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ドーナッツ盤は廻るよ、いつまでも。

シングル盤、EP盤、7インチ盤、ドーナッツ盤・・・呼びかたはいろいろあれど。

 レコードはおおむね整理したと思っていたが、本の間からシングルレコードが出てきた。
 商品ではなく私物だ。
 いやはや懐かしい。
 限られた財布の中身から、よく考え抜いて買ったものもあれば、悩む間もなく即買いしたものもある。
 そのときの思い出がレコードというモノから湧き上がってくる。
 今、ダウンロードで聞いている楽曲たちは、数十年も経てばデータの海の底の沈んでいき、将来このように回顧をする機会はないのだろうなと思うと不思議だ。

そういえばあの頃は映画音楽が人気だったことを思い出した。

サントラでもなかったりする。

 昭和30年代から40年代にかけて、日本国内の洋楽ヒットチャート上位に映画音楽がいつも入っていた。「エデンの東」のテーマなどはラジオチャートで何週も1位だった気がする。
 今の映画のテーマ曲とはちょっと違う。
 有名アーチストの楽曲とタイアップしてエンディングなどに使われるのではなく、映画のためのオリジナルテーマ曲であり劇伴でもある。
 「風と共に去りぬ」の「タラのテーマ」(ほかに「風と共に去りぬ」という有名楽曲があるがあれは別物)、「ドクトルジバゴ」は「ララのテーマ」、「戦場にかける橋」の「クワイ河マーチ」など、誰もが聴けばわかるヒット曲だった。
 ヒットを狙う曲とのタイアップが当たり前になったのは、MTV的な楽曲と映像の一体化が広まった80年代ではないかと思う。
 シングルレコードに話をもどせば・・・

がんばれ!ベアーズになぜかトリュフォー

 「がんばれ!ベアーズ」のシングル盤のB面は、なぜか望んでもいなかった「トリュフォーの思春期」の主題曲「日曜は退屈」。
 映画音楽のシングルレコードには、B面に別な映画のテーマ曲が入っていることもおおく、なかにはいろんな映画のテーマ曲が4曲も詰めこまれているものもあった。溝の無駄遣い…。
 サウンドトラックでもなく、別なオーケストラが演奏しているのに映画で使われていた曲のように売られていた。
 日本だけでなく「イージーライダー」のサウンドトラックでは、ザ・バンドの演奏だった「ザ・ウェイト」を、レコードでは契約の関係で別バンドがカバーしているから、映画業界の音楽の売り方はそんなものだったのかもしれない。

 ドーナッツ盤と呼ばれたシングルレコードを眺めて、そんなことを思い出すと、頭のなかで黒光りするヴァイナルが廻りはじめ、偶然に出会った「日曜は退屈」のリリカルな演奏が聴こえてくるのである。

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