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続・奥信濃への道 第28走:限りなく今、そこにある道

カヤノ平エイドに到着。
水とクエン酸入りドリンクの両方を補給し、大好物の野沢菜の漬物を頂く。定番のお饅頭をポケットに忍ばせ、このコースで最高の区間であるカヤノ平ループ約10kmに入っていく。この時点で15時前、スタートから4時間経過、脚は思っていた以上に使ってしまったが、まだ疲労具合は許容範囲内だ。

登りは比較的得意だ

ここからの10kmはブナの原生林を通るトレイルになり、日本一美しいブナの森とも呼ばれている場所になる。私はこのセクションが大いに気に入っており、登りもそこそこあるが、とにかく爽快感が素晴らしい。
足場もしっかりしているため、走るには最適なトレイルがここにはある。ここを走るだけでも奥信濃の価値は十二分に感じれるだろう。
そんな10kmのブナの原生林を一周し、再び第3エイドとなるカヤノ平に戻ってきたのは16時半過ぎ、ペースも落とさず良いタイムで来ていることを実感する。

しかし、この後に構えているのは約14kmにも及ぶ長大なジープロードの下りが永遠と続くセクション、登った分下るのはしょうがない、だが私はここが苦手である。
14kmを下るというのはメンタル修行。走っている最中は黙々と足を前に出し続けるのみで、路面も比較的良いコンディションの為、何も考えない。
6分30秒~7分で1㎞を走るペースでひたすら下るのみ。
トレイルでは時に歩いて休憩することも出来るが、このジープロード、ひたすらに走れてしまう斜度と路面が続くため休むきっかけが無く、結局1時間30分休みなく走り続けた。
この時ばかりは脚へ、特に前ふとももの疲弊が凄まじいため、次回は流石にトレランポールが必要と痛感、来年は練習し導入しようと思う。

渡河ポイントはアイシングされたかの様な
気持ち良さがある

下りの道中に”マツダ”に追いつき、ついでならと走りながらiPhoneでPodcastの収録を開始。この光景をすぐ後ろを走っていたランナーにどういう風に思われていたかは分からない。
そして麓に着く直前、渡河を過ぎた先でコバヤシにも追いつき、下りを休まなかった分のタイムアップは、疲弊とトレードオフするには十二分であった。

ゴール5km手前の最終エイド糠塚に着くころには、スタートから7時間26分経過。残り5㎞を34分(6分台)で走破すれば8時間切りも見えてくる。
目の前に8時間切りというニンジンをぶら下げられた自分は、糠塚をタイム計測のみで完全にスルー、最後のトレイルまでの下りを5分/kmで走り、その勢いのまま最終トレイルへと入って行った。

昨年は最終エイドで日の入りを迎え、辺り一面真っ暗な最終トレイル区間だったが、今年はまだ明るい時間に走れることを喜び、最後の短い登りも大きめのストライドで登っていく。
横移動になってからは6分前半/kmのペースで遠くに見えるランナーの背中を追い、少しずつ大きくなるその後ろ姿に引っ張られるように進んでいく。

先行ランナーに追いつき残り1㎞を切ったタイミングで先行者2名の会話が聞こえてくる。
「100km長かった…。あと残り1km、俺、泣きそうだよ……。」
2人組が感慨深そうに走っている背中を見て、この明るい時間に100km完走しているベテランフィジカルモンスターとお見受けするが、そんな人でもゴールの直前は感極まる物なのかと感心した。

50kmクラス Time 8:04:56 総合で57位/241名 年代別40代26位


最後のゲレンデの坂を登り切れば50kmのゴール(正確には52kmほど)
タイムは8時間4分56秒。
最後のゲレンデを登っている最中に8時間は過ぎてしまった。
だが、昨年より1時間以上タイム短縮してのゴールは、目標達成の喜びと同時に、一抹の寂しさも感じた。
昨年は達成感に包まれ、これ以上ない喜びと安堵、そして50km走れるか不安からの解放であったが、今年は昨年ほどの感情の昂りは無かった。
既に2回経験してしまった50kmへの空虚感なのだろうか。

とは言え、目標達成したゴールは嬉しい

これは、来年こそついに100kmへの門を開かねばならぬ時が、ついにやってきてしまったのだろうか。
一昔前では自分自身が全く想像もつかない100kmが故に、走りたいという憧れすら存在しなかった。しかしゴール直前に見た100kmクラスの先行者の2人の感極まる姿を見て、それを体験したいと思ってしまった。

足元を支え続けてくれたALTRA lONE PEAK6

あと1年もない、続いていくその先にあるのは奥信濃100km。
やっと道の先が見えてきたのかもしれない。

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