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「きく」について

カウンセリングや傾聴を学んでいる人は「聴く」と「聞く」の違いを意識している方が多いと思います。
これに3つ加えて、5つの「きく」について考えてみたいと思います。

・聴く =注意して耳にとめる。心が入っていますので相手を心から受け止めて相手の心も理解しようと努めることで、そうありたいですね。
またビジネスや日常においても「聴く」が意識できれば違った景色が見えて、違った結果が得られるのではないでしょうか。

・聞く=音・声を耳に受ける。耳から情報を入れること、入ってくること。カウンセリングだとちょっと足りない印象で、そう思われる方は多いでしょう。
私は最近知ったことなのですが、虫の声を聞けるのは日本人だけだそうです。自然の音も街の音も音楽も、人によって、また場面によって受け方や感じ方が違います。要は「聞く」側次第。
相談では静かで落ち着ける場面の設定はもちろん、自分の声やトーンを相手がどう感じているのか、さらに相手の声やトーンを自分がどう感じているかも意識してみると、関係構築で深みがでそうですね。

・訊く = 尋ねる。問う。相手から情報を引き出す。
こちら主導での情報収集はカウンセリングにおいてはあまり良い印象ではないですよね。出来れば訊かないで進めたいのですが、一方でコンサルティングの相手の背景や前提、希望などは知っておくことも必要でしょうし、焦点をあてて意図して「問う」ことは必要です。どうしたらいいのか一番悩む場面ですよね。
私は訊く意識は排除して、関わりの序盤から中盤まではどんな人で何を悩んでいるのか「聴く」ことに集中しようと心掛けています。ですので冒頭から経歴や希望条件などの情報収集から始める(訊くから始める)相談を見るとがっかりします。
一方で、カウンセラーやキャリアコンサルタントは「聴く」ばかりではなく、相談者の問題を把握して焦点を当てて意図して関わって介入する「問いかけ」が必要です。これが出来るのが熟練レベルの2級技能士です。
こちら主導で訊かない、相手に問いかける意識ですね。
エドガー・H・シャインの著書「問いかける技術」にあるように、自分がしゃべるより謙虚に問いかけること、相手を中心にすることです。

・利く=役に立つ、良し悪しを感じ取る。気が利く、機転が利くとか、口を利くなど働きや機能のこと。
相手の要望に応えたい、役に立ちたいという思いや姿勢は良いことのように思えますが、カウンセリングの段階ではどうでしょうか。
相談者がAかBかで悩んでいる時あなたなら何を意識します?AかBのどちらが良いか選べるように一緒に考えてあげようと思った時点で「利く」ことに意識が向いて「聴く」ことが出来なくなっていませんか? 役に立つかどうかはさておき、AかBかで悩んでいる相談者が目の前に居て話を始めていることに集中してみて下さい。相談者に意識を集中すると、言葉や表情、感情も一致して受容共感できるはずです。そこからです。
「利く」のもいいかもしれませんが、後回しにしましょう。

・効く=効果がある。効き目がある。薬が効くなど、働きかけて良い結果が得られること。
カウンセリングやコンサルティングが結果として良い方向で効くことになればいいのですが、こちらが短期的に何かを期待すると利いてるつもりが効いていないことはありますよね。
「効く」となればビジネスにもつながりますし人も社会も豊かになりそうですが、そのためには長期的な視点と相手に委ねる姿勢も大事だと感じます。
期待せず手放して、少しおいてレビューする。というところでしょうか。

「きく」について書いてみましたが、「聴く」が万能かというとそれはそれで違いますし、「訊く」「利く」で介入することも必要になるでしょう。
そしてビジネスにおいて、また支援においては「聞く」も「効く」も大事です。
5つの「きく」を意識して使い分けたいですね。




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