ハッピーアフロエンドのその後に。(『Will forget, Darling.』ifストーリー)

(※このお話は悲しいお別れによって干からびたハピエン厨達の悪足掻きにより制作されたものです。実際のエンディング、エモい元シナリオとは切り離してご覧ください。)



少女の願いを叶えるべくバルトを駆るアレインだったが、その胸中は決して穏やかではなかった。
明らかに様子のおかしいテトラ、不自然な願い事。何か背後で悪いことが起きているのではないかという疑念が、頭から離れなかった。
どうする、今からでも引き返すか。しかしテトラとの約束が……。
優柔不断に迷う主人を見かねたのか、急にバルトが立ち止まり、そして踵を返し、再び彼の国に向けて走り出した。
「……!おい、こら!バルト!!」
主人から叱責が飛ぶが、バルトは足を止めず走り続ける。

迷いのないその足取りは速く、あっという間にテトラと別れた地点を越えて国境の門へと迫る。
門を守る数人の衛兵と、その前に小さな人影――テトラが見える。
「テトラちゃん!」
「っ!?おじさん!?来ちゃダメ――!!」
こちらへ槍を構える衛兵を避け、バルトが大きく前足を振り上げたその時。眩い閃光と膨大な魔力が辺り一面、街全体を包み込んだ。

あちこちから上がる悲鳴、悲鳴。
恐る恐る目を開いたアレインの視界に飛び込んできたのは、黒いもこもこだった。
「――!?」
光に眩んだ目を瞬かせてよく見ると、そのもこもこは頭を抱えて蹲っているようだった。
「………テトラちゃん?」
「……おじさん?生きてるの!?」
驚いたように顔を上げたテトラと、揺れるもこもこ。テトラが、アフロになっている。
周りを見渡すと、衛兵も、街の人間も、バルトすらも、アフロになっている。そして、自分の頭も。
アフロになった頭をまさぐり、呆然とするアレインだったが、一際大きな悲鳴を聞き取りそちらへ視線を向ける。

そこには一台の豪華な馬車があった。周囲は近衛らしき華美な鎧の兵士に囲まれ、悲鳴はその兵士から上がったようだった。
丁度人並みが割れ、馬車の窓から乗っている人間の顔が見える。
10年経った今でもはっきりと分かる。かつての婚約者と、それを奪った王太子の姿。今は国王なのだろう、絢爛な衣装に身を包み、頭には王冠を乗せている。
しかし、その頭もアフロになっており、王冠は不安定にぼよんぼよんと揺れていた。元婚約者はそれを見て、笑いを堪えて――。

「……ははっ」
「………おじさん?」
自分はあんな間抜けな奴に、今まで悩まされていたのか。彼女は王太子の前で、あんなに幸せそうに笑うようになったのか。
「ははは!あはははっ!」
「貴様!何を笑っている!?」
「お、お前まさか!」
近衛兵がこちらを見咎め、槍を手に取った。どうやらアレインの顔を知っている者がいたようだ。
「まずい。テトラちゃん、逃げるぞ!」
「え、ええっ?」
バルトに踵で合図すると同時に、テトラを掬い上げ抱きかかえる。

大きな目を白黒させてアレインを見るテトラに構わず、今度こそ全速力でバルトを駆る。もう迷いはなかった。
「ありがとな、テトラちゃん!」

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