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肌の色が物語ること

写真:ロイター

写真のインパクトが大きくて、それが全てを物語っているということが稀にある。新聞記事の5W1Hの記述なんてどうでもよくなるくらいの大きな驚きを与える写真。

私が久々に大きな衝撃を受けた写真がこれだ。脳天にガツンと雷が落ちてきたみたいだった。

この写真は8月22日に南アフリカで開催されたBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)首脳会議でのもの。

ここ数十年、私は新聞やテレビのニュースで何度もこれと似たような写真を見てきた。これと似たような写真とは、G7やG8サミットで先進国の各国首脳が仲良く並んで立っている写真。でも、そこにはこの写真(BRICS首脳会議)に写っている首脳は一人も写っていたことがない。

G7サミット(先進7カ国首脳会議)の参加国は日本、米国、英国、ドイツ、フランス、イタリア、カナダで、G8サミット(主要国首脳会議)の参加国はこれにロシアを加えた8カ国。そして、日本以外の首脳は全て白人だった。だが、上の写真に写っている各国首脳は、ブラジルの代表以外全員有色人種(ロシアのプーチンはオンラインでの参加だった)だ。

何十年間も何の疑問も持たずにニュースでG7やG8サミットの参加者の顔を眺めていたが、この写真を見て初めて、これまでずっと”先進国首脳会議”という場所にいた世界のリーダーは白人ばかりだったことに気づいた。そして、そのことに疑問を持たず、そんなものだと受け入れていた自分にショックを受けた。私は自分がアジア人であって、欧米人(白人)ではないことを忘れていたのだろうか。この写真は私が忘れていたことを一瞬で思い出させてくれた。

差別につながりやすいので、人は肌の色を話題にすることを避ける。でも、この写真を見て、私は世界の首脳たちの肌の色に目がいった。肌の色の白(欧米)と有色(欧米以外)のはっきりした対照が、世界がとてつもなく大きく、しかも急速に変わろうとしていることを視覚的に象徴または暗示してるように思われてならなかったからだ。

BRICSは一枚岩ではないし、ビジョンもまだ明確には示されていない。だが、アジア、中東、アフリカ、中南米など、40カ国以上の国々がBRICS加盟に関心を示しているというから、G7やG8の参加国と比肩する存在に成長する可能性は大いにある。

それがどのような方向に向かっていくのか、私には全くわからないが、BRICSはこれまで世界秩序の底流を成していた欧米の思想や世界観にはない、新しい思想、世界観でビジョンを構築していくだろう。そうじゃなければBRICSを中心に新興国がまとまる意味がない。

新興国が先進国と同じようなパワーを持つと、どんな新しい世界秩序が生まれるのだろう。ぜひ、武力によらない世界秩序を構築してほしい。

日本はG7やG8の一員であり、しかもアジアの一員でもあるという稀有なポジションにいる。先進国と新興国をつなぐ役割を期待したいものだけれど。。。




らうす・こんぶ/仕事は日本語を教えたり、日本語で書いたりすること。21年間のニューヨーク生活に終止符を打ち、東京在住。やっぱり日本語で話したり、書いたり、読んだり、考えたりするのがいちばん気持ちいいので、これからはもっと日本語と深く関わっていきたい。

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