「貴方の小説を編集者に紹介してあげます。私の作品を評価してくれたら」

ウェブの小説書きは、皆評価に飢えている。評価されない人ほど、評価されれば嬉しい。だから、このタイトルのような甘い誘い文句にもうっかり乗ってしまう人も出てくる。

この人は自作の評価を増やそうとして、「編集者への紹介」という餌で多くの人を釣ろうとした。普通なら怪しいと思うが、それでも何人かは釣られる人もいた。実はこの人の作品は小説投稿サイトのあるコンテストの中間選考を通っていたのだが、当然こんな利益誘導で評価を増すことは許されるはずもなく、中間選考通過は取り消されてしまった。

ここまで露骨なことをする人はさすがに珍しいが、こちらの作品を評価してくる人のなかには「明らかにお返しを狙っているな」となんとなくわかってしまう人がいる。褒め方が大げさで、不自然すぎるのだ。評価の低い作品ばかり狙ってくるあたり、恩を売ろうという狙いが透けてみえる。自作をコンテストに出している最中だけ近寄ってくるのはたいていこういう人だ。

以前はてなブログのアクセスアップノウハウを書いたエントリで、「読者数の少ないブログなら登録すればこちらも登録してもらえやすい」と書いているものがあった。人気のない人ならちょっと褒めてあげればすぐに懐きますよ、というわけだ。こんなノウハウが堂々とまかり通るようでは、せっかく評価されてもそれが本心からの評価なのかいちいち疑わなくてはならない。小説のレビューを取引材料に使う人も残念ながら存在する。

人が評価を求める生き物である限り、こういうことはこれからも何度も起きるだろう。テクノロジーがいくら進歩しても、人の心の脆弱性までなくせるわけではない。結局自衛するしかないのだが、そのためには人の善意も疑ってかからなければいけないのだから寂しいものだ。

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