『フルライフ 今日の仕事と10年先の目標と100年の人生をつなぐ時間戦略』NewsPicksパブリッシング 石川善樹

『フルライフ 今日の仕事と10年先の目標と100年の人生をつなぐ時間戦略』NewsPicksパブリッシング 石川善樹

著者の石川さん曰く、大成するキャリアは3つに分けられるという。

① ハードワーク期
② ブランディング期
③ アチーブメント期

それぞれの期で活躍・成功するために抑えるべき重心がこの本で書かれている。

仕事の時間軸の中で重心を見つけ「生産性」をあげる

ハードワーク期には、時間戦略が求められる。1日の重心は、「仕事の終わりと始まり」にある。

ビジネスパーソンを対象とした調査から、バイタリティの高い(1日の生産性が高い)人たちはどのように仕事を始め、また終えているのかを取り上げている。

バイタリティの高い人は、仕事の初めには「同僚と挨拶を交わす」「ToDoリストの確認」を行うことが多いようだ。また、仕事の終わりには「1日のタスクを振り返り」を行うことが多い。逆にバイタリティの低い人は、時間になったら何も考えずに片付けもせず帰宅することが多い傾向があるようだ。以上のことから、「うかつに仕事を始めない、そして、うかつに仕事を終えない」ことが大切だということが分かった。

本書でおすすめされているのは、ピークエンドの法則に則り「ToFeel の振り返り」。それは、1日を終えて今日印象に残ったことを振り返りアウトプットする習慣である。

『先延ばしは1冊のノートでなくなる』大和書房 大平信孝 という本がある。その中でも、同じように1日を振り返ることが推奨されている。
今日1日で①嬉しかったこと②感謝したいこと③よかったことをまず3つ書き、その上で、改めて気づいたこと・感じたことを書くのが良いそうだ。

ブランディング期の重心である「大局観」を磨く

ブランディング期においての重心は「大局観」にあるようだ。
大局観とはただ俯瞰するだけでなく、引いたり・寄ったりを高速で往復する運動で、それはコンセプト(「A→Bに行く際の障害を一気に乗り越えるもの」)を作る力にもつながっている。すなわち大局観とは「具体と抽象の往復」であると、述べられている。そして同時に「創造性」の要となるものだ。

人間の脳内活動をベースに「大局観」考えてみると、活性化している脳内ネットワークは3つの代表的なパターンがある。

DMN(デフォルトモードネットワーク) 直感 アイデアを出す
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SN(セイリエンスネットワーク) 大局観 アイデアを絞る
⬇︎
CEN(セントラルエグゼクティブネットワーク) 論理 アイデアを決める

こう見ると、SN(セイリエンスネットワーク)の働きはイシュードリブン的なアプローチと言えそうだ。イシュードリブンな動きは、一見すると非常にCEN的な活動に思えるが、SN的な活動に近いと思う。

問題はまず「解く」ものと考えがちだが、まずすべきは本当に解くべき問題、すなわちイシューを「見極める」ことだ。
−『イシューからはじめよ』栄治出版 安宅和人

それはまず、絞る運動(SN)に他ならない。考えてみたら、問題解決の働きという行為そのものが、創造的活動と言えるのだからやはり、SN的な活動に近い。

また大局観は創造性の要になるとも述べたが、創造性は直感と論理を繋ぐものとものとしても機能する。
そもそも「セイリエンスネットワーク(SN)」はDMNとCEN、両者の中間となるようなネットワークで、DMNとCENを切り替える機能を果たしていると言われている。現実と妄想の切り替えを行うSNは創造性の活動と言える。

コンセプトとは「A→Bに行く際の障害を一気に乗り越えるもの」と、本の内容を引用した。これで思い出したのは、『直感と論理をつなぐ思考法』ダイヤモンド社 佐宗邦威 の中にある「人がなんらかの創造性を発揮する際には、「妄想と現実とのギャップ」を認識することが欠かせない」という内容。

個人が自らの関心に基づくビジョンを明確にして、さらに、そのビジョンと現状とのあいだにある距離(ギャップ)を正面から受け入れたときに初めて、そのギャップを埋めようとするモチベーションが個人のなかに生まれる。このような緊張状態が生まれない限り、人はクリエイティブなモードにはならないのである。『世界のエリートたちは、なぜ「妄想」を大切にするのか?』ダイヤモンドオンライン 記事より

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以上のことから、SNの働きはDMNとCENを切り替える機能にあり、すなわちその働きは「具体と抽象の往復」と言え、またそれが大局観であり、創造性の要であるということが分かった。

では、どのようにこのような大局観を磨くことができるのか。

それは、本書で言う「みんなでBeing」(交流会や雑談) の時間と「ひとりでDoing」(読書、思考)の時間を意図して持つことにある。

なぜ「みんなでBeing」と「ひとりでDoing」なのか?


それは、大局観は創造性の要だと述べたように、創造性を発揮するには広く、深い情報が必要になるからだ。このように見ると、自ずと「みんなでBeing」と「ひとりでDoing」の時間の必要性が分かってくる。それは、情報を拡張・深化する営みであり、戦略的にその時間を持つことで、大局観は磨かれるということだ。

最後のアチーブメント期については、成人発達理論に近しいものを感じた。またその成人発達理論については、別の折で触れることになると思うので、今回は以上としたい。

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