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アイスリボン横浜武道館大会の感想

アイスリボン横浜武道館大会を観戦しに行ったので、その感想を書いておこうと思います。

尚、詳しい試合レポートはバトルニュースさんを参照して下さい。


第1試合 チェリー&宮城もち&真白優希 vs 青木いつ希&石川奈青&咲蘭

注目は真白と石川の同期対決か…と思いきや、私の印象に残ったのは、青木いつ希でした。この人、声が大きいっていうのもあるんですが、とにかく客を煽るのが上手い。大きな声と動きで拍手を要求するから、見てる側も自然と拍手をしちゃうんですよね。

興行全体の流れを考えた時に、第1試合で会場の空気を作ることは大事で。特に横浜武道館の様な大きな会場では、先頭に立って盛り上げる人間が必要だったはず。お祭り女として、青木いつ希が果たした役割は大きかったのではないでしょうか。咲蘭が彼女に憧れる理由も、ようやく分かった気がします。(咲蘭が青木を真似て、大声で挨拶するのも笑ったな~)

試合的には、真白が特盛クラッチで石川から勝利。7月の後楽園で不発に終わった特盛クラッチが今回は決まった形ですね。デビューした1年前はヘナチョコだった真白も、なんだかんだで成長している様子。ドロップキックやエルボーに説得力が出てきたし、特盛クラッチという決め技も装備してきて、なかなか侮れない選手になってきました。意外性のある選手なだけに、どこかで番狂わせを起こしても、おかしくないでしょう。

試合後にはガチャ王国興行の開催も示唆して、こちらも楽しみ。世羅がデスマッチ路線を自主興行で育てていった様に、ガチャ王国も試行錯誤して1つの形にして欲しいなと。それで、いつかアイスリボンの本流に組み込んで欲しいんですよね。王道の女子プロレスとハードコア・デスマッチとガチャ王国、この三本柱が共存したら面白そうじゃないですか。笑

勿論、石川との同期対決は今後も楽しみだし、2人が切磋琢磨すればする程に、このカードの価値は上がっていくので、お互いに良いライバルとして頑張って欲しいなと思います。


第2試合 朝陽&杏ちゃむ&Yappy&塚田しずく vs 進垣リナ&向後桃&バニー及川&海樹リコ

ピースパ提供試合となった、この試合。8人タッグ&若手中心という事もあって、拙さやゴチャゴチャ感を感じる部分もありましたが、まぁそれも含めて若手らしさを感じられて良かったんじゃないですかね。

大きな舞台を経験する事は刺激にもなるだろうし、各団体からの寄せ集めチームだからこそ、こうやって1つにまとまる機会も貴重だったはず。マドレーヌと花穂ノ利の欠場は残念でしたが、出場した選手にはこの経験を生かして欲しいなと思います。

復帰戦となった朝陽には関しては、流石にブランクもあって、受け身が苦しそうに見える部分もありましたが、今後試合数をこなせばリカバリー出来るでしょう。

試合後のコメントを見ると、特に目標を定めていないのが印象的で。「プロレスをやりたい」という気持ちが先走りして、バランスを崩してしまった学生時代を考えると、だいぶ大人になった様に感じられます。彼女自身がマイペースを掲げる以上、ファンとしても焦らず成長を見守りたいものですね。


第3試合 アジャコング&NATSUMI vs 星ハム子&星いぶき

いぶきの一方的な嫉妬によって組まれた、この試合。印象的だったのは、いぶきのチョップがアジャコングにまったく効かなかった事。普段、アイスの選手を震え上がらせてるのを知ってるだけに、これは衝撃でした。

試合的には、いぶきがアジャコングの非情な一斗缶&裏拳を受けて、NATSUMIに敗北。試合後のコメントを読むに「獅子の子落とし」じゃないですけど、いぶきの成長の為に敢えて厳しい一面を見せたのかもしれません。

一方、これが初勝利となったNATSUMI。まだまだ線は細いですが、新体操の経験を活かした軟体や、華麗な身のこなしは確かに光るものを感じました。あまり感情を出さず、黙々とやり返していくスタイルもベビーフェイス感があって良いなと。そんな王道レスラーをアジャコングが育てている…っていうのも面白いですね。


第4試合 テクラ vs ラム会長 vs トトロさつき

トライアングルリボン選手権試合となった、この試合。印象に残ったのは、テクラかな~。入場時からリング上でのムーブに至るまで、自分の世界観を確立しているというか、キャラクターの強度を感じました。私の席の近くにいた、アイス初見のお客さんがテクラにすごく反応していて、あの異様なキャラクターはやっぱりインパクトがあるのでしょう。

3WAYの試合は展開の妙というか、運の要素も多分に含んでくるので、なかなか評しにくいのですが、この試合もラム会長のエクトプラズムが出たり、テクラの毒(スライム?)攻撃が出たりと、なかなかのカオスぶり。そんな中で、勝利したのはトトロさつきでした。

個人的に、アイスリボン報われて欲しい人ランキング1位がトトロさつきだったので、この初戴冠は嬉しかったですね。セコンド業など裏方で頑張っているのも知ってるし、真面目にコツコツと努力している人が報われるのは気持ちの良いものです。(最後、どこからか「如せ~!」という声が聞こえたのもエモかった!)

3WAYなんで勝因を探るのは難しいんですが、強いて言えば、諦めなかった事…それに尽きるんじゃないかなと。トトロのタイトル挑戦はこれが初めてではないし、トライアングルだって過去に挑戦してきたわけで。それでも諦めず、テクラとラム会長の間を割って挑戦を主張した事が勝因と言えるのかもしれません。

松屋うのが引退した今だからこそ、トトロにはその穴を埋める活躍を期待しています。


第5試合 藤田あかね vs 尾﨑妹加

次期ICE×∞挑戦者決定戦となった、この試合。お互いにパワーファイターという事で、2人のぶつかり合いはなかなか迫力がありました。

実力伯仲な戦いの中で、普段は大人しい妹加が叫ぶシーンがあって「今日は気合が入ってるな~」と思っていたんですが、結果を見ると「ちょっと気負い過ぎていたのかな~」という気もします。昨年のフランクとの抗争でも感じましたが、彼女は気持ちを入れ過ぎると空回りする嫌いがあり、そこは妹加の課題かもしれません。多分、真面目な性格故に、抑えが効かないんでしょうけど。

一方で、あかねは妹加の技を受けつつも、所々でいなしたり、柊くるみの人でなしドライバーを使うなど、どこか余裕を感じる立ち回り。最後はPOMジュースでレフリーストップ。これで8月の後楽園で藤本戦が決まりました。

今年の藤田あかねはデスマッチ路線で血を流したわりには結果が出ず…。私のアイスリボン報われて欲しい人ランキング2位の選手なので、トトロに続き、なんとか報われて欲しいものです。


第6試合 高橋奈七永 vs 春輝つくし

つくしの憧れの人という事で、7年7ヶ月ぶりに組まれたシングルマッチ。序盤から出し惜しみなし、フルパワーで突っ込んでいく、つくし。しかし、壁の如く立ちはだかる高橋奈七永は、やっぱり強かった。

奈七永さんのYouTube配信等を見てると、ちょっと間の抜けた愉快なお姉さんって感じだったんですが、リングに上がると、普段とは違う引き締まった表情で、シンプルに「カッコいい!」と思っちゃいましたね。ファイトスタイル的にも、受けもするし、ねじ伏せもするしで、とにかく強いの一言。復帰戦でコンディションが悪ければ、つくしにもワンチャンあるかな…と思ってたのですが、そんなの全然関係なかったです。

一方のつくしは負けたとはいえ、ラマヒなど惜しいシーンがあったのも事実。全力は尽くしたと思うし、後悔はないんじゃないかな。印象的だったのは、リングの下でピースパ軍が応援していたんですよね。そういうところからも、つくしの置かれてる立場というか、成長を感じました。

試合後の2人の会話はつくしが明かしてますけど、個人的にはつくしがICEのベルトを獲った時に、再戦を見たいな~と思っています。


第7試合 山下りな vs 鈴季すず

FantastICE選手権試合となった、この試合。これまで男子相手にハードコア7番勝負をこなしてきた、すずにとっては初の対女子選手。そして、初の蛍光灯使用が注目点と言えるでしょう。

女子相手という事で、これまでの様な一方的な試合にはならなかったし、蛍光灯も臆することなく使用。自らの頭で蛍光灯を割ったりと、山下がよくやるパフォーマンスをコピーするあたり、すずなりのリスペクトが込められていたのかもしれません。

しかし、とはいえ相手は山下りな。前哨戦で見せた技も全て受け返し、その上で決め技のスプラッシュマウンテンで勝利と、実に王者らしい戦い。通常ルールならまだしも、デスマッチではまだまだ分がありそうです。

正直な話、すずの7番勝負を見守ってきた人間からすると、すずが流血したり、凶器で悶絶するのも大分見慣れてきました。蛍光灯に関しても、おそらく女子デスマッチの歴史を更新したであろう、6月の世羅vs山下戦を見た後ではやや物足りなさを感じたり。

もはや、すずがデスマッチをする事自体に新鮮味はないと思うんですよね。でも、これは悪い事ではなくて、これこそが山下の言う“デスマッチが日常になる”って事だと思うし、ここからがすずの言う通り“デスマッチレスラーとしての始まり”になるのでしょう。お客さんが見慣れた状態で、どうやって驚かせていくのか、そして世羅vs山下戦をどう越えていくのか、すずの真価が問われます。

一方で山下りな。個人的にすごく意外だったのは、試合後にすずを抱擁した事。そんなにベタベタするタイプの選手ではないし、てっきり、すずの壁役として突き放すと思っていたんですよ。それがすずの退場まで付き添うとは…。

どうして山下は拒絶ではなく、連帯を選んだのか?その答えは試合後のインタビューにありました。

山下はわざわざネットニュースを名指しで批判したわけですが、この様にデスマッチはまだまだ誤解と偏見の多いジャンルではあります。つまり、デスマッチレスラーは、そうした世間の好奇の目や無理解とも戦っていかないといけない。彼女達にとって、それこそが本当の敵であり、今は仲間内で敵対するよりも、仲間同士で共闘すべき段階なのでしょう。

世羅にしろ、山下にしろ、デスマッチの第一人者として自覚と責任が感じられ、本当に頼もしい限り。今後のデスマッチ・ロードも注目です。


第8試合 藤本つかさ&松本浩代 vs 世羅りさ&雪妃真矢

インターナショナルリボンタッグ選手権試合となった、この試合。藤本&浩代組はタッグというより、個と個という感じなんですが、それでもやり合えてしまうのだから恐ろしい。実際、松本浩代は1対2の状況を苦もなく戦えていましたからね。

しかし、今回の相手は個としても実力者であるアジュレボの2人。そう簡単にはやられないし、時間が経てば経つほどに、連携技やカットなどチームワークの差が現れた印象を受けました。逆に藤本&浩代組は時間と共に誤爆も増え、分断されてしまったかなと。

結果的にはアジュレボの戴冠という事で、タッグらしいタッグが勝利した事は良かったと思いますよ。やっぱりタッグ戦に期待するのは、実力以上に2人の絆だったりしますからね。ただ、この2人が組むとなると、なかなか対抗馬が思い浮かばないのが辛いところ。試合後に公言した通り、最多防衛記録を簡単に更新されても面白くないわけで、一体誰が2人を止めるのかと。

ドロップキッカーズか、フランクか、個人的には、あのたんすずたんに期待かな~。ローモバの因縁もあるし…という事で、今後のタッグ戦線も注目です。


第9試合 藤本つかさ vs 松本浩代

リボンタッグから休む間もなく行われた、ICEx∞選手権試合。自らを「スタミナお化け」と称し、余裕ぶってたのが嘘の様に両者バテバテの状態でスタート。これが想定内だったのかは分かりませんが、流石にここまで疲労するとは本人達も考えてなかったんじゃないですかね?

場外等で休む時間も多かったし、両者ノックダウンになる事も多かった。泥仕合と言われれば、泥仕合なのかもしれません。そもそも、この2人には名前も実力もあれば、因縁も物語性もある。普通にタイトルマッチをしても、十分に名試合が繰り広げられた事でしょう。しかし、つっかは2冠である事に拘った。2試合連続タイトルマッチに拘った。

この形式に拘る以上、そこには何かしら、つっかの意図があったと思うんです。では、藤本つかさはこの試合で一体何を伝えたかったのか?

一つは、限界の限界まで追い詰められても、それでも立ち上がる姿を見せたかったのかなと。残念ながらコロナは終息するどころか、更なる猛威を振るっている状況。そんな世界に対し、プロレスを通して希望を発信したかった。華麗な技や高度な駆け引きなんて事よりも、とにかく根性や人間の底力を見せたかったのかもしれません。

また、人間の底力という意味では、現在アイスリボンで勢いのあるデスマッチ路線に対する返答の様にも感じました。凶器を使わずとも、生きるか死ぬかのギリギリの戦いを見せる事は出来る。ある意味、つっかなりのデスマッチだったと言うことも出来るでしょう。

そして、「つっかが浩代を前にして戦えなくなってしまう」という状況は、奇しくも松本浩代事件を想起させるものがありました。恐怖で動けなくなるのと、疲労で動けなくなる違いこそあれ、似た様なシチュエーションが再現された事は確かですし、それを乗り越える事で、13年前のトラウマを払拭してみせたのかなと。

まぁ、ここまで計算してやっていたら、「藤本つかさ天才過ぎる!」という話ですけどね。笑
どう解釈するによせ、あの試合が2人にしか出来ない、ポジティブなメッセージを発信していた事に違いはありません。


最後に

今大会を振り返ってみると、“歴史”というものを非常に強く感じました。自らのキャリアを総括した、つっかとつくし。アジュレボの1年9ヵ月ぶりの復活&戴冠。トトロのデビューから4年半の初戴冠。どれも長い歴史があればこそ、描けた物語達です。

そして、それに伴い対戦相手から「ありがとう」という言葉が聞けたのも印象的でした。少し時期は外れますが、6月の後楽園で世羅が6年越しの蛍光灯デスマッチを行い、山下が「ありがとう!」と叫んでいたのも、記憶に新しいところ。この「ありがとう」には、各レスラー達が刻んできた歴史に対する、最大限の敬意と賛辞が込められているのでしょう。

中でも、松本浩代の「つっか、プロレス続けてくれてありがとう」は今大会を象徴する言葉だった様に思います。極論を言えば、この言葉を聞く為に、この大会はあったかもしれない。

何故なら、松本浩代の言葉はファンの想いを代弁している様にも聞こえたから。「アイスリボン、プロレス続けてくれてありがとう」と。

アイスリボン旗揚げ15周年、改めておめでとうございます。

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