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読書感想:殴り合う貴族たち(あるいは仁義なき戦い平安死闘編)

 大河ドラマ効果なのか、Kindleで期間限定で「殴り合う貴族たち」が半額になっていたので購入したのが先月の話でして。
 一ヶ月ほどかけて少しずつ読んでましたが、ページをめくってもめくっても(というかスマホの画面をスワイプしても)尽きることのない暴力事件の数々には、流石にドン引きしてました。
 というわけで、その暴力事件に触れる度に、てんぐの脳内でこの曲が鳴り響くのです。

 いい曲なんですよねえ、こんな扱いしといて言うのも何ですが。

 そりゃまあ、王朝貴族だって自分の本業が暴力沙汰ではなく政治だってことはわかってる(はず)でしょうし、実際にやってもいたと思うんですよ。単に、日常業務のことが個人の日記に細々と記載されてるわけないから後世に伝わりにくいだけで。

 でも、それを頭に入れておいても、それでもなお延々と続く、もう第何次なんだか勘定する気も起きない抗争事件の数々を繰り広げてる王朝貴族たちの有様を見てると、「これでよく天下が回ってたね」と逆の意味で関心します。そりゃ紫式部だって「プライベートのときくらい理想の世界に浸らせろや」と、王朝貴族たちの実態から乖離した源氏物語くらい創作しますよ。

 その紫式部こと、「光る君へ」の主人公まひろですが、彼女はこの広島県警が全然仕事をしないままの仁義なき戦いみたいな世界の生き証人になっていくんだろうなあ。
 1話時点で理不尽に母親を殺された時点でもう重大な被害者ではありますが、これから先は無事に生き延びてほしいです。多分無理だと思いますが

 そんなこんなの「殴り合う貴族たち」。
 平安時代という日本史の教科書でちょっと触れた程度の情報しかない、ほとんど謎に満ちたあの時代の世界観を理解する取っ掛かりにはなりました。
 光る君へを今後も見続ける人にとっては、予習と覚悟を決める上でも、買っておいて損はないですね。

 そして、この本を読んで一番救われた気持ちになったのは、文庫版あとがきで、自らが抱いていた偏見を直視して反省の上で撤回した筆者の弁でした。
 この本で取り上げた王朝貴族たちの誰よりも倫理観の高い筆者の言葉に触れられて、人類というものへの希望すら感じたてんぐでした。

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