東京は魔物。

東京に向かっている。
何年ぶりだろう。

4歳まで、東京に住んでいた。
一橋大学で三輪車を乗り回していたと聞いた。

15歳の時、はじめて友達と卒業旅行に出かけた。
夜行バスで来て、原宿のMILKで真っ赤なバッグを買った。今もキラキラした想い出。

18歳の時、美大受験という名目の社会見学で
ひとり東京に来た。多摩美、遠かったな。

20歳の時、大学の友達と夏に旅行に来た。
雷門の前でピラミッド作った。
人生で一番アホが炸裂してた。

21歳の時、就活のために週一で通った。
夜行バスで午前5時に新宿駅に着き、歌舞伎町のマックで仕事終わりのお兄さんやお姉さんの隣で、メイクをしてエントリーシートを書いていた。
たまに泊まりが必要なときは、値段だけで選んだ新大久保のボロ宿で身の危険を感じながら、部屋にお札がないかドキドキしながら浅い眠りについた。

22歳の時、広告会社のインターンで、2週間赤坂に住んだ。最終面接のかわりに2週間のインターンがある鬼畜な会社で、はじめてコピーライターとして仕事をした。交通費、宿泊費、給料まで出るバブリーなインターン。そこでクライアント先にさんざん引き摺り回され、はじめて世に出るコピーを書いた。毎日ヘトヘトなのに、若さを武器に仕事終わりに青山ブックセンターに通い、東京ってなんてすごいとこなんだと目を白黒させた。

そして大学卒業とともに上京し、8年間東京を謳歌した。仕事して、飲んで、仕事して、飲んで。転職もした。結婚もした。もう、なんかとにかくやり尽くした。

相方の転職にともない、うしろ髪引かれながら地元に戻って、気づけば10年。

10年も経つのに、まだ自分にとってのホームグラウンドは東京のままだ。東京駅に降り立つたびに、「ただいま」と呟いてしまう。
きっと、私がわたしとして食いしばって立っていた街だから。

地元に戻って、チビも2人産まれて、なんとかコピーライターを続けているけれど、今の私はもうわたし以外の役割が増えすぎて、わたしとしての実態がない。誰かに必要とされまくる人生。これはこれで幸せなのだとも思う。

でも、まだ私がわたしとして成し得るものがあるんじゃないか。こんなことしてる場合か。そう思って心の底が蠢く。

私は、また東京に戻る日が来るだろうか。
そのとき、東京はおかえりと言ってくれるだろうか。

そんなことを、膝で眠る娘のために、スゴイカタイアイスを買いながら、ふと思う。

東京は魔物だ。

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