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社員のモチベーションを上げるために大切なこと

給料を上げて、休みを増やして、時間外労働をなくしてと、各界で働き方改革への取り組みが進められている。

ぼくが注目しているのは、働き方改革で社員のモチベーションは上がるのだろうか?ということだ。

日本の会社員は熱意がない

少し古いデータになるが、世論調査や人材コンサルティングを手掛けるアメリカの企業ギャラップ社が、世界各国の企業を対象に従業員のエンゲージメント(仕事への熱意度)調査を実施し、その結果を2017年に公表している。

公表当時、日本でその調査結果が最も注目されたのは、日本では「熱意」のある社員がわずか6%しかおらず、調査対象139か国中132位であるという点だった。ちなみにアメリカは32%だ。

さらに「周囲に不満をまき散らしている無気力な社員」の割合は24%、「やる気のない社員」は70%に達した。

『SDGsがひらくビジネス新時代』の著者である竹下隆一郎は、ギャラップ調査からは次のような日本の社員像が浮かび上がると指摘している。

こうしたデータから浮かび上がってくるのは、会社で長く働きたいと思っていないにもかかわらず、転職や企業も望んでおらず、仕事にも熱意を持っていないという、日本の社員像だ。
竹下隆一郎(2021年)『SDGsがひらくビジネス新時代』ちくま新書

この状況は、調査公表から5年経過する現在でもほとんど変わらないと思われる。

なぜモチベーションが低いのか?

なぜこれほどまでに日本の会社員のモチベーションは低いのだろうか?

かつて日経新聞(2017年5月16日付)は、来日したギャラップのジム・クリフトンCEOにインタビューを実施していた。以下、インタビューを要約する。

  • かつて日本的経営の核であったコマンド&コントロール(指令と管理)は、ミレニアル世代が求めていることの間にギャップ生むようになった。

  • ミレニアル世代は自分の成長に非常に重きを置いている。

  • 上司の言ったことを、口答えせずに確実にやれば成功するというのが従来のやり方だった。このマインドセットを変えないといけない。上司と部下が一緒になってどう結果を出すか、部下をどうやって成長させていくかを考えることが上司の仕事になる。

  • それには部下の強みが何かを上司が理解することだ。これまでは弱みを改善することに集中するのが上司の仕事だったが、得意でないことが強みに変わることはない。自分に合った仕事に変えるだけで無気力な社員を半分に減らせる。

日本の会社員のモチベーションが低いのは、指令と管理という管理手法が通用しなくなり、上司と部下の間にギャップが生じているからだという。

モチベーションを上げるには?

その改善策を一言で言うなら、強みにフォーカスした個人の成長を支援することである。

前出の竹下は次のように主張している。

自分たちの会社に残ってもらうには、経営陣は社員に対して「言葉」を尽くさないといけない。ビジョンを語らないといけない。深い理念も必要だ。社員自身の「個人的なこと」を話さないといけない。
竹下隆一郎(2021年)『SDGsがひらくビジネス新時代』ちくま新書

ここでも、個人的な関与の必要性が説かれている。

昨今の岸田政権においては、エッセンシャルワーカーの官製的賃上げが実施されようとしている。エッセンシャルワーカーの社会的評価を上昇させるためにも、賃上げは必要なことだ。

しかしながら、賃金が上がればその上昇率に比例してモチベーションが上がるかと言えば、話はそう簡単ではない。

社員をケアするという視点が重要になっている。このことを無視した働き方改革はきっとうまくいかないだろう。

損な役回りを引き受けられるか?

ところで、社員をケアする管理職や経営者は損な役回りではないかと思うかもしれない。そのとおりだと思う。

管理職や経営者は、社員をケアすることを自らのモチベーションにできるようでなければ、そして自分自身についてはセルフケアできるようでなければ、割りを食っている感覚しか残らない。

だからこそ、管理職や経営者に自分が向いているかについては、もっと個人的な思いが尊重されるべきだし、実際にトライしてみてうまくいかなければ交代すれば、やってみたいという次の人にチャンスも巡ってくる。

交代を邪魔しているのが自己愛的なプライドであるならば、それは管理職や経営者には向いていないということの証左なのだと思う。

いずれにしろ損な役回りを引き受けられる人がどれくらいいるかに、働き方改革の成功は左右される。悲観的にならざるを得ないと実感しているのは、おそらくぼく一人だけではないだろう。

そうは言っても事態改善の糸口は、お互いにケアし合うというところにしか見出し得ないわけで、その一歩を踏み出し続けることの大切さを確認し合うことくらいしか、日々実践できることはないんだろうとも思うのだ。



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