3/1~

早々と3月になってしまった。
春は少し苦手な季節だ。

2月半ばから母が入院、手術。義父が手術とゴタゴタしていた。
みんなに元気でいてくれ~と願ってばかりいた。
「今年はいい年だったなあと思いたいね」と零す父に「そうだね」と返したが、きっとそうなるよとも思っているし願っている。

3月1日からのことは特に記憶にない。
昨日は、朝方までコイビト(旦那さんというよりずっと恋人でいたいが結婚したので恋人ではないしと考え恋人と旦那さんの中間という意味で)と喧嘩をした。
私たちはよく喧嘩をする。大きな声を出して。
それは良くないよ、とも思う。思うけど私たちにはきっと必要な事だと思う。
わたしとコイビトは似ても似つかない一番近くて一番遠い二人だと思う。だから本音を話し合ってお互いを知る必要があると思う、
思うが喧嘩はやっぱりしんどい。しんどくて泥のように眠った。

入院中の母からの電話で起きた。時刻は16時半。
一緒に暮らす猫が「そろそろ起きてよ。僕に触れてよ」といわんばかりに鳴いていた。窓にさす陽はもう陰り始めていた。
仲直りをして小さい子どものように抱き合って眠ったので、お互いの身体は熱くて少ししめっていた。
「起きる?」と寝起きの低く甘い声で聞くコイビトの腕にまた頭をのせて、分厚い胸に頭を埋めて再び眠りに入ってしまった。

次に起きたら19時半。夕食を買いに行くというコイビトに少し甘えてひっついた。
家の中は真っ暗で、猫はすねてそっぽを向いていた。
一日が始まったのに外は暗くて、煙草を吸いながらぼうっとした頭で不思議な気持ちだった。
コイビトが夕食を買いに行く中、わたしは働かない頭を無理くり回して、のろのろと家の中で洗濯物をたたみ、ゴミをまとめて、猫のトイレを掃除した。
コイビトが帰ってきて、アニメを観ながら、やいやいと話をしもそもそ食べた。
夜このままじゃ眠れないからお散歩に行こうとなった。
寒い夜、お散歩に行く時、わたしの右手はコイビトのポケットにお邪魔させてもらう。
帰って、お風呂に入り、眠くないので再びティータイムをしながらアニメを見てベッドへ。
コイビトは最近はまっているゲーム、私は江國香織さんの本を読む。
「デューク」を読むと、なんともいえず泣き出しそうになる。あまりに暖かくて。

読み終わったわたしにコイビトが「もう読み終わったの?読むの早いね」と言った。
早いかなあ、と思ったがコイビトが尊敬の意味でその言葉を告げたのが分かって私は褒められたような気持ちで何だか嬉しくなってしまった。
「自転車って乗れるかな?」と聞いた。去年の春、両親が引っ越す時にくれた黒色の大きな自転車。どっしりとしていて今まで乗った自転車よりもずっと安定している。それに乗り、近くの図書館まで行きたい、と思ったから。
「乗れるとは思うけど空気が無いかも。また見てみるね」と答えたコイビト。優しいなあと思った。
わたしはもうすっかり大人だから自分で自転車の空気を入れることもできる。のに、この人は「乗れるんじゃない?」なんてことは決して言わない。「自分で空気入れなよ」とも。あたかも当たり前のように、私をその甘い愛で包んでくれる。でろでろに。甘くてもったりしていてとてもじゃないけど飲み込めないよ、と思うクリームみたいに。

コイビトの前でわたしは大人のフリをしなくていい。
虚勢をはることも、演じることも、なにもしなくていい。
怖がりで寂しがりで甘えんぼの子どもでいていいのだ。
彼はそんなわたしをクリームの愛でいつも包んでくれるから。

わたしもあなたを、うんと甘やかしてクリームの愛で包みたいよと思った。
思いながら、彼の腕に頭を乗せてみると、彼はもう寝息をたてていた。

おやすみ、コイビト。
明日も一緒に暮らそうねと寝顔に告げた。

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