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IPS実践研修会 第4回 「クライアントの可能性(キャリア・願望等)」

 お茶やお菓子を囲みながら、本日もおだやかな雰囲気で始まりました。
 はじめに前回の振り返りを行いました。前回は支援者と元利用者の語り合いが中心となりましたが、元利用者の経歴がユニークなものでありながらも特別なケースということではないことが伝えられました。さらに支援者への質問タイムがとられ、IPSを実践するなかでの支援者や当時の利用者の戸惑いが正直ありながら、職場開拓など実際に動き、同僚同士で学び会うことを通じて、参加者が変化していったことが語られました。

 今日の内容は「クライアントの可能性」です。講師より「クライアントの可能性に焦点をあてるために、実践していること、できたらよいと思っていることは何ですか?」との問いが出されました。その方が好きなことをうかがうこと、一方通行ではなく自分のことも話しながら双方向のコミュニケーションをするようにする、問題と感じているのは自分だということに気づくことなどの意見がありました。

 次にストレングスモデルの視点について、4つのストレングス(性質・性格、環境、才能・技能、関心・願望)の説明があり、もっとも重要であるのが「関心・願望のストレングス」であることが示されました。なりたい自分があって初めて、ストレングスになります。また本人が気づいていないストレングスはありますが、本人が違うと思っているものはストレングスになりえないということも大事です。さらに、すべての人が「目標」「才能」「自信」をもつということ、自分自身による意思決定と選択を促進すること、その方が希望している「成果」に焦点をあてるというストレングスの視点が紹介されました。参加者からは、自身の経験から腑に落ちたということや、内容的に具体的なイメージが持ちづらいなど率直な意見が出されました。講師も含めてさらに意見を出しあうことで、理解を深めていきました。

 パトリシア・ディーガンさんは、「弱い部分のなかに、ストレングスはある」と述べています。他者より秀でていることがストレングスというわけではなく、弱いように思えるその方の中にある希望や夢が、ストレングスになる種ということです。

 また、ストレングスモデルの6つの原則が紹介され、成り立ちや構成についても説明がありました。一番目の原則である「人々はリカバリーし、生活を改善し高めることができる」ということを達成するために、他原則が示されているということです。

 リカバリーの概念についても言及され、社会的リカバリー、パーソナル・リカバリー、臨床的リカバリーそれぞれの考え方が示されました。各概念は独立しているものではなく、どれも影響しあっており重要なものです。
 続いて、第2回の「就活を躊躇させる理由を突破するために」に立ち返り、研修を受ける前に考えていたことと、今感じていることの変化を語り合う時間がとられました。強み・好みというイメージが強かったが、本人の感じる価値やリカバリーへの向かう道のりということを考えるようになったとの話が出ました。

 従来型の就労支援でみられやすい特徴として、どんなイメージがあるかについての話題も取り扱われ、あるものから求職者に合うものをマッチングする、当てはめるというものが主にありました。そこから、職場開拓を例に出しながら、IPSモデルとの比較が行われ、その人の願いをキャッチし、その願いを叶えるために熱意を持って動くことが開拓なのだということが話されました。

 そこからIPSの基本8原則を振り返りました。すべての働きたい精神障がい者を対象とし、どんなに病気や障がいが重かったとしても除外しないこと、その人たちが働くことを通して充実した人生を送ることができると信じ、願い実現する方法を模索し、行動していくこと。それができるか、試されているのは自分(支援者)であること。クライアントを信じることができますか?その問いが投げかけられ、それぞれの思いが語られ、本日の研修は終了しました。

 改めてIPSとは就労支援のノウハウなのではなく、自分自身の固定概念に立ち向かい、就労したいと願う人の可能性を信じることがスタートであり中核であることを感じられる時間でした。

 次回11月21日は最終回になります。

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