DCとNISA

 DCとは確定拠出年金のことでDefined Contribution Planの頭文字を取ったものです。

 さて今回はDCと新制度が開始したNISAについて考えてみます。
まず、NISAだけでなくDCを取り上げた理由はお勤めの企業に制度としてある場合とない場合、自営業者等の場合、現時点の年齢によってNISAを活用した運用方針が変わると考えているからです。

 確定拠出年金と聞いてイメージが湧く人はNISAよりも少ないと思います。確定拠出「年金」ですので個人で用意する年金のことです。
よく年金は3階建で言われることがあります。
1階は国民年金(基礎年金)
2階は厚生年金(会社員・公務員)
3階は「確定拠出年金」・確定給付型年金・厚生年金基金など

 国民年金は2023年度における満額の年金額は795,000円/年となっています。月にすると66,250円です。かなり少ないですね。生活するのにも一苦労しそうな金額です。これも満額の場合ですから、40年間保険料を払い続けた場合の話です。さらに10年以上払込(もしくは免除期間も含めて)をしなければ受給資格が発生しません。しかし、現実的にはそれ以上の年金を受け取っている方が大勢います。それは厚生年金を受け取っているからです。会社員、つまりサラリーマンは国民年金に加え、厚生年金も加入しています。また公務員も制度改正し共済年金が厚生年金に統合されています。
 厚生年金は報酬比例+定額+加給で構成されています。まず報酬比例は平均標準報酬月額×7.125/1000×加入月数(H15.3.31以前)+平均標準報酬額×5.481/1000×加入月数(H15.4.1以降)によって支給額が決定します。加入年数が直近20年以内であれば後半の計算式だけ見れば問題ありませんね。定額は1,628円×改定率(×支給率)×加入月数です。加給についてもあるのですが、ここでは勤続年数20年42歳(私の年齢ではないのですが例として)とすると報酬比例部分のみが適用となります。昭和61年に年金法大改正が施行されたことである一定の年齢まで報酬比例の前半と定額部分と加給が経過措置として支給されているからです。なお、国民年金の受給資格を満たした上で加入月数は1月以上で受給資格が発生します。標準報酬額は等級があり、詳しくは日本年金機構HPなど確認してみると良いでしょう。またねんきん定期便を確認してみるのも良いと思います。それではここで例を出して計算してみます。

サラリーマン(22歳で大学卒業後38年間会社に勤めた場合)
年収5,040,000円
毎月420,000円
ボーナスなし
平均標準報酬額410,000円×5.481/1,000×456月(38年×12月)=1,024,727円つまり、先ほどの国民年金と厚生年金を合わせると、
国民年金満額785,000円+厚生年金1,024,727円=1,809,727円
月額150,000円程度支給されるということがわかります。
年金の支給は偶数月に1回、年6回の支給。1度に2か月分が支給されます。

※上記はサラリーマンの場合で平均標準報酬額を仮置いた場合ですので自営業の方や年収によっては異なりますし、途中で転職などをしたりすると年収の変動や被保険者区分が2号→1号になるケースもあるのであくまでも変わらず60歳まで払込した場合となります。

 前置きが長くなりましたがDCは国民年金と厚生年金の上にある3階部分になります。毎月150,000円で一人で生活するのであれば何とか生活できそうにも思えますが、インフレ率を考えると何だか足りなさそうですよね。さらに夫婦二人で生活するとしたら、配偶者の年金と合わせた金額になると思いますがどちらか一人の収入のみで払い込んだ年金によって老後の生活が賄えるかと言われるとクエスチョンということです。
 老後になれば基礎消費も減ると思います。しかし将来どのような生活水準を希望しているかによって+αで老後に備える必要があるということです。
 まず3階部分が企業の制度としてあるかを確認してみましょう。確定拠出型年金(DC)もしくは確定給付型年金(DB)、厚生年金基金の有無。3階部分がない場合は個人型確定拠出年金を活用すると良いでしょう。iDecoの愛称で呼ばれているものです。退職金制度がある企業は3階部分がここに当たります。退職金制度があるのか、あるのであればどういった制度なのか、退職金シミュレーションをしてみて受取金額がどのくらいになるのかを確認してみるのが大切だと思います。漠然と老後が不安と考えるのではなく、もしこのまま(無理なく)推移していったらどのくらい年金・退職金がもらえるのかがある程度わかれば、老後の生活が安定するのかどうかがわかりますね。DCは企業が拠出額を確定させるもので、DBは企業が給付額を確定させるものになります。近年ではDCを選択する企業が増え、企業が従業員に運用を委ねるものになっています。つまり、将来の資産形成は従業員一人ひとりが考えなければならないということになります。

DCのみでは月55,000円拠出可能、またDBとDC併せて月55,000円拠出可能となります。併用の場合はDC部分は月27,500円が上限となります。
どちらも制度がない場合は月23,000円を上限にiDecoで拠出が可能になります。(自営業は月68,000円が上限になります。)また、DCとiDecoの併用も出来ますが、55,000円-DC掛け金が上限(ただし20,000円が上限)になりますし、DBとDC併用においては27,500円-DC掛け金が上限(ただし12,000円が上限)と少し複雑になっていますので初心者であればDCが制度としてあればiDecoを併用する必要はないと思います。

 さてここからが今回の記事を書く上でポイントとなる部分になります。
非課税制度を有効活用するためにはどうすればよいのか。普通であれば給与として受け取り課税されますが、DCは掛け金が事業主から拠出されるので結果として所得税を抑えることが出来ます。また運用期間中の運用益も非課税となります。DCの受け取り時は退職金控除を活用することが出来ます。
退職金控除は400,000円×勤続年数(20年まで)+700,000円×(勤続年数-20年)となります。

会社員22歳から60歳になるまで約38年間DCを掛けた場合
400,000円×20年+700,000円×(38年-20年)=20,600,000円
となるのでこれを超えなければ課税されることがないということです。
ただ現時点の制度となりますので税制度改正によっては変更になる可能性はあります。退職金控除に限らず、税制度は縮小・廃止となることはあっても拡大・改善されることは稀有であると考えると現状が最大限の控除と捉えても問題ないと思います。
 ※詳しい税金に関する相談は税理士に相談しましょう。(個別具体的な相談は有資格者しか出来ません。)

 ここまでの話を整理すると今の職業と将来の年金額、退職金制度の有無によって、必要額は異なるということがわかります。
 わたしの考えとしては退職金の出口戦略において留意する必要があると考えているため、DC(iDeco)に全掛けするのが万人にメリットがあるとは言えません。もし出口戦略が難しいという方はDCを活用するのではなく、NISAを活用する方が良いかと思います。
 NISAについては他の方がたくさん説明していると思いますので詳しい内容は割愛しますが、端的にNISAのメリットを説明すれば①DCと比べると換金性が高い。②運用益が非課税。③非課税枠が大きい。(累計18,000,000円)

 最後になりますがNISAはあくまでも非課税制度の一種であり、その中で投資をしていくことになります。投資の知識はなくとも積立を行うことでリスク分散することは出来、長期的には資産形成することが可能となります。投資について個別具体的な商品や知識について勉強するのも大事ですが、投資のそもそもの目的や長期投資の効用、世界経済の仕組みなどもっと広い視点で見ることをおススメします。

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