うちの犬。

小さい頃、野良だった子犬を飼っていた。
いま飼っているのは、ペットショップ出の犬。数年前にうちに来た。
前飼ってた子とそっくりだったからだ。
これがまた愛すべきアホであり、純粋で無垢でご飯をくれる人が大好きな打算的なところもあって、しかも犬同士の挨拶ができないという子だ。
犬同士の挨拶ができないのは、ペットショップ出だからだそうだ。

犬にもしつけ教室とやらがあって、そこで聞いた話だと、野良は犬同士での関わり方をちゃんと知ってるのだそうな。
いまの犬は、それが、できない。
人間が店で生体を売ると言う暴挙に出てるせいで。申し訳ない。
しかも、わたしが住んでるところは冬は寒さが厳しいためか、外飼いは虐待だとまで言われた。よく考えたらそうだな。小さい頃は、近所もみんな外で犬を飼うのが当たり前だったので気づかなかったけれど、そもそも犬は集団で暮らす生き物だ。相手が人間だろうと、一緒の空間で暮らすのがいいに決まってる。昔の犬よ、ごめん。

そんな訳で、ある程度、人間と暮らすルールも覚えている、うちの犬。
別に完璧じゃなくてもいい、いるだけでいい、可愛くてたまらない。
和犬は人との距離が絶妙だ。
洋犬と違って人にベッタリしない。
まるで猫みたいに、微妙に距離を取って座ったりする。たまにテンションが爆上がりして止められないほど燥いだかと思うと、急におさまる。何なのアレ。あの時の、「何かありましたか?」みたいな澄ました顔がまた可愛い。
散歩の時は、テンションが上がってくると、ひざに突進してくる。目を合わせながら散歩する時の幸福感、最高。
散歩が終わると、家に帰って足を拭いて、すぐに床にお腹をペタンとくっつける。暑かったかな。うちではその状態を「柴犬の開き」と呼んでいて、みんなその状態をそっと眺めて愛でる。
人に撫でられるのが大好きで、何度も何度も撫でられようとしてくる。
抱っこも苦じゃないらしく(小さい頃から抱っこしてたから?)、抱っこするよと声掛けすると、じっと黙って待っている。暴れたことは無い。
冷蔵庫の前に立つと、必ず隣にちょこんと座る。おいおい、君のご飯の時間じゃないぞと言いながら、体を撫でると、撫でてるうちに何故ここに来たか忘れてしまうみたい。実に可愛い。

うちに初めて来たときは、初日だけ、怯えて吠えてばかりいたっけ。
吠えても誰も反応しないと分かってからは、吠えて要求することは無くなった。昔の犬はどうだったっけと記憶をたどるけれども、覚えていない。
初めて、暗くなってから散歩に出かけた時は、夜にビックリして、怖くて歩けなかった。これは昔の犬は無かった。そうか、外飼いしてたからか。
台風のような風の時は、怖がってたっけ。これは昔の犬もあったな。
逆に、傘は全く怖くないようだ。怖い経験をしてないからなんだな。

どちらも小さい頃から飼っているのに、印象は全く違う。
どちらもとても可愛い。
昔の犬は、母犬になったからか、大人っぽいイメージがどうしてもある。
今の犬は、たぶん年を重ねても無垢なまま。

可愛いな。なんでいるだけで、こんなに可愛いんだろう。
うちの犬はクールで、あまり尻尾を振らない。それでも全然構わない。
近づくと、尻尾がくるんと上がる、もうそれで充分だ。
生きていてくれるだけで、癒しなのだ。
ありがとう。
もうしばらく一緒に生きて行こうね。

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