UE:ハウリング・ロア ep-5

 固唾を飲んで見守るがごとく多様な背景色の装甲巨兵達は円陣を組んで対峙する二機を見守った。

 一機は黒橙のカラーリングの武者と騎士の折衷みたいなディティールの人型兵器。もう一機は灰迷彩に近代武装を搭載した回りを取り巻く量産型と似て非なる指揮官機であった。

 対峙した二機を取り囲む巨兵の中から三機が前に出ると黒武者を中央に正三角にスクラムを組んでライフルを構え……遅い!指揮官機との連携を組もうとした精鋭機、三機の内一機に向かって黒武者は飛び越えるように跳躍しながら乗り越え様に斬撃を見舞った!上半身をかち割られ転倒する精鋭機!

「タイマンって気はなさそうだな!」

 ハガネとしてもそんなことは百も承知であった。これほどの数で押しつぶそうと考える輩が今更一対一に応じるなどこれっぽっちも期待していない。
正面の指揮官機の目の前に着地すれば右側に回り込むように刀を振りぬく。
しかし鋭利な刃は指揮官機の左腕に搭載された二連装射突杭の合間を撫でるように受け流された。

 ぶつかり合う二機のカメラ・アイの視線。追撃を受ける前に黒武者が飛びのくと一瞬遅れて居た場所を重ライフル弾が掃射、火線がオレンジの軌跡を描く。さらに飛びのいたフルメタルドーンを指揮官機と精鋭機が連携してミサイルを幾重にも投射する。

 黒武者の目の前に迫る何発ものミサイルの群れの中、ハガネはあえて刀を構えてロケットのごとく突貫する。

「バッ……!?」

 罵倒のつもりで吐いた言葉は驚愕へと変わる。黒武者はミサイルが近接爆破するよりもさらに速く進行方向のミサイルを斬り捨て前へと踏み込んだ。背後でむなしくターゲットを見失って誤爆するミサイル群。

 指揮官機をかばうように精鋭機が並んでライフルを掃射せんと構えるが驚愕による一瞬の硬直の代償は大きかった。黒武者は一機を横薙ぎに切り裂けばもう一機を刺突、刀で串刺しにしたまま指揮官機の方向へ突進した。

 指揮官機からは完全に仲間が遮蔽物になって黒武者が見えない状況であった。盾にされた仲間を横殴りに地に倒してしまうもその背後には黒武者の姿はなかった。

 黒武者の姿を補足しようと振り向こうとした直後、黒武者の両掌底が背におっていた兵器をバターを溶かす様に溶断、破壊。なおも振り向いて銃を構えんとするも、超密着距離においては敵機は既に銃身の内側に踏み込んでおり、よどみなく黒武者はそのライフルを掴んでこれも溶断する。

 苦し紛れに黒武者を貫かんとした左腕の射突杭もまた空手によって逸らされれば肩関節を引き抜かれたクナイが斬り飛ばす。そのままコクピットに突き付けられるクナイ。

 どよめく観衆と化した巨兵達。戦場を覆っていた冥王の咆哮が歌の終わりと共に止む。

 勝ったのはフルメタルドーンの騎手、ハガネであった。

【UE:ハウリング・ロア:ep-5 終わり ep-6へ続く】

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