モブ作家からみえる光景

あるブログで、「カクヨムのおすすめ作品〇〇選」というエントリを見かけた。かなり長いエントリだったが、一番下までスクロールしてみても私の作品の名前はない。当然といえば当然だ。膨大な数の作品からわざわざここにピックアップされるほど、私は際立った作品など書けてはいない。それはわかっているが、やはり自分はこういうところに名前の載らないその他大勢の人間なのだ、と思うと、やはり少しだけがっかりする。

もちろんこのエントリを書いた人も、紹介した作品以外はおすすめできない、なんて思っているわけではないだろう。そこで紹介されているのはあくまでその人のおすすめ作品でしかない。ひとりの人間の目が届く範囲には限界があるし、投稿サイトのなかの膨大な作品群からすべての優れた作品を発掘できるはずもない。しかし理由はどうあれ、この自分の書いたものが選ばれなかったという事実は事実として残る。その事実は、選ばれなかった多くの作者の心に、小さな染みを残すだろう。

私は数年にわたっていくつかの投稿サイトに投降してきたので、多くの優れた作品を知ってはいる。しかしそれらの作品を、〇〇のおすすめ作品はこれだ、という形でまとめて紹介することは、これからもないだろう。あまたの作品から少数のものだけを選び出すという行為は、選ばれなかった膨大な作品の作者を、少しだけ傷つけるということだからだ。選ばれない側の人間は、人を選ぶ側の人間にはなれそうもない。

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