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東京という異国、ヴィム・ヴェンダースが織りなす光と影

今更ながら、映画「PERFECT DAYS」を観に行きました。

ヴィム・ヴェンダースといえば、「ベルリン・天使の詩」「パリ、テキサス」が有名で大好きな作品です。

孤独な男性を情緒的に美しく描くことに長けた監督。

パーフェクトデイズを観た結果、自分でもびっくりするほど感極まり、特にエンドロールで大泣きしまして、泣きはらした真っ赤な顔のままでパンフレットを購入し、恥ずかしくて店員さんの顔を全く見ることができませんでした。笑

この映画では、日常の素晴らしさ、生きることの素晴らしさを静かに美しく描いています。ヴィム・ヴェンダース監督が得意とする光や影の表現を駆使して、東京という街が異国のように見えるのも面白いです。

照明も美しくて、特に主人公の平山が眠る前のアパートの光の雰囲気が好きでした。

夜から朝へのトランジションは80年代のヴィム・ヴェンダース映画の様で、時が止まったかのよう。

ストーリー自体、物語の中盤まで特に大きなことは起こらないのでつまらなく感じる方もいるかもしれません。

ただ、視点を変えると毎日が新しい日々なのです・・・

キャストも良いスパイスとなるメンバーが揃っていて驚きました。田中泯、石川さゆり、三浦友和と、すごいメンバーが揃っています。

なぜかCDではなくカセットテープが物語の軸にもなりますが、そのテープから流れる数々の名曲が映画をいっそう美しく惹きたてます。

Lou Reedの「Perfect Day」、Nina Simoneの「Feeling Good」など、物語の要所で流れるのですが、まさにその歌詞とぴったりのシチュエーションでそこでもウルウル。

そんな素敵な映画の中でも、個人的に気になるポイントは色々ありまして、、主人公がサントリーのBOSSと角ハイボールを飲んでいるのはやはり気になりましたし(広告契約があるので利用せざるを得ないと思われますが露骨にロゴを見せない工夫もされていたのがわかります)、渋谷の公衆トイレプロジェクトが題材の時点でそうそうたる著名人が関わっているので、商業色が濃い映画でもあります。

現実的な解釈ですみません。。こんな”よこしま”な思いがありつつ、そんなことは全く忘れるほど感動し、エンドロールで号泣しました。

エンドロールでは業界の有名人たちの名前がずらっと出てくるので、その時点で普段は冷静になるものの、全く気にならないほど号泣しながら最後まで鑑賞しました。とにかくラストの役所広司氏の演技と、Perferct Dayのピアノアレンジが素晴らしすぎて、その余韻にずっと浸りたくなります。


この作品の製作が発表された数年前、

・渋谷の話題の公衆トイレがモチーフ
・ヴィムヴェンダースが監督
・役所広司が主演

と聞き、大人の事情は容易に想像できたので(笑)、情報はシャットダウンし、それ以上は一切触れないようにしていました。

事前情報で脳みそを膨らませずに自分の目で映画を確かめてみたかったのです。

その結果、本当に映画館へ観に行ってよかったです。

ヴィム・ヴェンダースの映画が好きでベルリンへ行った話はまたの機会に書きます。

★Podcast配信中★

後記 : 若い頃、役所さんとお仕事で何度かご一緒したことがありました。本作と同じ様なやわらかい表情でカメラの前に立ち、まっすぐにカメラを見つめ、本番の声がかかると一瞬で表情が変わる様をみて鳥肌がたちました。日本が誇る俳優とご一緒できたことは私の人生の糧になっています。これからもずっと応援しています。

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