Tamronの28-200mmは真の最強便利ズームだった

■買ってしまったが後悔はしていない 

 この記事とは直接は何の関係もないが前の記事などで「35mmの単焦点を買うか28-200mmのズームレンズを買うかで悩んでいる」というような話をした。そして恐らくそのときは28-200mmはなんか評価しているレビュワーが「やっぱり70-180の方がよかった!」みたいなことを言っているから、ビジネスブロガーが色々と褒めそやしているが、実はやはり便利ズームらしく画質には妥協したものがあるのだとかなり警戒していた。(余談だが「この商品は本当に最高!みたいなニュアンスでレビューをしておきながらさっさと高速で売り払うビジネスブロガーは本当に嫌いだ。軽蔑している。)
 
 警戒していたのだが、買ってしまった。何が決め手だったのか覚えていないが、とにかく買ってしまった。そういうわけで、今回はこのTamronの28-200こと、28-200mm f2.8 - 5.6 Di Ⅲ RXD(A071)についてレビューしていきたい。

 前置きからいくと、35mmの単焦点が欲しかったのは事実である。一本も持っていない。買うとしたらSONY純正の35mm f1.8が濃厚だった。しかし、その後シグマから35mm f2が発表され、さらに35mm f1.4GMの発表までがされた。当時はGMは意識していなかったが、なんとなく35mmの中でどれを選ぶかは決め手にかけていて選べない雰囲気があった。今となっては35mmで欲しいとしたら絶対にGMだが、その発表を見る前はシグマの単焦点を一本くらい使ってみたいという観点から35mm f2が濃厚だった。余談だがこうなってくるとシグマのレンズを使うとしたらやはり105mm f2.8マクロかと言う気持ちになってくる。この画角帯の競合は100mm T5.6 GM STFで、かなり甲乙つけがたいという世界になってくる(競合が純正の90mm f2.8のマクロGレンズだけであれば悩まなかった)。あとここでは例に出さなかったが、実は35mm f2.8Zが、パンケーキレンズであるという個性の他に、実はかなりコントラスト・立体感があるのではないかという通の評判もあって折に触れて気にしてはいた(が、古いレンズの割に全く値が落ちないので積極的に買いたいというところまではいつも行かない。値段が落ちないといえばSonner *T 55mm f1.8だが、こっちは標準レンズ性があり、神という評判があるので買われるのもむべなるかな。)35mmについても思うことがありすぎる。

■購入のための四つの理由

 話を戻そう、というか始めよう。28-200に対しては高倍率ズーム一般に想定される低画質さに対する忌避感があったのでもともとあまり乗り気ではなかった。しかも、24105Gや70-180VXDなど、少し画角がかぶるズームレンズとの比較では相対的に画質(解像感)が悪いということも、様々なYouTuberの検証から示唆されていた。にもかかわらずなぜこれを購入したのかというと、むしゃくしゃしていたから何でもいいから購入してみたかったというのが第0番の理由である。

 で第一の理由としては、そうは言っても28mmから200mmという極めて広い画角をカバーするズームレンズを導入したら世界が変わるのではないか?と思ったからである。昔、今も現役で使用しているMacbook Airの11.6inchを購入したときも同じ動機だった。小さくて軽く携帯性が高いのに優秀な道具を持てば何かが変わるかもしれない、とよく思うのである。レンズを二本使っていいならこの焦点距離をカバーすることはもちろん可能だが、交換しなければいけないとか、カメラ二台持ちになるとか、そういう負担があることは事実なのだ。カメラとレンズ一個ずつで済むのならどうなるのだろうと思っていたのだった。昔、後述する24105Gを使っていたときは、そういうやり方ができていた。今の立場でそれを味わえたらどうなるのかに興味があった。
 
 第二の理由は最近少し映像に取り組んでいるので、その用途に合っているのではないかと思ったのだ。もともとは上述の通り35mmくらいのレンズが欲しかったのだが、その理由が今映像を撮っているのがズームレンズの35mmだったのだ。35mmはこの時点での僕にとっては広すぎず遠すぎずの丁度いい感じだった。とか言いつつ実はクロップして52.5mmで撮っていたのですでに歪んでいるのだが、とにかく余計なものが映らずかといって顔アップにもなりすぎない丁度いいのがこの辺だと思っていた(とは言え実は後に考え方が少し変わるのだが)。で、そうだというのなら別に28-200でも35mmをカバーできるからいいのではないかと思ったのだ。値段も35mmが6.5万円くらいで28200がまあ7.5万円くらいだとすれば、そこまでかけ離れているわけではない。また、16-35mmや24-70mmといった定番の画角ではなく、200mmという長いレンジを持ったズームレンズなら個性的な絵が撮れるのではないか、と思ったことも後押しではあった。これは写真でもそうだが、映像でも言えることである。

 第三の理由は、かつてSEL24105Gを使っていたのに手放したという事情がある。ぶっちゃけ僕の状況だと24105G(24-105mm f4)でも悪くない。なぜ手放したかというと中央の解像度に納得できなかったのと、撮って出しの色味が黄色に寄るのが気に入らなかったからだ。後者についてはRAWを現像すればどうでもいいとも言えるが、前者はちょっと重要だった。けっこう念入りに検証した。ただ、振り返ってみると結構きれいな写真もいっぱい残っていて、ズームレンズとしては優秀だなと思った。このレンズは、AFが速くブリージングが少なくて静か、ということで映像向きのレンズとして認知されていることは当時から知っていた。知っていて手放したのだが、知っているからこそ今の立場だと魅力的に見えてくる。しかも僕の見解ではギリギリ軽いレンズ(663g)に分類されており、しかもワイド端が24mmだという素晴らしい特性を持っていた。そんないいレンズをなぜ手放したのかといえば上述の理由に加え、電子補正前提のためRAWデータの歪みがめっちゃすごいのが許せないという、何だか処女厨みたいなことを考えていたことを思い出した。色々と経験した結果「電子補正は令和では当然」という理解に至ったのでそれも問題ではなくなった。24105Gについて語りだすと非常に長くなるので危険だからこの辺でやめておくが、そういうわけでこのレンズは非常に今回魅力的な対象だったのだが、「一回手放したものを再度入れるのがなんとなく嫌だ」という理由によって棄却された。
 
 第三の理由の捕捉としては、24105Gは画質面で少し28200より高く、24mmを持っているという点が明確な優位である。劣位点ーーというか28200の優位点は、こちらの方が軽く(575g)、かつ寄って撮影することができ、しかもほぼほぼこちらの方が明るい。28mm付近でF2.8を実現し(このレンジのズームレンズでは初とのこと)、55-79mmでF4、116mmまでF4.5を実現しているので、明るさで劣っているのは80-105mmの25ミリ分だけでしかもその区間はF4.5なのだからほぼ一緒である。明るさでは明確に勝っていると言える。そしてなおかつ200mmまでフォローしていてそこもF5.6である。便利すぎると言わざるを得ない。何より、新品の値段が24105G中古の実勢価格に対して4万円も安く、コストパフォーマンスが凄い。
 
 第四の理由は画質への妥協である。撮って出しの色味が少し黄色く転んでいるという24105Gを手放したときと同じ問題を感じたが(純正Gレンズの黄色みとTamron風の黄色みでそれぞれ違うのだが、例えばヒット商品となった28-75mm f2.8(A036)にも同じ傾向を感じていた)、まあそれは現像すれば問題ないとした。その上で24105G、並びに70-180mm f2.8と比べている検証を見たのだが、中央は負けていないことが多く、かつF8まで絞るとほぼ同質もしくは結構肉薄するという事実がわかった。もう少し詳しく言うとF4通しの24105Gとは絞るとほぼ一緒までいけて、大三元であるF2.8通しの70-180にはさすがに負けてしまうのだがそれでもかなり改善する、という意味合いである。これならば値段と便利さを考えれば妥協できるのではないか、と腹を決めたのである。ボケが欲しいのであれば単焦点を使うという選択肢があるのだし。

■実機に触れたよ

 というようなことを考え抜いたので、私は一路秋葉原方面へと向かいこのレンズを購入することとした。たいていの店舗が店仕舞する18時付近に、すっかり暗くなった街を山手線で走り、コロナ禍の割には多すぎる人入りの秋葉原の小道を進んで、最安に近いアウトレットショップに訪問した。なんと在庫はあるけど倉庫にあるので今は手渡せないとのことだった。神は私に買うなと言っているのか。通販でよければ今日リアル店舗に来る必要はなかったのだ。私は購入を見送り店を出た。しょせんこの世はこういうものだとしょんぼりしながら橋を渡り、世界の片隅をすり抜けながら、中古のカメラ屋などに何か出物はないかと(特に期待もしていないのに)寄り道しながら、私はせっかくだからヨドバシカメラに寄っていくことにした。
 
 カメラ屋の看板を出しているだけあってその品揃えは圧倒的であった。エスカレーターに乗っているときの壁面の広告があまりにもSONYのα一色で「ここまで一色でいいのか…」と業界の勢力をひしひしと感じるばかりであった。E-マウント用のTamronコーナーも存在しており、そこには横断幕で28-200のPRがされていて、メーカーや店舗のプッシュ度の強さも感じた。そこで私はα7cに装着された28200の実機を触ることができたのである。この印象が実によかった。めちゃくちゃよかった。
 
 α7cはヒット作となったα7Ⅲをほぼほぼそのまま0.5周りくらい小型化した最新機種である。すでにこれには触ったことがあったが、実はそんなに小型化したかな、あまり驚きがないな、という印象を持っていた。ところがそこに付けられた28200との組み合わせでみると、めちゃくちゃ小型だな、という印象になった。小型というよりは、手に対する収まりが異常にいい、といった方がしっくり来るかもしれない。Tamronのレンズはコスト削減と軽量化のためプラスチッキーになっていてビルドクオリティが低い、などともよく言われるのだが、そういう悪印象も全くなかった。とにかくめちゃめちゃ収まりがいい。そして液晶を見ながら試写してみるのだが、この写りもまた実によくて、ぬるぬるとズームでき、フォーカスもバシバシ決まる、といった感触だった。それまではむしゃくしゃしていて勢いで買おうと思っていたのが、実機を触ってみたことでいいものだから買おうというマインドに完全に変わっていた。ヨドバシのネックは表示価格がめちゃくちゃ高いことなのだが、ネットの情報で交渉が可能だと知っていたワイ、勇気を出してネゴを行い、ほぼネット最安価格で買うことに成功。ホクホクしながら本機を持ち帰るのであった。

■α7RⅢで試写

 試写の場所として、谷中銀座を選んだ。以下のものは、大体開放で撮っているが、たまにF8である。α7RⅢによる撮って出し。

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 ほんとに何も触ってないただ撮ってみただけの写真でかつ10メガ以下のものを並べているが、一本のレンズで実現できるものとしてはかなり豊かではないだろうか。もうちょっと気を使って撮ればまだポテンシャル引き出せる気がするし、結構レタッチ耐性もあると思う。高画素機にはあんまりそぐわない解像性能だとされていることがあるが、結構行けるという印象だ。でも、多分4000万画素以上よりも2400万画素くらいの方がいいんじゃないかな、という感じはした。性能の相性というよりも使い方のニュアンスとしてだ。また夜などでのポテンシャルを考えてもRシリーズよりも無印や9の方がいい気がする。


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これは夜の散歩中に出会った猫ちゃんである。レタッチするともう少し明るくできるが、これは撮って出しだ。SS1/10、200mm、ISO6400、F5.6である。200mm開放で撮ったということだが、SS1/10はほとんど無謀と言わざるを得ない。が、200mmのレンジがあったので写真に収めることができた。紛れもなくこのレンズでなければ撮れなかった写真である。こういう写真をまともに撮りたいと思ったら42MP画素より24MP画素の方がいい。そうすればもう少し明るく、速いSSで撮ることができる。

■α9で試写

そこで今度は画素数が普通で高感度特性があると思われるα9に装着してみた。連写の実験はしていないが、ボディとしてはAFの性能がマックスのはずなので、レンズ側のキャパシティなどもわかるだろう。そういう観点で見ると、フォーカスの追従性能は並だと感じた。また、ファインダー上は合焦の表示が出ているのに外れているということもあった。これはバグに近いのでファームウェアアップデートで一部対策されているが、純正レンズと比較するとちょっとまだ弱い気がする。

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が、まともに載せられそうな夜の作例がほとんどなかった。これはSS1/50、ISO6400、28mm、F2.8である。α9だからといって夜にチート的に強くなるということは全くなかった。恐らくα7SⅢならチート的に振る舞えるのだろうが、こちらでは適当に撮った写真は全部手ブレもしくはピンボケで、しかも全体的にノイズが凄いことになっていた。α9だから夜に強いというわけではないということだろうか。α7Ⅲの方がマシな可能性も捨てきれない。ナイトスナップについてはもう少し研究してみたいと思う。理論上はもう少しマシなはず。ということで以降は日中の試写である。

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ということで全部撮って出しである。望遠の作例が多くなったが、前ボケとかも綺麗な感じで、便利ズームにしては考えられないほど圧縮感・立体感が出ていると思うのだがどうだろうか。公平に言うと、200mmくらいの後ボケは結構うるさいな、とは思う。一方、色味がしっかり出ていて非常に素晴らしい。αの他のレンズだと死んでいるタイプの色が出ている感じがする(設定の問題もあるだろうが)。撮って出しだと必要以上にシャープになりやすいらしいが、それはそれとして後半の紅葉などは輪郭線くっきりなのにボケがしっかりしていて、性能としては惚れ惚れしてしまう。また青空の階調などもしっかり写せていて、レタッチすれば色を引き出すことができる写真になっているのも素晴らしい。RⅢよりも印象がいいかもしれない。

■結論:素晴らしいズームレンズ

色々あったが結論は本当に素晴らしい、という感じである。高画素機で等倍鑑賞するとユルいところもある、というのは導入前からわかっていたことだが、実用上はほぼ問題にならない。某カメラ雑誌で、このレンズ一本だけで一日の仕事が終わってしまうことがあると発言していたプロがいたり、アマチュアだがこのレンズがあれ大三元レンズいらなくなりそうと発言している人がいたのだが、そう言いたくなる気持ちが結構わかった。

もちろん実際には不足していることもあって、使っていて一番思ったのは24mmが欲しい、ということだった。広角28mmで色々頑張って撮るのだが、どうしても「もうちょっと広く撮れれば……!」というシチュエーションが出てきてしまうことは否めない。この理由から本レンズではなく24105Gを選ぶ人がいることは理解できないことではない。それ以外はズームレンズ的にはもう満足である。ボケの質はどうしようもないが、ボケ量は望遠のレンジが広いため色々と工夫しようがある。1635GMやタムロンの17-28mm f2.8と組み合わせて使うのが一番万能ということになるだろう。もっと明るさが欲しい場合は根本的に単焦点を使うしかないから問題の種類が異なる。

それよりもこのコンパクトさ、寄りやすさ、ズーム域の長さが圧倒的で、本当に様々な表現を可能にする素晴らしいレンズだと思った。素晴らしいので本当は誰にも勧めたくないのだが、これからSONY α7系のカメラを使おうという人がいるのなら最初のレンズには絶対的にこれがお勧めである。

■おまけ

最後にちょっとだけレタッチした作例をいくつか掲載する。結構雰囲気が変わるものである。

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