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「高倉健インタヴューズ」

俳優高倉健の素顔に迫ったインタビュー集から、何個か好きなエピソードを紹介する。

1つ目は健さんの演技への考え方だ。

「でも、本当に嬉しい、もしくは悲しいと感じたとき、人は『嬉しい』とか『悲しい』なんて言葉を口にするのでしょうか。僕はしないと思う。声も出ないんじゃないかな…」(p94L10〜13)

「僕は大上段に振りかぶってやたらと大声を出す映画には本当の力はないと思う。思っていることを低い調子で、そっと伝える映画に出たい。」(p95L4〜5)

健さんのイメージである「寡黙な男」はこのような思いから出来たのだ。
降旗監督は、特に「冬の華」のラストシーンの健さんの表情を絶賛している。確かにあのような表情は今時の俳優にはできないであろう。
感情の機微を、小さな行動や表情の変化で表せるからこそ健さんは名優と言える。

冬の華のラスト

また、健さんの好きな映画は「ディアハンター」と「レイジングブル」らしい。ロバート・デ・ニーロの演技に気が籠もっていて良いとのこと。いつか観てみたい。

彼の仕事への思いもプロフェッショナルな感じがして良かった。アフリカでの長期ロケの時も、自分が体調を崩していて日程が延期したら申し訳ないからレトルトカレーを常備し毎日同じものを食べていたらしい。
監督や共演者が気を使ってしまうほど、周りの人を考えて自分を律する健さん。流石です。

最後に、最も印象に残った、妻江利チエミさんとのエピソードを紹介する。

「結婚したてのころ、生まれてはじめて買った新車、ベンツの230SLが届いたとき、ぼく待ってられずに保存倉庫まで行って見せてもらいました。(中略)やっと自宅に届いた夜、当時住んでいた等々力の街角であいつと待ち合わせして、夜中の1時頃でしたか、乗せて走ったんです。そしたら途中でおろしてくれって言うんです。あなたが走ってるところを見たいから、って。で、ぼくがやつの目の前を行ったり来たり走るんです。そしたらあいつ拍手してくれてるんですよ。かっこいいよ!って。可愛いなあと思いました。この女のためなら、なんでもできるなあと」(p184L15〜p185L7)

江利チエミさんの前で行ったり来たりして得意げにする健さんを思い浮かべると、健さんが可愛く見えてくる。
そんな可愛い姿を唯一見ることができる江利チエミが羨ましくなった。

良い笑顔


他にも「オーディションで演技を求められたが『すいません、できません。』と答えた」話や、「中国に行ったらとてつもない数の人が殺到した」話など、沢山面白い話があった。

是非皆さんも読んでみてください。

「高倉健インタヴューズ」
著者 野地秩嘉
編集 桂木栄一
出版社 ‎プレジデント社 (2012/8/10)
発売日 ‎2012/8/10

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