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記憶と感覚

先日、職場のスタッフと絵本の話になって、それぞれどんな絵本が好きだったのかを話していた。
スイミーや、ちびくろさんぼ、ちいさいおうち、ごんぎつね、もちもちの木、はらぺこあおむし、ぼくを探しにetc
そして、3人で話していたのだが、一番盛り上がり3人とも納得の一冊が、話の内容は覚えていないのに、なぜかページいっぱいに描かれているパンのことが頭に残っていて、とても楽しかった からすのパンやさんだった。
小学校の図書室でも人気の本だったのだろう。かなりぼろぼろになっていて、決まって最初に見るのは色々な種類のパンがとっても可愛くて美味しそうに描かれているパンのページだった。今見ると、こんなパン無理やろと思うパンもあるのが、なんだか笑えてくる。
ストーリーは真剣に読むと切実な話だがでもそこは絵本ですから、からすのパンやさんですから、楽しく書かれている。

そして絵本の話で盛り上がった次の日、いつものように職場に行って仕事をし、お昼のランチに出かけたときのこと。絵本が値下げして売られていた。
本は値下がることはほとんどなく、どうしてか聞いてみたところ、もう閉店するというおもちゃ屋で扱っていた絵本が値下げして売っているということだった。
そしてなんとなく見ていたら、その中になんと、からすのパンやさんがあるではないか!
子供の頃見ていた物とは少しサイズが小さくなっているように思ったが(自分が大きくなったから?)懐かしくて、もう一度ストーリーを知りたくて、つい買ってしまった。
前日に話していたものが手元にやってきて、シンクロ〜なんて思いながら、なんだか嬉しくて、るんるんで家に帰ってきた。

そしてふと思った。いや、以前からよく思ってはいた。
最近のことはすぐ忘れるのに、昔のことの方がよく頭の中に残っているのはどうしてだろう?
覚えておこうとその時はしっかり心に留めたつもりなのに、思い出そうと思っても思い出せない。最近読んだ本なんてすぐに内容を忘れてしまう。読んだ本さえ忘れてしまう。記憶力が衰えたのか、それは単純に歳をとったということなのか?
痴呆症になると、昔のことはよく覚えていて話すのに最近のことは忘れてしまっていてわからないことが多いようだ。関係あるのだろうか?

そして時間の経過もそうだ。
年を重ねる毎にスピードが増す。子供の頃の速度とは明らかに違う。
去年のことと思っていたことが、3年以上も前のことだったり、過去のことを振り返った時、10年が本当にあっという間に過ぎていたりする。時間は同じように過ぎていっているのに、感覚、感じ方の違いが恐ろしいほどに変わっていく。記憶と感覚を元に戻すことはできるのか。

大切なことは忘れないでおきたいと思っているが、要らないことは記憶から消えて、残っていることが本当に大切なことかもしれない。多分それだけで生きていけるのだろうから。必要ならまた思い出すはず。なんて思いながら懐かしい絵本を楽しんでいる。

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