柳】 金子とはきみの話をよくしたな /今田健太郎

          ぼくたちはひとり切り裂きジャックたち

          シリーズ・現代川柳と短文NEO/018  だれだってひとりではなにもできない。その意味でだれもが同類のはずなのに、孤独感を覚える人とそうでない人がいる。だいじょうぶ。みんなひとりきりなんだ。血まみれなのはきみだけじゃない。ぼくだってほら。でもぼくたちはふたりってわけじゃない。ひとりとひとり。合わせて何人だろう。霧が出てきた。とても数えられない。 題:小町が行くぼくは1本の泡立つナイフ /石田柊馬 【本日の現代川柳】 ぼくたちはひとり切り裂きジャックたち /今田健太郎

          音がする遠いところで 遠いところで

          シリーズ・現代川柳と短文NEO/017  ジャーンとドラの鳴る音が響いた。授業の終わりを知らせる音だ。みんな机の上を片付けて、次の授業がある理科室へ向かう。途中、中庭の桜が風に舞っているのが見えた。理科室と同じ階にあるらしいドラ室では毎日誰かがドラを叩いているそうだが、自分の目でそれを見た者はだれもいない。次のドラが鳴ると授業が始まる。 【本日の現代川柳】 音がする遠いところで 遠いところで /今田健太郎

          呪われる時間がながくなっていく

          シリーズ・現代川柳と短文NEO/016  楽しい時間は短く感じる。水族館が好きなSさんは、ふつうにまわると4日はかかる超巨大水族館でたっぷり遊んだ後その感想を訊かれ、あっというまだった、と漏らした。しかしSさんがどう感じようが、間違いなく4日が経っていた。その間もイルカは跳ね、アザラシは弾丸のごとき速さで泳ぎ、ペンギンは集団でななめ上を見ていた。 【本日の現代川柳】 呪われる時間がながくなっていく /今田健太郎

          バスケットボールが穴に落ちていく

          シリーズ・現代川柳と短文NEO/015  工場のある町でバスケットボールを観戦していた。ボールがリングを通過する前と通過した後でわたしの視野内の世界はまるで変わる。点が入ると真っ赤だった世界が真っ青になり、また点が入ると真っ赤になる。赤・青・赤・青。試合はせわしなく色を変え続けて、やがて残り時間0秒の瞬間最後のスリーポイントシュートがリングを通過し、世界の彩色はリセットされた。 【本日の現代川柳】 バスケットボールが穴に落ちていく /今田健太郎

          あんこうにメス入れてドキュメンタリー

          シリーズ・現代川柳と短文NEO/014  あんこうの可食部を「七つ道具」と呼ぶのは有名な話だ。正確を期すため主な産地のひとつである下関市の公式サイトから引くと「身・皮・肝・胃・エラ・卵巣・トモ」の七つがそれにあたるようだが、正確を期さずなにも見ずに挙げると「ふた・しおり・ちょうつがい・おたより・柱(はしら)・ござ・弓矢」の七つがそれにあたる。 【本日の現代川柳】 あんこうにメス入れてドキュメンタリー /今田健太郎

          それからというものまわらない水車

          シリーズ・現代川柳と短文NEO/013  もともと水車はそれじたいが動くことを最終の目標としているのではなく、水の力を動きに変換し、さらにそれをべつの動きに変換するためのものだ。エネルギーを次々に変換していく流れの一部として水車はある。だから、皮肉の表現ではなく、事実として水車は「社会の歯車」と言える。 【本日の現代川柳】 それからというものまわらない水車 /今田健太郎