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鈴季すずのハードコア7番勝負に思う事

鈴季すずのハードコア7番勝負が批判されてるらしい。

元々、男対女という対戦形式からして批判があったようだが、先日の竹田誠志戦が初の流血戦になった事で、更に注目を集める事態になったようだ。


アイスリボンでは、すず以前にも世羅りさを筆頭に既に何回もデスマッチが行われている。「それなのに今更、批判?」という気もしたのだが、どうやら今回の炎上元はヤフコメの様で…。

そりゃ、アイスリボンのファンでもなく、試合を見たわけでもないのなら、見当違いの意見も出てくる事だろう。そもそもプロレスというもの自体が世間に誤解されがちなスポーツではあるし、中でもデスマッチは特殊で理解されにくい世界でもある。

正直、ヤフコメなんか気にする必要はないと思うのだが、私なりにハードコア&デスマッチに対して思う事はあるので、ここに記しておこうと思う。


今回、すずに対する意見として目立つのは、「傷が残ったらどうする?」「18歳はまだ早い!」という心配系の意見と、「あんなのプロレスじゃない!」「まるでイジメやDVじゃないか!」というデスマッチに対する批判的な意見といったところか。

個人的には、そうした意見も理解出来なくもない。これまでの7番勝負にしろ、今回の竹田誠志戦にしろ、すずがボコボコになる姿を見て、私自身、引いてしまうところはあった。

しかし、それが普通のリアクションではないだろうか。レスラー云々は置いておくとして、18歳の女子が頭を切られて血まみれになっている姿を見たら、引いてしまう…心配してしまうのが普通の人間の反応だ。むしろ、その光景を見ても何も感じないのなら、そっちの方が異常な様に思える。

血まみれになっている人間を見れば、誰しもが恐怖を覚えたり、興奮を覚える。そういう意味で言うと、流血や凶器を使って、観客に恐怖や興奮を与えるやり方は安直なのかもしれない。血を出さず、凶器も使わずに、観客に恐怖と興奮を与えてこそ、よりレベルの高いプロレスと考える事も出来るだろう。


だが、その一方で、私はデスマッチファイターに大きな敬意も抱いている。

プロレスというスポーツの大きな特徴となるのが、“受け”という概念だ。相手の攻撃を逃げずに受け止める…そんな勇気と根性があるからこそ、プロレスラーは強いし、カッコ良い。

そして、デスマッチにおける受けは、ある種、“究極の受け”と言えるのではないだろうか。なにせ、自分の肉体が切り裂かれるのである。通常のプロレス以上に、勇気と根性が試されるのは間違いない。

今回のすずの試合。確かに一方的なものではあったが、彼女は竹田誠志の攻撃を逃げずに受けきった。そして、3カウントは全て返し、ギブアップもしなかった。ここまでしても、彼女に勇気や根性がなかったと言えるのだろうか?彼女はイジメやDVの被害者に過ぎないのだろうか?

少なくとも“受け”という一点において、すずはプロレスラーだったと思う。ボロボロになっても肩を上げ続ける、すずの姿はデスマッチが苦手な私が見ても、心が震わされるものがあった。あれを見ても、何も感じない…というのは、にわかに信じ難い話である。


また、「女の子なのに傷が残ったら…」というのも、よくよく考えると不思議な話だ。

これが男子レスラーだったら、傷跡は勲章として称えられるのだろう。だが、これが女子レスラーになると、憐れみの目で見られてしまう。何故そうなるかと言うと、「女性は美しくあるべき」という固定観念があるからだ。

そうした考えを個人が持つ分には自由なのだが、それを他人に押し付けた瞬間に抑圧が始まる。つまり、「傷が残ったら…」というのは一見すると心配している様で、その実は相手に「女性は美しく(無傷で)あって欲しい」という願望を押し付けてるに過ぎないのである。

すずがツイートで反論したのは、そうした良心を装った抑圧に対する反発だったのだろう。そもそも、多様な美のあり方を認めようという現代において、傷がある=美しくないという考えは古臭いと言わざるを得ない。例え、体に傷があろうが、太ってようが痩せていようが、自分の体に自信を持ち誇れる人は魅力的で美しいものだ。すずには恥じることなく、堂々として欲しい。


今回の件を受けて、女子のデスマッチファイターは、相手選手だけでなく、いろいろなものと戦わないといけないのだなと思わされた。特に18歳の女子レスラーとなると、前例がないだけに逆風も強いのだろう。だが、そうした逆風にも負けないのが鈴季すずというレスラーであり、むしろ逆風を味方に出来るのが鈴季すずである。これからの彼女の成長に期待したい。



ちなみに、今回の件を受けて、次回のハードコア7番勝負はメインに決定との事。

話題になっている今を狙った炎上商法?いやいや、これは団体のステートメントとして受け止めるべきだろう。これからもアイスリボンは、すずに寄り添っていくという事。もしかしたら、これで離れてしまうファンもいるかもしれないが、私は支持しますよ。

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