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あなたへ【拝啓への返信】

私は、水の粒子になって空気に溶け、雲になって大地を覆い、時のくびきから自由になったの。
私たちがあの木のそばで寄り添っていた頃、私は側にいたんだよ。
私たちがあの家で笑い合い、コーヒーを飲み、歌をうたい、台所で食事を作っていた頃、どの瞬間にも私は側にいたんだよ。

現し身だった頃、私は木に耳をつけて、水の循環する音を聴くのが好きだった。
あなたに出会ってからは、あなたの胸にもたれて、あなたの鼓動を良く聴いていたっけ。
星をめぐる水は生命の流れと躍動。
いま私は廻る流れの中に居るよ、この星のたくさんの命を感じながら。あなたの命を感じながら。

あなたが木の側であの歌を聴いているとき、イヤホンから木の鼓動が聴こえるでしょう?
どうか私を感じてほしい。あなたの頬に触れる風のそよぎ、私があなたに触れている手触りと私の匂いを。



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↑こちらの記事は、EATALK MASKさんの企画に寄せた「拝啓」への「返信」です。

七田苗子さんが書いた素敵なラブレター「拝啓」という文章への「返信」を想定して書きました!
“雲の上で寝そべる女性へ
木の下に一人残された男性からの手紙”
……彼女を想う気持ちと切なさが美しい情景になって歌と一緒に聴こえてくるような。素敵なお手紙なのですよ。


↑七田さんがこの企画に取り組む際の心情が綴られております。

七田さんは「匂い」と「音」を意識して書かれたとのことなので、私は「水」と「循環」をイメージして書いてみました。
全ての生命は死によって元素に還り、世界に還り、循環する。というのが私の死生観のひとつなので、そういう内容になったかな……と思います。
(私が書くと微妙にウェットさが足りない感じにどうしてもなるなぁ…汗)
他にも沢山の方が素敵な「返信」を寄せています。EATALK MASKさんのマガジンに収録されております!


EATALK MASKさん、七田苗子さん、ギタリストジュンペイさん。
ご査収くださいませ。

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