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ファンド分析

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公募投資信託・ETFについて考察するシリーズです。個人投資家目線で資産形成に有益なファンドを分析しポートフォリオを提示します。
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記事一覧

誤解を解く:ロボアドは本当に低コストか?

 先日の日経にロボアドに関する記事がございました。内容が投資初心者のミスリードを誘う内容になっておりましたので私の見解を示します。  何がミスリードなのかというとタイトルの「手軽に低コストで分散投資」の太字の部分です。ロボアドは確かに手軽です。これは事実として正しいです。また多くのロボアドはポートフォリオ理論に沿ってアセットクラスの分散が効いている場合が多いので分散投資という表記も間違いではありません。  しかしながら「低コスト」という表記は明らかに間違っています。日経

オルカンvs S&P500

※2024年1月に執筆し投稿出来ていなかった記事となります。そのため一部の記載内容は既知となっている点をご了承ください。 1. はじめに  X界隈の株クラでは日常的にオルカンvs S&P500論争が繰り広げられています。新NISAの開始もあり、多くの方がこの論争の答えを求め情報収集に励んでいます。本稿ではオルカン派vs S&P500派の宗教論争に一定の帰結を与えることを目指します。 2. 論理最適解と過去実績最適解 最初に結論を示します。オルカンは論理的最適解であり、

ビットコインETF承認による変化

※2024年1月に執筆し投稿出来ていなかった記事となります。そのため一部の記載内容は既知となっている点をご了承ください。 1. はじめに  先日SECがビットコインETFを承認しました。これによって伝統的な金融市場に仮想通貨が参入したことになります。本稿ではETF承認の影響、今後の動向について整理いたします。 2. 短期的な資金流入 昨年後半からETF承認期待もあり、ビットコインの価格は上昇を続けていました。今回の承認を受け、短期的にビットコインの価格は更なる上昇が期

楽天・オールカントリーの精査

1. はじめに  楽天投信が新NISAに向け打ち出した低コストインデックスシリーズである楽天プラスの「楽天・オールカントリー株式インデックス・ファンド」(以降、楽天オルカン)の月次レポートが公開されましたので内容を確認します。 https://www.rakuten-toushin.co.jp/fund/nav/riracwi/pdf/riracwi_M202311.pdf  以前より、楽天投信・SBIアセット・PayPayアセットなどの新興アセマネには精緻な現物型イン

ファンド分析:ニッセイ・Sシリーズへの期待

1. はじめに  本日の日経で以下の記事が取り上げられていました。新NISAの開始が迫りアセマネ各社は競い合うように新NISA向けに格安信託報酬のファンドを設定しています。  投資家としては歓迎すべき状況です。本稿ではニッセイアセットの「ニッセイ・Sシリーズ」に関して日経の記事を参考に考察します。 2. 新NISAに向けたNASDAQ100の活用 ニッセイアセットは今年の春にもナスダック100とSOXに連動する格安インデックスファンドを設定しました。ニッセイNASDA

野村の本気-はじめてのNISAシリーズの衝撃

1. はじめに 6月23日に野村アセットマネジメントから下記のプレスがありました。https://www.nomura-am.co.jp/news/20230623NAM2.pdf  来年の新NISAに向けて格安インデックス市場に参入します!という宣戦布告です。どのファンドも業界最低首位準に揃えてきましたが、今回注目すべきは「全世界株式(オールカントリー)」です。 2. 野村アセットの反撃  野村アセットマネジメントは国内有数の運用会社であり知名度も運用能力も一流です。

セゾン投信の大きな誤算

1. はじめに  セゾン投信の中野会長の解任が注目されています。解任自体は親会社によって子会社の代表が交代させられるだけなのでよくある事例です。今回の解任の鍵となったのが販売戦略の相違です。  直販VS外販の争いは親会社の意向により外販に軍配が上がりました。今回はセゾン投信の騒動を題材に私が感じた違和感を共有します。 2. すれ違いと誤算  直販・外販にはそれぞれメリットが存在します。直販はコアファンを獲得しやすく投資家の長期投資が見込めます。また販社を介さないのでコ

「ブラックロック-iシェアーズS&P500」投信が実は凄い件

1. はじめに  S&P500を対象とした投資信託は多数存在します。純資産額が大きなファンドだと「三菱UFJ国際-eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」や「SBI-SBI・V・S&P500インデックス・ファンド」が有名です。  今回はこれらのS&P500ファンドではなく「ブラックロック-iシェアーズ 米国株式(S&P500)インデックス・ファンド」を取り上げます。(以後、iシェアーズS&P500と表記) 2. なぜiシェアーズS&P500なのか  iシェア

投資信託の選別加速

 先日の日経で下記の投信に関する記事が掲載されました。  投資信託はNISAの開始以来、注目が高まり・手数料の競争も加速し、バリエーションが増えました。一方で消費者=投資家は膨大な数のファンドの中から自身の投資目的に沿った投信を適切に選択することが求められます。  投信を取り巻く環境は間違いなく、ここ10年で各段に進歩しました。NISAやイデコなどの制度の拡充に加え、低コストインデックスファンドの普及、販売手数料無料化など投資家にとって恩恵のある方向に進みました。

ファンド分析 SBI・i シェアーズ・米国短期国債 ファンド

1. はじめに 巷ではSBI VIG(正式名称=SBI・V・米国増配株式 インデックス・ファンド)愛称:SBI・V・米国増配株式が話題ですが、今回は同時に発表された「SBI・i シェアーズ・米国短期国債 ファンド」を取り上げます。  SBI VIGを記事にしたブログや投稿は結構ありますが、SGOVを取り上げたブログはほとんどありません。そもそもSGOVってあまり聞き慣れないETFですよね。同時に発表されたAGG連動ファンドのAGGは有名ですが、SGOVはマイナーかと思いま

ファンド分析 SBIラップ

1. はじめに SBI証券が昨年スタートした投資一任サービス「SBIラップ」の残高が好調に推移しております。2023年3月の300億円突破のプレスリリースが公表され、2023年5月には「SBIラップ×SBI新生銀行」の残高100億円越えが公表されました。  他社のロボアドと比較しても順調なスタートと評価できます。今回は「SBIラップ」を分析します。私は過去に実験として2年程、WealthNaviとTHEOを利用しておりましたが件論として「ロボアドは不要」と評価しましたSB

ファンド分析 GDP型指数の可能性

1. はじめに 投資信託やETFのインデックスファンドでは時価総額加重平均や均等加重平均が主流です。(前者はS&P500、後者はS&P500配当貴族インデックスなど) 今回はGDP型を採用している「ニッセイ世界株式ファンド(GDP型バスケット)」について整理します。(以下、ニッセイオルカンと称する) 2. GDP型オルカンの内訳 昨今、資金を集めているインデックスファンドが採用している指数の多くが時価総額加重平均型であり、一部で均等加重平均型のファンドが存在するという状況

ファンド分析 Tracers MSCIオール・カントリー・インデックス

1. はじめに 本記事は4/26に設定されたTracers MSCIオール・カントリー・インデックス(日興オルカン)とeMAXIS Slim 全世界株式(三菱オルカン)の比較記事です。  日興オルカンの表面コストは脅威の年率0.05775%(税抜0.0525%)であり、三菱オルカンの年率0.1144%(税抜 年率0.104%)以内の約半分となります。  手数料がこの水準まで引き下がると差はほとんどありませんが、それでもどちらが良いかを考えてしまうのが投資家の性です。本記

ソフトバンクG劣後債について

 今回は債券をテーマに金利とリスクについて整理します。ソフトバンクグループが今月末に劣後債の発行を予定しています。 概要は以下を参照ください。  結論からお伝えすると絶対に購入してはいけない部類の商品です。  普段は特定の商品について強い表現での評価は控えていますが今回は注意喚起のため記事にいたします。  なぜ購入してはいかない商品なのかを説明します。ぱっと見の表面利率は4.1%~5.1%と良さそうですがその他の条件が劣悪です。  ソフトバンクグループはいくつかの事