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Weekly R-style Magazine 「読む・書く・考えるの探求」 2018/06/11 第400号

はじめに

はじめましての方、はじめまして。毎度おなじみの方、ありがとうございます。

というわけで400号です。キリ番ですね。

毎週更新しているので、あまり達成感はないのですが、それでも「ここまで来たか」という五合目感はあります。問題はこの地点が半分でもなんでもない点で、きっと元気なうちはずっと続けていくことでしょう。

それでも節目であることは間違いありませんので、今回は特別号として「知的生産ツール大集合」を特集しました。私が普段使っているツールを一挙大公開というテレビ番組で言うところの2時間SPみたいな構成です。

普段のようなお堅い話はまったく出てきませんので(たぶん)、お気軽に覗いてみてください。

〜〜〜言い方〜〜〜

「〇〇くん、ちょっと残業お願いしていいかな」
「〇〇くん、ちょっと超過勤務お願いしていいかな」

この二つを見比べると(あるいは聞き比べると)、前者が圧倒的に軽いことがわかります。非常に言いやすいのです。むしろ、そうして言いやすいからこそ、この表現が現代において使われ続けていると言えるのかもしれません。しかし、言い方は結構大切です。

「残業」という言い方は、「残って仕事をする」(残った仕事を残ってする)という意味以上のものは何も込められていません。それが雇用契約に対してどのような意味合いを持つのか、というのがまったく捨てられています。だから耳に軽く響くのです。

もし、残業という言葉を禁止して、代わりに超過勤務という言葉で上書きするならば、たぶんそうそう簡単に言い出せないのではないかと思うのですが、先ほども言ったようにだからこそ「残業」という言い方が好まれて使われているのでしょう。

でも、やっぱり残業って超過勤務だと思うんです。それは誤魔化さない方がよいのではないでしょうか。

最近の高プロ問題は、超過勤務という概念自体を消し去ろうとしているので、さらに厄介ではあるのですが。

〜〜〜あまい見積もり〜〜〜

『リーダブルコード』という本に次のような一節がありました。

"プログラマというのは、実装にかかる労力を過小評価するものである"

だから、ついつい新機能の実装を計画し、ほいほいとコードを書いてしまい、それによって多大な計画遅れが発生してしまう。悲しい話です。でもって、これとまったく同じことが物書きにも言えそうです。

4万字くらいの文章ならばすぐ書けそうな気がします。だって、1時間あれば2000字文章が書けるんだから、20時間もあればできるし、30時間くらい見積もっておけば楽勝でしょ、みたいに思えるのです。

しかし、文字数が増えれば増えるほど、全体に一本の筋を通す作業は困難になりますし、読み返して推敲する作業にも時間がかかるようになります。でも、そんなことは頭に上ってこないのです。

でもって、だからこそ人は「本一冊を書き上げる」というタスクに着手しようとします。

もし、人類がバルカン星人のような存在で、一切の見積もりエラーがなく、利得を合理的に計算して行動するなら、誰も本なんて書かないんじゃないか、というのは言い過ぎかもしれませんが、でも書かれる本の数はきっと激減するでしょう。

一見の愚かしさにも、価値はあります。あるいは意味は見出せます。所詮は物差しの問題でしかありません。

〜〜〜特別なコマンド〜〜〜

最近午前中の時間をひたすら執筆に当てているせいで、ブログの更新が午後以降になることがあります。

そうなると、普段のように気楽に更新するのではなく、ちょっと頑張る感じが出てきます。時間帯が遅くなればなるほど、そういう感じが強くなります。

とりあえず、ギリギリの日でも、気合いと根性で更新し続けていますが、この二つのコマンド(気合いと根性)は、毎日使ってはいけないコマンドです。一週間に一回とか、どうしようもない状況においてのみ発動が許されるコマンドです。

これが常態化すると間違いなく体への負担が大きくなるので、毎日コマンドを使わなければならない状況なら、生活の根本から見直した方がよいかと思います。経験者は語る、です。

〜〜〜「思ったことを素直に書く」〜〜〜

ときどき、「思ったことを素直に書く」ことが、あたかも簡単なことであるかのように語る人がいるのですが、おそらくそういう人は、普段から論理的に考える訓練をしている人なのでしょう。

この場合の「論理的に考える」とは、論理学に則って思考を進める、ということではなく、問題を分割し、それぞれに対して適切な知的処理を行いながら一歩ずつ前進していく、というアプローチのことを意味します。

普段から頭の中でそうしたことを行っているならば、その人が「思ったことを素直に書く」ことは非常に簡単でしょう。単に頭の中のものを出力し、それを読みやすく整えれば済みます。

が、そういう訓練を積んでいない人は、頭の中がひっくり返したおもちゃ箱のようになっているので、そのままリニアに記述することすら非常な困難を伴います。まず考えを整理し、その上で文章を整理する必要があるのです。

文章を書くことで頭が整理されるような効果があるのは、文章を書く際に思考を整理する必要が生じるからですが、少なくともその場合は、二段階の知的作業が必要で、それが結構苦労するのです。

この点は、「箇条書きを使えばわかりやすくなる」といった言説とも通じるのですが、書くことはそんなに単純な行為ではありません。なので思考の部分をまるで抜かして、いきなり目先のノウハウに飛びついても、結果はついてこないでしょう。この点は、しっかり語られるべきだと思います。

〜〜〜楽しい作業〜〜〜

いよいよ原稿が(初稿の)最終段階に近づいて来ました。

そうなると、書き足すことは減り、文章の流れを整えたり、表現を改めたりする作業が増えてきます。

でもって、これが実に楽しい作業なのです。「あること」を言いたい一文があるとして、その精度が充分でないときに、どのように言い換えるか。これを考えるのはパズルのような楽しさがあります。

文章執筆の初期段階では、要素の組み合わせ数が(人間の認知から見れば)ほとんど無限に等しくあり、その中から適切なものを選び出す難しさがあるのですが、表現の精度を高める段階まで来れば、その組み合わせ数は急激に減少し、認知で対応できるレベルになります。

少なくとも、そこで表現したい「あること」は自分の中では確定しているので、あとはそれを目指して精度を高めていくだけです。非常に細かい作業ですが、書き物をしている感覚も強くなります。

こうしたことは小さいこだわりであり、本の中心的なメッセージの新奇性や有用性には直接関係しないのかもしれませんが、それでも「本」というものの価値を支える大事な要素であると私は考えています。

〜〜〜Q〜〜〜

というわけで、今週のQ(キュー)です。正解のない単なる問いかけなので、脳のストレッチ代わりにでも考えてみてください。

Q. ちかごろの知的生産活動で欠かせないツールは何ですか?

では、本編をスタートしましょう。今週は、3つのセクションに分けて私の知的生産ツールを紹介します。

・デジタルツール編
・アナログツール編
・周辺ツール編

いつもより少しだけボリュームがあるので、じっくりお楽しみください。

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2018/06/11 第400号の目次
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○「知的生産ツール大集合 デジタルツール編」 #知的生産の技術

○「知的生産ツール大集合 アナログツール編」#知的生産の技術

○「知的生産ツール大集合 その他ツール&サービス編」#知的生産の技術

※質問、ツッコミ、要望、etc.お待ちしております。

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○「知的生産ツール大集合 デジタルツール編」 #知的生産の技術

まずはデジタルツールからいきましょう。

・Evernote

いわずとしれた綜合アーカイブです。昔はこれ一つにすべての役割を担わせようとしていましたが、さすがに最近ではいくつかのツールに役割を分担させています。

とは言え、すべての情報を保存する場所としてはあいかわらず強力で、書き終えた原稿などや書き留めたメモなどが雑多に集まっています。

使うのは、ほぼ100%がMacからです。iPhoneでEvernoteアプリ(公式)を立ち上げることもありませんし、ブラウザでアクセスすることもありません。基本的にはMacのクライアントだけ。ダウンロードしたデータ分に限れば、オフライン状態でも使えるのが、(田舎住まいでたまに電波が飛んでこない場所がある私としては)嬉しいところです。

iPhoneでは、FastEver 2を使うだけです。送信するだけ。ノートの閲覧はほとんどありません。モバイル環境で閲覧したいようなデータは、最近はScrapboxに(あるいはScrapboxにも)保存するようにしています。

ではEvernoteには、どんな情報が保存されているのかと言えば、以下のような情報が保存されています。

・思いついたメモ
・書き終えた原稿
・プロジェクト&イシュー情報
・ツイートログ
・デイリータスクリスト
・ライフログ的な情報

メモの書き留めに関しては、FastEver 2か、Macのメニューに表示されるQuickNote機能がメインです。Evernoteクライアントで「新規ノートの作成」をすることはほとんどありません。

書き終えた原稿については、CotEditorであればAppleScritpを介してEvernoteにノートが作成されるようになっています(ついでにタグがつきます)。Scrapboxであれば、自分でコピペします。

できれば、後者を自動化したいと考えていますが、今のところは手が付けられていません。Scrapbox→Evernoteは、[]表記を取り除きつつ、その[]内のキーワードをタグとして添付するやり方がおそらくよいでしょう。正規表現を使えば、できそうな気がしますが、ノートの作成をAPIを叩かないで行う場合は、メール経由になり、それはそれで面倒そうです。

とりあえず、さまざまなツールにちょこちょこ手を出していますが、Evernoteが綜合アーカイブであることはまったく変わっていません。ここが動かないからこそ、いろいろなツールに気軽に手を出せる、という側面もきっとあるでしょう。「とりあえず、最後はEvernoteに保存しておけばOK」と思えるからです。こういうHomeを持っておくのは、案外大切かもしれません。

ツイートログに関しては、ツイエバというサービスを利用しています。一日に一回、Twitterのつぶやきがまとめて送られてくるサービスです。私は毎週一回そのノートをすべて読み返して、このメルマガの「はじめに」に書くこと何かあったかな〜とふり返るようにしています。

デイリータスクリストについては、以前はそのノート上でタスクを管理していましたが、今は後述する7wrinerに移行したので、そのノートは7wrinerのログをコピペして保存する場所になっています。Evernoteのアウトライン操作がもうちょっと使いやすかったらなと思わないではありませんが、機能が追加されて動作が重くなってしまうのもイヤなので、現状はツールを使い分けることで対応しています。

デイリータスクリスト用のノートには、7wrinerに書き留めた走り書きメモなども転記(というかコピペ)するようにしています。

もう一つ、最近は意識して食事の写真を撮るようにしています。それが私の中の「ライフログ的な情報」です。私はあまりそうした写真撮影には興味が無いのですが、なんの画像情報もないデイリータスクリストノートがあまりにも無味乾燥なので、彩りを加えるために食事やアルコール飲料などの写真を貼り付けて、それぞれの日を区別しやすいようにしています。

・Googleカレンダー

スケジュール管理に関しては、Googleカレンダーを使っています。今現在は、あらゆるアナログ手帳から距離を置いています。定期的に哀愁を感じるのですが、「どうせ使わなくなるだろうし」と思って手を出していません。

そもそも、極端にアポイントメントが少ない仕事スタイルなので、正直に言えば、カレンダーツールはなんだって構いません。クラウドで使えればそれでOKです。ただ、長年使ってきた惰性と、現状特に不満を感じていないのでGoogleカレンダーを使い続けています。

GoogleカレンダーからはGmailにスケジュールのメールが飛んでくるので、そのメールをEvernoteのinboxにも転送するようにして、絶対に(あるいは絶対に等しく)見逃さない体勢にしています。Gmailの受信箱か、Evernoteのinboxは、どれほど忙しくてもどちらかは見るので、両方に送っておけば安心です。

繰り返しの予定(たとえばメルマガ締切など)ではない、特別な予定(〜〜さんと打ち合わせなど)の場合は、Evernoteに送られてきたメールは削除せず、ライフログ代わりに置いておきます。逆に言えば、繰り返しの予定はそれが不用になった時点で削除します。

・Gmail

メール管理はGmailを使っています。info@rashita.netのメールもGmailで取得するようにして、両方が受信箱に表示されるようにしています。

あまりメールがやってこない仕事スタイルなので(孤独だ)、Gmailに関しては特別な設定はほとんどしていません。前述したものを含めて、いくつかのメールをEvernoteに自動転送させているくらいです。

メールが少ない受信箱は平和です。暇なだけとも言います。

・Keynote

プレゼンテーション用のスライドを作る際には、Keynoteを使っています。

が、講演の機会があまりない仕事スタイルなので、スライドを作る機会もあまりありません。その代わり、Keynoteを画像作成ツールとして使っています。

わかりやすいのは動画番組「のきばトーク」の背景画像で、番組進行の助けになるような情報を表示させるために使っています。

また、私がブログで使っている図版のほぼすべてはKeynoteで作成しています。普通にKeynoteを使うと横長の画像になってしまうのですが、キャンバスのサイズは変更できるので、正方形の画像を作成することも可能です。で、矢印とか人物とか図形とかを入れた画像を作るのがKeynoteではむちゃくちゃ楽です。

もちろん専用ツールには勝てないのかもしれませんが(使ったことがないので比較できない)、ブログに使う画像くらいであれば問題ありません。

もう一つ、Keynoteで管理するメリットとして、画像をまとめておける特徴があります。

たとえば「infotecktool.key」というファイルには、知的生産の技術系の図版が一枚一スライドの形でずらっと保存されています。同じように「selfpublising.key」には出版関係の画像が保存されています。

こうしておくと、必要な画像をあとから見つけ出すのも簡単ですし(画像にタイトルを付けてもなかなか思い出すのが難しかったりしますよね)、また既存の画像を再利用して新しい画像を作り出すのも簡単です。

長年、こうした図版の保存には頭を悩ませてきましたが、最近はこのKeynote一括管理スタイルで安定しています。

ちなみに画像のアップ先がブログの場合であれば、Keynoteから画像として書き出さずにKeynoteの画面をスクリーンキャプチャしたものを使っています。具体的には、EvernoteのQuickNoteを使うのですが、選択範囲を切り取るとQuickNoteに画像が貼り付けられるのでそれをそのままドラッグして使います。

最近のブログシステムはファイルをアップロードしなくても画像を直接ドラッグすればアップしてくれるので、このやり方が爆速です。

・WorkFlowy

アウトライン周りは、WorkFlowyに一任しています。

これまでいろいろなアウトライナーを使ってきましたが、今のところはここが安住の地です。最近人気のDynalistも使いましたが、左のペインで項目を制御するのがあまりにまどろっこしいので止めました。
※最近私は、Evernoteですらノートブックリストを表示させないで使っています。

左ペインでの階層分離は、たしかに便利です。使いやすくはあるでしょう。ただ、そこに生じる固定感がWorkFlowyに比べるとずっと強く感じられます。

今の私のWorkFlowyの最上位項目は、

・recently compass
・▶️inbox
・▶️WorkSpace
・▶️issue
・▶️incubator
・▶️7Notebooks
・▶️target
・▶️database

となっていますが、この形に辿り着くまでに大きな改造が何度もありました。そして、きっとこれからもあるでしょう──という風にWorkFlowyでは感じられます。所詮これらは「仮置き」でしかないのです。あらゆる項目が下位になったり、上位になったりする自由がWorkFlowyのUIからは感じられます。言い換えれば特別な項目などどこにも存在していないのです。

左ペイン型の管理では、項目のタイトルと所属項目に明確な差が生まれます。「あれ」と「これ」は違うのです。もちろんそれが便利さ(≒管理しやすさ)につながるのですが、そのトレードオフで失われる動きの自由さの方を私は大切にしたいと感じています。

特にEvernoteと次に出てくるScrapboxに明確な階層分離がある分(Evernoteはノートブック、Scrapboxはプロジェクト)、WorkFlowyにおいてはなるべく自由闊達さをキープしておく、というのが役割分担だとも感じます。

とは言え、WorkFlowyが中心的に担っているのは、「すべての情報」ではなく「今現在動いている情報」であり、もっと言えば「本の原稿」や「連載企画」のアウトラインだけです。上記の項目で言えば「WorkSpace」がメインの場所で、あとはおまけみたいなものでしかありません。

それでも大きな本の企画を組み立て、原稿そのものを構成していくときにはWorkFlowyは(ひいてはアウトライナーは)欠かせない存在です。一体昔は、これなしでどうやっていたのか……。

・Scrapbox

最近急激に使用頻度が上がっているScrapboxです。

使い方はいろいろありすぎて、ここで全てを列挙はできませんが、「個人の知的生産」の領域に限定すると、二つあげられます。

・公開メモ(倉下忠憲の発想工房)
・作業場所(倉下忠憲's project)

前者はパブリック(※)で、後者はプライベートです。
※倉下忠憲の発想工房(旧倉下忠憲のメモ)
https://scrapbox.io/rashitamemo/

「倉下忠憲の発想工房」は、「走り書きのメモを少しだけ文章に整えたもの」を公開する場所で、私の思索を育てる場所にもなっています。位置づけ的にはメモ以上ブログ記事未満なのですが、それだけでは言い表せない何かがこの場所にはあります。

目下の懸案事項は、「アイデアを育てて行く場所」として有用なのは、この「倉下忠憲の発想工房」なのか、WorkFlowyのincubatorなのか、という点です。私の周りには、アウトライナーで育てていくのが好き、という方も結構いらっしゃるので、そちらに心を惹かれないではありませんが、逆に新しく出てきたこのツールで育てたらどうなっていくのだろうか、というのを(実験的に)確かめたい気持ちもあります。

この二つ(Scrapboxとアウトライナー)は非常に異なる性質を持つので、その性質の違いが知的生産の営為にどんな違いを与えるのか。興味津々なテーマです。

・Scrivener&でんでんコンバーター

原稿の部品を統合するツールとして、Scrivenerを使っています。

商業出版で使う原稿と、セルフパブリッシングで出版する原稿の両方でこのツールは活躍します。逆に、「ブログの一記事を書く」みたいな場面ではまったく出てきません。「書籍の一企画=Scrivenerの一ファイル」が基本です。

セルフパブリッシングの場合であれば、最終的にはEPUBファイルを作成する必要があり、それを補助してくれるでんでんコンバーターというWebツールがあって、そのツールに食わせるための(=読み込ませるための)テキストファイルが必要になるのですが、そのテキストファイルを作成するためにScrivenerは活躍してくれます。活躍というか、もう無双です。天下に敵うものなし。それくらいの活躍感です。

複数の原稿を部品のように扱える点も魅力なのですが、なによりもコンパイル制御が優れています。具体的に言えば、「フォルダ直下のテキストのタイトルには、##をつけて、さらにその下のテキストのタイトルには###をつける」といった指定が可能です。

##や###はマークダウンにおける見出しの指定ですが、これを本文に直接書いてしまうと、部品的文章の配置を換えた際、本文内のマークダウンも一斉に書き換えなければなりません。その点、コンパイル制御でマークダウンを書き込むようにしておけば、本文内の変更は一切必要なくなります。これがもう、むちゃくちゃ便利なのです。

最近では、第二版が発売された『たすくま「超」入門』の制作にScrivener(とでんでんコンバーター)が活躍しました。

◇『たすくま「超」入門』
https://cyblog.biz/pro/taskumanual.php

著者のむのんさんから原稿を受け取り、私がそれをScrivenerで処理して、でんでんコンバーターを通してEPUB化する、という流れです。

また、今執筆中の本の原稿も、Scrapbox+Scrivenerで管理しています。具体的にはScrapbox上で執筆を進め、「うん、これでいいか」となった段階でその部分をScrivenerにも保存しておく、というやり方です。残念ながらScrapboxでは、単独のノートの文字数はカウントできても、複数のページの総文字数まではわかりません。

あとScrapboxでは階層構造の操作が致命的に難しいので(不可能というわけではない)、その辺は、ScrivenerとWorkFlowyの補助を得て作業を進めています。

・7wriner

断片操作のための自作ツールが7wrinerです。最近ではめっきり「日々のタスク管理+日々のメモ管理」ツールになっています。

◇7wriner
http://honkure.net/7wriner/index.html

7wrinerであれば、タスクリストとメモリストがシームレスにつながっているので、「とりあえずメモ」したものを後からタスクにするのが簡単ですし、逆にタスクをいったんメモに戻すこともできます。専用に作られているタスク管理ツールに比べると非常に見劣りするツールではありますが、このメモとタスクの行き来が自由なのが7wrinerの良いところです。

やろうと思えば、タスク、プロジェクト、メモ、ノートを一つのツールで管理できますが、横幅の問題で、あまり長い文章を保存するのは向いていません。その辺はやっぱり適材適所があります。

・CotEditor

Macで常用しているテキストエディタがCotEditorです。ただ、最近はScrapboxでの物書きも増えていて、使用頻度は下がっています。

とは言え、気分を変えたいときにエディタを変えることはよくありますし、またAppleScriptによるEvernoteとの連携や文章の自動整形処理などもありますので、まだまだ活躍する機会はあります。

・Pages

このメルマガのEPUB版を作る際に、Pagesを使っています。

テキストエディタ(か他の何か)でまぐまぐ!掲載版を作成し、それをPagesにコピペして、見出しなどの処理を行ってEPUB出力、というのが一連の流れです。note版は、テキスト版をコピーして、そこで見出しの処理を行っています。

似たような手作業が二重に発生しているのですが、noteのエディタが独特なので、現状はこうするしかありません。

その他、ワープロの用途では一切Pagesは使いません。もし、wordドキュメントが必要な場合は、Googleドキュメントを使うと思いますが、幸いそういう機会もめったにないのでテキストエディタと静かに暮らしています。

・Pixmater&Affinity Designer

セルフパブリッシングで、表紙を作るときに使っているのがPixmaterとAffinity Designerです。

さすがにKeynoteでは、画像処理に限界がありますので、本の看板でもある表紙画像を作る際には、専門のツールを召喚します。逆に言うと、それ以外はほとんど出番がありません。

Pixmaterが画像全般を、Affinity Designerが文字組みを担当します。

・まとめ

以上が現役で活動しているデジタルツールの一軍です。他にもたま〜〜〜に触るツールはありますが、そこまで列挙しているとキリがないので今回は割愛しました。少なくとも、これらのツールで私の知的生産の95%程度は回っています。

もちろんここにはWebブラウザ(Firefox、Chrome)などもあるわけですが、さすがにそれは挙げるまでもないでしょう。必需品に近いものですからね。

では、続いてアナログツール編にいってみましょう。

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