見出し画像

鳥かごの鍵 28

頭がぼーっとする。

今までの出来事は夢?

「ママ、ごはんは?」

「えっ?ママ?・・・・」

「あかり、早く起きろ何時だと思ってるんだ!」

私は起き上がり時計を見ると、6時10分過ぎだった、
30分の寝坊だ!

一気に現実に戻った!
私は急いで朝ごはんを作り始めた。

「もうこんな時間だから朝ごはんはいらないよ、
専業主婦は遅刻も無くてお気楽でいいな。」

主人はいつものように嫌味を言って玄関に行く。

「寝坊してごめんなさい。」

「明日はきちんと起きろよ!じゃいってきます。」

「いってらっしゃい。」

振り向きもしないで主人は玄関を出て行った。
最近は嫌味と文句ばかり。

朝から嫌味を言われると気分が悪くなる。

リビングに戻ると、
息子がソファで寝ながらゲームをしている。

「朝からゲームはダメって言ったでしょ!
早くごはん食べて早く支度しなさい!
毎日毎日同じこと言わせないで!」

私はイライラして息子に八つ当たりしてしまう。

最低な母親…


バタバタと息子を送り出し、
ソファに座りやっと一息つく。

今日の朝はいつもより疲れた。

昨日は変な夢を見たような…

でも夢を思い出せない…


外を見ると6月とは思えないほと日差しが強い、
庭の土がカラカラに乾いている、
私は外に出ていつものように庭の木々に水をやる。

私の唯一の癒しが草花を育てること。

主人はIT企業の社長をしている、
この白い大きな家を買った時は幸せだった。

今の私たちは仮面夫婦。

いつから私達の間にこんな深い溝が出来てしまったのか?

主人は不倫しているのかもしれない、
でも証拠はない、
主人に愛人がいても私は何も感じない。

主人と最後にセックスしたのはもう何年も前。
もともと体の相性も良く無かった。
私と主人の間にもう恋愛感情は無い。

離婚を考えたことは何度もある、
でもこの暮らしを手放すことが出来ない…

それにしても今日は日差しが強い。

水を撒くと木々が喜んでいるように感じた。

カラカラカラ…

音がして上を見ると、
隣のアパートの女の子がコーヒー片手に窓枠に寄りかかり、
窓の外をみている。

こんな時間に起きてゆっくりコーヒー飲めるなんていいな。

私は隣のアパートの女の子が羨ましかった、
彼氏がいて、友達も多くて、毎日楽しそうに過ごしている。

私は毎日主人に嫌味を言われて…
ご近所の友達も、私が新しい腕時計をしていただけで、
「お金持ちはいいわね。」と嫌味を言って来るような人たちだった。
私はランチのできる友達、
なんでも話せる親友そんな友達が欲しいと思っていたけど、
この歳になるとなかなか友達が出来なくて、
私は孤独だった。

遠くにある木々にも水が届くように、
私は持っているホースを高く上げた。

水が放物線を描いて高い位置から落ちる、
庭に小さな虹が出来る。

私は同じ光景をどこかで見た気がした?
そして幸せな気持ちになった。

「なんだろうこの気持ち?」

独り言を言っていると、
急に風が吹いて来た、
足元にあるカラフルな風車がクルクル回りだした。

私は風車が回るのを見ながら、
何かを思い出しそうになった。

その時、風車の近くに何か光る物が落ちていることに気が付いた、
拾って見るとそれは三日月の形のキーホルダーだった。


つづく


もっと飛躍する為の活動資金宜しくお願い致します。