見出し画像

『楽しくない仕事はなぜ楽しくないのか?』プレジデント社 土屋裕介・小屋一雄

『楽しくない仕事はなぜ楽しくないのか?』プレジデント社 土屋裕介・小屋一雄

本田静六曰く、「人生の最大の幸福は、職業の道楽化にあり」そして続けて曰く「職業を道楽化する方法はただ一つ勉力にある」と。

最近の職業観にどの程度、この思想が通底するものであるかは定かではないが、職業を道楽にすることが出来たらのならば幸福であるということを否定する人は少ないと思われる。

YouTuberが職業として認知され始めた頃から「好きなことで生きていく」という言葉をネットで見かけるようになった。すなわち現代版「職業の道楽化」と言える。

ところで、職業を道楽としているように見える人々は多くいる。一方でワーカーホリックと呼ばれる人々もいる中で、その両者の違いは何なのだろうか。一見すれば、仕事へのコミットという面では同じように感じられる。

この本では、ワーカーホリックは、バーンアウトを招きリスクのある働き方だと述べられている。他方では対概念として、ワーク・エンゲージメントという状態を紹介している。

バーンアウトとは?

ワーク・エンゲージメント
自分の欲求にしたがってイキイキと働いているような状態
ワーカーホリック
仕方なく多くの時間とエネルギーを仕事に費やしている状態

ワーク・エンゲージメントは自らの意思で働いているので、バーンアウトすることがない。(私はこの状態を、職業の道楽化を成し遂げた状態もしくはそれに近い境地を考える。)
他方でワーカーホリックは自分の欲求とは反対のベクトルの心理状態のまま働いているので、じきに無理が生じてバーンアウトしてしまうということだ。

バーンアウトにつながる疲労感などは何に起因するのだろうか。
この本に紹介されるオランダの心理学者シャウフェリによれば、バーンアウトの特徴として、〈疲労感〉〈皮肉感〉を挙げている。
皮肉感とは、"仕事や会社に対する嫌悪感や、それを自覚しつつも働き続ける自分に抱く自嘲的な感覚"
自分の周囲にも思い当たる人が一人や二人居るのではないだろうか?

そしてこのバーンアウトにつながる〈疲労感〉〈皮肉感〉は、対価・報酬・公平性などが影響を与えているようだ。自分は貢献しているのに報われない感覚。これらがバーンアウトを引き起こすようだ。

私は以前、「職業の道楽化」とは、職業のエウダイモニア化だと述べたことがある。エウダイモンな働き方とは「他の目的ではなく、それ自体のためになされることがら」である。敷衍して言えば、「働くこと、それ自自体が目的となり、自分の内的なものを満たすための行為」となることだ。

エウダイモンな働き方

つまりは、ワーク・エンゲージメントは目的それ自体のためになされる行為であり、ワーカーホリックとは、他の目的のためになされる行為としての労働であると言えるのではないか。

仕事に意味を求める現代においては、まさに内的なものを満たすための働き方というものへの回帰である。もし自分が今、疲労感や皮肉感を感じているのならば、それは内的なものを満たすものになっていないのかもしれない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?