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知識の再構成①認知バイアス

人間には沢山の知識バイアスが存在する。認知バイアスとは、偏見や固定観念による合理的でない考え方の偏りのことである。

今回は人間に数多く備わっている認知バイアスについてまとめてみる。情報が錯綜していたのでひとまとまりにしておくと便利だと思う。プラシーボ効果、バーナム効果、錯視系などあまりに有名なものは省いたので、それぞれどんなバイアスに起因したものか考えてみても面白いだろう。追加されていないもの、間違った知識などあれば指摘していただきたい。

分類について

認知バイアスといってもさまざまな種類があり、影響する先が個人か集団か、個人なら記憶か知覚か感情かなど。今回はできるだけそれを網羅的に羅列していくが、今回は"熱いバイアス""冷たいバイアス""記憶へのバイアス""集団に起こるバイアス""その他"に分けて分類する。熱い/冷たいバイアスというのは厳密には存在しない言葉だが、「熱い認知」「冷たい認知」にそれぞれ起こりうるバイアスであるとする。この考え方は1950年代にソレンチノ(Sorrentino,R.M.)が中心となり使われ始めたのが起源といわれている。

 熱い認知: 欲求により起こる知覚の歪み

冷たい認知: 論理的思考に起こる知覚の歪み

とここでは定義させていただく。つまり、感情が存在するゆえに起こる認知バイアスを"熱いバイアス"、理性的に考えようとする際に起こる認知バイアスを"冷たいバイアス"と本記事では定義する。

熱いバイアス

・感情バイアス
感情的要因による認知と意思決定の歪み。
・確証バイアス
思い込みや周囲の環境によって歪められた認知。
(例)割引の札が貼ってあるとより安く思い込む。
・自己中心性バイアス
自らの認知的不協和に耐えられず、他人の感情を自分のみが持っている情報から一方的に判断してしまう傾向。
・敵意帰属バイアス
相手の言動が敵意や悪意によるものだと認識してしまう傾向。ハンロンの剃刀(無能で十分説明されることに悪意を見出すな)という喩えで有名。
・外部誘因バイアス
他人の動機は不純でも自分のみ純だと思い込む。簡単に言うと他人に厳しく自分に甘い。
・権威バイアス
権威がある者からの命令や説得を吟味しないまま正しいと受け入れてしまう。
・インパクトバイアス
ある出来事が起きたときのことを想像して、出来事が起きた後のことを実際よりもずっと良く、あるいはずっと悪く予測すること
(例)一人暮らしを始め楽しい生活が始まると思いきや、楽しいのは最初だけで気づけば平凡な毎日だった
・コンコルド効果(埋没費用効果)
ある対象への金銭、精神、時間的投資が損と分かっていても惜しくてやめられなくなる。ギャンブルによくある
・チアリーダー効果
女性を前にすると男性の行動が無意識に積極的・大胆になる。チアリーダーそのまんま。
・バントワゴン効果
「多くの人が支持しているものは正しい」と思いやすい心理現象
・モラルライセンシング
善い行いをしたあとは悪いことをしてもよいという許可をもらったような気になり悪い行いをしやすくなってしまう。
(例)ボランティア活動て疲れている帰りの電車で優先席が一つだけ空いている。善い行いをしたのだからと座った。
感情移入ギャップ
怒りや恋愛感情など、特定の感情が強くこみあげてくる時に、その感情を持たない視点で考られない傾向



冷たいバイアス

・投影バイアス
将来の自分を予測する時、ずっと今の状態が続くと思い込む。
(例)空腹時に買い物に行くと買いすぎてしまう。
・区別バイアス
金額や割合などの特定の数値に基づいて複数の条件の価値を比べるとき、複数の条件を別々に評価するより同時に評価したときの方が、その数値の違いが自分にもたらすであろう幸福度差をよりうまく捉えられるだろうと錯覚する。
・信念バイアス
結果が正しかったとき、その過程全ても正しいと思い込む。関連項目としてピークエンドの法則というものがあり、人は経験や記憶に対してをその過程ではなく結果やピーク時(最好調期)がどうだったかで判断してしまう傾向があるというもの。
不作為バイアス
何かをしてマイナスの結果になるより、何もせずマイナスの結果になるほうがましだという思考。
・正常性バイアス
自分に都合の悪い情報を無視する傾向。
(例)地震が起きても「まだ大丈夫だろう」と避難しない。
・楽観主義バイアス
物事の計画を立てる際必要なリソースやリスクを少なく見積もりがち(=計画の誤謬)
・対応バイアス(根本的な帰属の誤り)
人の行動を根拠なくその人の種類によって決定されているとみる。根本的な帰属の誤りとは、個人の行動を説明するとき、気質・個性的な面を重視し状況的な面を軽視する傾向。自分には逆の見方をする。(=行為者-観察者バイアス)
・現在志向バイアス
人間は将来の利益より現在の利益に食いつく。アレのパラドックスなど。
(例)次の2つの選択肢のうち、あなたならどちらを選ぶか。
いますぐ3万円もらえる or 1年後に4万円もらえる
  1年後に3万円もらえる or 2年後に4万円もらえる
多くの人は一問目は左、二問目は右と答える。
・行為者-観察者バイアス
行為者として自分の行動の原因を考えるときには、状況の影響力も考慮する一方で、観察者として他者の行動の原因を考えるときには、行為者の性格や能力のような内的特性を重視しやすい傾向。
・アンカリング
先行する何らかの数字(アンカーという)に歪められ、判断した結果がアンカーに近づく。
(例)「国連加盟国のうちアフリカの国の割合はいくらか」という質問をしたときに、質問の前に「65%よりも大きいか小さいか」と尋ねた場合(中央値45%)、「10%よりも大きいか小さいか」と尋ねた場合(中央値25%)よりも、大きい数値の回答が得られた(wikipediaより) 10回クイズなどもアンカリングの例のようだ。
・ゼロサム思考
win-winは存在しないと思い込む。自分が損しているならば相手は得しているはずだと思い込む。
・偽の合意効果
自分のもっている考えは大衆と同じであると勝手に思い込む(合意する)。さらに、他の人の認識が自分と異なるとき、その人の考え方は不正確で歪んでいるように感じることをナイーブリアリズムという。
・事前確率無視
あとから示される確率に注目してしまう。
(例)例えば、ある難病にかかる人の割合が1000人に1人とする。
その病気について90%の正確性でわかる検査を行ったところ、検査結果は陽性だった。
→90%の確率で難病にかかっている気がしてしまう。実際は1%もない。
自動化バイアス
自動化支援システム、意思決定支援システムに依存すること。認知的努力を最小限に抑えようとしてしまう。膨大なデータから成長するAIにもあてはまるバイアス。



記憶へのバイアス

・一貫性バイアス
ある人物の過去の行動・態度が一貫して現在にも続いていると思い込む。
・事後情報効果
ある出来事を目撃したあと、その出来事に関連した情報を与えられると、その出来事の記憶が関連した情報の方向に変容してしまう。
(例)同僚がもうすぐ結婚するという噂を耳にして、そういえば、さっき彼女は薬指に婚約指輪をしていたということを思い出した(実際はしていない)
・ネガティビティバイアス
ネガティブな情報ほど長く記憶に残る。
・ツァイガルニク効果
完成されたものより完成途中のもののほうが記憶に残りやすい。
・圧縮効果
最近の出来事をずいぶん前に起きたことにように感じたり、逆に、かなり前の出来事をつい最近起きたことのように感じたりする
・フレーミング効果
同じ内容でも表現方法によって受け取られ方が変わる。
・ハロー効果
ある対象を評価する時、それが持つ目立ったな特徴に引きずられ他の特徴についての評価が歪められる。
・カラーバス効果
特定のことを意識し始めると、日常の中でその特定のことに関する情報が自然と目に留まるようになる現象。
・コントラスト効果
物事を比較する際直近に目にしたものや比較のために調べたものなどに評価が影響されやすい。
(例)グラドルやモデルをよく見る男性は女性への献身度が下がる
・ブーメラン効果(バックファイア効果)
もっている認識へ反論をされたり誤りを指摘されたりすると、かえってその認識を盲信してしまう効果。
・単純接触効果
繰り返し接すると好意度や印象が高まるという効果。人だけでなく、音楽、図形、匂いなどに対しても起こる。
・グーグル効果
インターネットで調べたことは記憶に残りづらい。




集団でのバイアス

・自己奉仕バイアス
成功したら「自分のおかげ」、失敗したら「周りのせい」と判断する。とくに、後者を自己支援バイアスということもある。
・内集団バイアス
自分の属している集団は他に比べ優れていると思い込む。贔屓。
・外集団同質性バイアス
他の集団を同質性の高いものとみなす。自分らの集団への理解度に関わらず起こる。
(例)「男ってやつは~」「若いもんは~」などステレオタイプに外集団を捉える。
・自前主義バイアス
自分たちのもつアイデアが別の組織発祥であるために採用したがらなくなる傾向。車輪の再開発という言葉で有名。既存のものとしてすでにある、もしくは代用できるのに自分たちの集団で作ろうとする傾向。
・集団浅慮
集団で考えると欠陥のある結論になるときがある。アビリーンのパラドックスやパーキンソンの凡俗法則もその例。結果声の大きい人に引っ張られ、集団そのものが過度に大胆になったり(=リスキーシフト)慎重になりすぎたり(=コーシャスシフト)する。
・ピグマリオン効果
他者から期待されると成績が向上する。期待された内容通りに結果が出てくる。
・個人化
自分がコントロールできないような結果が起こったときそれを自分の責任として考えてしまう。
(例)会社が倒産したのは自分のミスのせいだと思いこむ。
コントロール幻想というものがあり、自分の力では変えられないものもコントロールできると思い込んでしまう(=客観視できない)ことなどがあげられる。ギャンブルなど確率に多い。




その他

・後知恵バイアス
予測不可能だったことに対し後から予測可能だったと思い込む。
(例)別れたカップルに対し「最初から二人は合わないと思っていた!」
・情報バイアス
判断のために不要な情報まで集めようとしてしまう。しかし、自分にとって望ましくない状況がある場合、その状況についての情報を得ようとしないことをオストリッチ効果という。オストリッチとはダチョウのことで、ダチョウは敵に襲われそうになると砂に顔を突っ込み見なかったことにするという俗説から。
・現状維持バイアス
今からの変化を受け入れたくないと考える。プロスペクト理論(人は得への満足感より損への不満が大きい)や保有効果(自分が所有している物に高い価値を感じ手放したくないと感じる)が原因。
・生存者バイアス
生還した者からは意見が聞けるが、生還できなかった者から意見は聞けないことから意見が偏ること。
・ゼロリスクバイアス
人は相対的なリスクの絶対量を考慮せず、小さなリスクの割合を大きく下げることを求めるというもの。つまり100のリスクを10にすることよりも、1のリスクを0にすることを追求しがち。
・時間節約バイアス
比較的高速状態から更に加速するときの節約時間を過大評価し,また,比較的低速から加速するときの節約時間を過小評価する。つまり節約時間は高速化するにつれ減っていくはずなのに気づけない。
・機械学習バイアス
アルゴリズム生成の際に入力データに偏りが起こるバイアス。
・バイアス死角
他人の認知バイアスは気づけるが自分には見落としてしまう。



知識の再構成では投げ銭をつけることにしました。有料部分は画像一枚しか貼っておらず全く有益ではないので、無料部分が有益だと思ったらぜひ。知識に価値をつけるのは読者皆さんです.


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