「へー!左利きなんだー!」と言われるとムカついてしまう話


「へー! 左利きなんだ~!」って言われた時のリアクションに、大変困っている。

相手が他意なく、たまたま気づいて「あ、左利きなんだ」とポロっと言ってしまった、という感じならこちらも「うん」って言えばいいだけだからなんの問題も無い。

でも、左利きであることにやたら感心されたり、あなたのしらないところ発見☆みたいなテンションで言われると、もう戸惑ってしまう。

別にこちとら物心つく前から左利きだし自分の意志で選び取ったわけでもないしアイデンティティにも全然組み込まれてない、左利き多数の世界にいたらそれこそ利き手に何の自覚もなしに生きられるはずだったわけで、自分にとっちゃ完全に普通のことだと思ってるから、そんなことでやたら感心されたり、あなたのしらないところ発見☆って思われると、相手との「左利き観」の落差に愕然としてしまう。

人間の属する属性の中で、「左利き」ではなく「出身地」や「性別」とかなら、(自分の意志で選び取ったわけではないとはいえ)後天的に自分のアイデンティティに組み込まれていくものだから、まだ話題にできる。そういう意味で、私は「あ、女なんだ~!」と言われた方が実はまだマシだ。

「へ~! 左利きなんだ~!」に輪をかけて、「左利きって頭良いんだよね!」とか「左利きって生まれつきなの?」とか言われるとものすごい勢いで心のシャッターが閉じてしまう。「はあ私以外の左利きのことなんて知らん」「生まれつきに決まってるだろ(わざわざ不便で不利な左利きに後天的にシフトするやつなんかいないだろ)」と思う。

私も大人なので、心のシャッターがガン閉じしたまま一通りの「左利きあるあるトーク」をしてお茶を濁して(改札で戸惑うとか、手書きで横書きの文章を書くと手が真っ黒になるとか)、その話題を適当に終了させる。もう大人なので心のシャッターがガン閉じしたままでも喋れる。


しかし左利きに限らず、この手のトークってあふれてる。

九州出身の男性の人は、「へえ~九州出身なんだ~お酒強いの?」って言われ続けてうんざりしたりしないんだろうか。私がもし九州出身の男で、「へえ~九州出身なんだ~お酒強いの?」と言われ続けたら100回目に言った相手を殺すと思う。そして101回目からは出身地を隠して生きる。

これがまだ出身地とか左利きといかいう話題だったら良いものの、もし私がゲイの男で「へえ~ゲイなんだ~ゲイの男の人って頭いいんだよね」とか「へえ~ゲイなんだ~ゲイって生まれつきなの?」とか聞かれたら、30人目で殺すと思う。そんなこと聞くならお前の右利きヒストリーと、お前のヘテロセクシャルの目覚めストーリーを一通り語ってから聞け、と思う。


ここまで書いてて、なんだか自分がおかしいような気もしてきた。

これは、先日、とても仲の良い男友達と女友達の3人で、お上品なレストランでゲスい話をさんざんおっぴろげて大いに盛り上がった時に、ふっと間が訪れた時の一コマであり、要は「さんざん面白い話をして盛り上がってたのに何今更導入みたいなこと言ってんだ」という苛立ちもあり、まあ例外的なんだが……

この会話を反芻しながら、あることを思った。

なんか私、他人に言及されるのがそもそもあんまり好きじゃないのかも、と。

私の「異様に多い地雷リスト」にはそのほかには、「飲んでる?」と「あつい? さむい?」等がある。前者に関しては、「酔っ払いは自分が酔っぱらってるのなんか分からないし自己申告の酔っ払い具合なんて無意味なんだから聞くな、お前が見たものが真実だ」と思うし、後者については、「暑かったり寒かったりしたら自分で言うからほっといてくれ」と思う。

「何飲んでるの?」もむかつく。何飲んでてもいいだろと思う。高校生の頃、塾で私にやたらなついてきてちょっとめんどくさいなあ…と思っていた女友達が、休み時間にコンビニで買ったものを食べてる私に「何食べてるの?」と聞いてきて、「サンドイッチ」と答えたら「具は?」って聞いてきて、それでキレたこともある。

夢をかなえるゾウシリーズで大成功をおさめた水野敬也氏の書いた、至高のモテ本「LOVE理論」において、「うわっつらKINDNESS」すなわち「この発言や行動をすれば機械的に『親切な人』ということになり、モテる」という手法が55個紹介されているのだが、私には二割くらいが確実に無効であった。

13番の「大丈夫?って何回も聞く」に関しては、「は? 何が?」と返すであろう。

(ちなみにこの本自体はめちゃめちゃ面白い。これの女性むけバージョン「スパルタ婚活塾」もめちゃめちゃ面白い)


私はどうやら、自分の身体について(利き手、体調、寒暖、酔っ払い具合など)言及されるのがすごく嫌なようなのだ。

風邪気味の時に「あったかくして寝なね」とか言われても、「そんなのお前に言われなくてもするわ」って思う。それこそうわっつらKINDNESSじゃなかろうか。

こんなことを考えていると、「反応しない練習」(これまた名著)(ここに感想文あり)に登場してきた、「干渉されまくる親の元で育ち、大人になっても誰かに干渉されるのが嫌すぎて、休日に友人から電話がかかってきただけでキレてしまう女性」のことをよく思い出す。私は別に干渉しがちな親の元で育ったわけでは断じてないのだけれど、我ながら、会話においてキレるポイントが多すぎると思う。

小さい頃は、挨拶の意味が分からず、挨拶すらスキップしていた(中学生になって部活の先輩に挨拶しないと生意気扱いされるので、挨拶するようになった)。

挨拶は存在を認めることだから、幼い頃の私は、挨拶されたら「私が存在してることくらい私は分かってるから、ほっといてくれ」と思っていたのかもしれない。超絶ハードコアじゃねえか。

存在……。

ここで、敬虔な渋澤読者(そんなものがいるとするならば)なら疑問に思うはずなんだけど、私はエゴサーチ魔だし自分の言動や作品が言及されるのは大好きなんですよ。夢は2chにスレが立つことだからな。

言動や作品に関しては、どんなに揚げ足とられても、クソリプをもらっても「あー有名になったなー」と思うだけで全然むかつかない。なのに、目の前に現前している身体に言及されるとムカついてしまう。

その点、真逆の友人がいる。私の親友のリナちゃん(仮名)は、リアルではおおらかで、ネットではすぐキレる。私たちより上の世代がやりがちな、語尾に「♪」とか「☆」とかつけるやり口だけで「イラっとした」とか言ってるし、読まなきゃいいのにわざわざサブカル顔出し女性ライター(男に好かれそうな)の記事読んでイラッとしてる。私はここらへん全部スルーできる。


話が逸れた。


何が言いたいかと言うと、ここまで書いて、ある事実に気付いてぞっとした、ということだ。


私が惚れるのは私に興味が無い人ばかりだ。


あついさむいとか何飲んでるとか聞いてこないで、誕生日も覚えてないくらいの人でいい(近くなったらこちらから告知する)。うわっつらKINDNESSでポイント稼いでない、むしろずーーっと自分の話してる。そういう人に惚れる。

私が己の身体感覚に鈍感だったり、己の感情をないがしろにしてきたことと、この、「私の身体感覚に言及してくるやつをうざく思う」こと、どこかでつながっている気がする。

ぞっとする。

あ、でも「髪切った?」は言ってほしいんだよなーーー。うーーーーーん。

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